暴雲波乱の殺し屋・リン
波乱の旅路第1章
「ふんふふんふふ~ん♪」
今日の学食メニューのデザートはレア中のレアのレアチーズケーキ。
月1出現の超美食なこのレアチーズケーキは一人2個まで購入可能なのでお持ち帰り用と分けて買う人が殆どだ。
しかも昼からは眠たくなる授業も何故かこのレアチーズケーキを食べると目が覚める事も人気の1つである。
おれはハル姉に1個土産を頼まれているので1つしか味わえない……はずだが美少女効果はここでも続く。
「ねえねえ莉依ちゃん?一緒に食べない~?私の分半分分けてあげるよ~?」
「莉依ちゃんは美少女過ぎるから美味しいものいっぱい食べられていいね~」
そう言いながら前に座る結構美少女な二人組の女の子。
初対面の女の子と成り行きで昼食を食べる事はあるが、こんな美少女は明日香以来だろうか。
「あたしはグレア。こっちのグレそうな感じなのが柚姫」
「グレそうなのはあんたでしょ。何で昼食時までチュッパ口に咥えてんのよ」
グレアはクシャっとした赤髪をポニーテールで結んだ感じの女の子。
柚姫は紺色髪の短髪だがボーイッシュな感じでクールだ。
男子中学生の頃は全く感じない視線に不覚にも快感を覚える。
なんだろう……もしかしたらおれ、男に戻れても戻りたくないかもしれない。
「莉依ちゃんは休日とか何してるのー?」
柚姫は野菜だらけのメニューを食べながら、そう口を開いた。
まずい、明日香とハル姉と共にサバイバル生活を送っているなんて答えたくない。
政治家のように嘘をついて好感度を上げるのはあまりいい気がしない。
「休日は音楽鑑賞と従姉妹の家事の手伝いをしています」
「へぇ~、偉いんだね。莉依ちゃんは」
「何だよ~?わっちだってお風呂沸かしたりしてんじゃんかよ~」
…………一応言うが嘘は言ってない。
ちょっと誇張説明をしただけだ。
「あんたはもうちょい皿洗いとかを増やせ」
「良いじゃん。面倒臭いし」
「あんたねー……はぁ……」
柚姫ちゃん。お気の毒です。
一旦落ち着いた空気もぶち壊すように、1人の女の子が近くに寄ってくる。
「ねえ莉依ちゃん、水泳部入らない?きっと水着姿の莉依ちゃんも似合うよ~?」
「「「何……莉依ちゃんの水着姿だと!?」」」
未だに続く部活勧誘&男子の反応。
そういえば朝も靴箱の手紙がバカにならなくてちょっと怖い。
それでも気がかりなのが何故、おれがこんな姿になってしまったのか……だよなぁ。
ハル姉も躍起になって過去に似た事例が無いか、ありとあらゆるコネを使って調べてくれているが、全く手掛かりは掴めない。
これ……何ヶ月で元に戻るとかそんなやつじゃないよな?
急に学校とかで元の姿に戻ると言い訳つかないんだけど……。
ヤバい!急に冷や汗が出てきた。
「莉依ちゃん……大丈夫?」
「保健室、行く?」
結構美少女なケーキをくれようとした柚姫ちゃんがそう気遣ってくれる。
「ごめんなさい……先に失礼しますね」
そう残して去ると、おれは駆け足で保健室へ向かった…………。
「ぜー、はー、ぜー、はー」
何だか今日は体が重い。
見た感じ元に戻っている訳ではないが、風邪か何かであろう。
体温は37℃。
普通に見たら平熱か微熱程度だが、今のおれの平熱体温が35℃だからまあまぁ高い。
何だろう……さっきより体が重い。
主に腰の当たりに誰かが乗っているような感じが……
「……………………」
「……………………何?」
目の前には自分とはまた違うスペックの美少女がいる。
金髪赤眼、身長はおれと変わらないくらい。
しかし表情はまるで死んだ魚の様な目をしており、無表情と言うより気迫が無い。
服装はコスプレのような黒一色のドレスローブ、髪飾りは黒い紐を右頭辺りに蝶結びをしている。
そして最も印象的なのは……
「それ何食ってるの?」
「そこにあったケーキ……美味しい」
「美味しい……じゃねえーーー!なに人の土産漁って食ってんの!?しかも左手に持ってるそのナイフ何?」
「あなたを殺すためのナイフ」
「そこはケーキを切るためのナイフと言えーー!」
目の前の世紀の超絶美少女は、世紀の超超絶美少女のおれに股がって黙々とケーキをかじっていた……。
何だかさっきの柚姫とグレアのやり取りみたいだ……。
「はぁ、君……名前は?」
次NEXT⇒ 暴雲波乱の殺し屋・リン part2




