日記4
木漏れ日が地面を所々照らし、何とも長閑な【テイナリオン森】
なんつーか、この感覚。
「和むわぁ」
思わず呟く。
「そろそろセーフティーエリアを脱けるから、戦闘準備お願い」
「ん」
返事になっていないうなり声で返す。
確か、鹿が出るんだっけ?
どんな感じだろう。やっぱり日本氈鹿?
暫く歩いていると、茂みが急にガサガサ揺れる。
そして出て来たのは、鹿は思えない程凶悪な角を持った動物だった。
牛の角のように、捻れ前に向かって突き出ている。
「し、鹿?」
『ブルルルッフーッ』
怖えぇぇぇぇぇぇえええええええええええ!?
何こいつ!
ハイネが刀を抜き、鹿に切り掛かる。
2〜3回攻撃されると、あの猪のように鹿もエフェクトと共に消えた。
「どう思う? ここのモンスター」
うん。聞かれたので、正直に答えておこう。
「巫山戯んなって位、怖かった」
「あー。やっぱりそういう反応?」
「そりゃぁな」
その後、俺も数匹鹿を倒して、お開きになった。
宿屋と服屋の場所を教えてもらい、着物を買って宿に泊まった。
で、その次の日。
「おい。お前」
どっからどう見ても、その時代の野良侍にしか見えない奴らが話し掛けて来た。
20人程、
「何ですか?」
「お、おまえ、昨日ハイネさんに話し掛けてたな。ど、どどどどどどどどういうつもりだ?」
しかし、めっちゃテンパってた。
「どういうも何も、ちょっとパーティー組んで狩りに行っただけですけど」
「「「ぬわぁーにぃぃぃぃぃぃいいいいいいい!!!?」」」
正直に話すと、筆頭のみならず全員凄い剣幕で詰め寄って来た。
「ハイネさんにその態度、万死に値する!」「ハイネたん。はぁはぁ」「死んでほしい! けど羨ましい!」「あばばばばばばばば」「爆ぜろ」「爆ぜろ」「爆ぜろ」「コロス」「爆発死散しろ」「もう数十人連れてこい」「大丈夫だ、もう集まっている」「蹂躙じゃぁああああああああ!!!」
おいおいおい。なんか、段々増えて来たぞ?
甲冑武者とか、丁髷とか珍しいキャラもいるけど、どういうことだ? あ、ここ和風な国だった。
「お、おお前! 我々と勝負しろ! 勝ったら、認めてやる! だから勝負だ!」
筆頭がそんなことを言うと、俺の目の前に表示が現れる。
『PVP 時間制限10分
浪人VS加藤丸、鬼瓦、雛未(以下略)
※このPVPにより、デスペナルティは発生しません』
どうしよう。
まぁ、一応やっておこう。デスペナルティも発生しないみたいだし。
倒せたらいいなー。なんて。
『受理されました』
メッセージが流れると60のカウントが流れ始める。
59、58、57、56、55、54
カウントが減る間、俺は武器を準備する。
直径20メートルは他者侵入不可エリアになっているから、大体十メートル位でいいだろ。
右手を横に向け、片刃の剣を作り出す。
いや、刀? 太刀か。
十メートル程度に伸びたリアルではあり得ない太刀。
俺の姿を見て、何故か集団は狼狽えている。
装備は、【アトラデル公国】で手に入れた薬剤師装備に変えて、太刀を両手で持ち直す。
普通は、重すぎる武器や装備を持った場合、(加重)になってしまうらしいが、俺の場合は【加重耐性Lv47】で軽減されているため、全く重くない。
昨日の時点で金属量80%で(加重)は発生しなくなった。
カウントはどんどん減り、ついに一桁までなった。
6、5、4、3、2、1
「オルァアアアアア!!!!」
太刀を、横に一薙ぎ。
作戦?
そんなの知らんよ。
俺の太刀の攻撃範囲に、敵全員が入っているため一気に斬り飛ばす。
さて、どうなったかな?
勝利を告げるアナウンスが聞こえないので、もう一払い。
『PN浪人 勝利』
アナウンスとともに俺の勝利表示が出てくる。
勝っちゃった。
別に、何も掛けていなかったため、太刀をそのまま再吸収する。
『テッテレー』
お。レベルが上がった。
名前:浪人
種族:メタル Lv21
金属量:80%
SP:39
スキル:【鉱纏精製】【金属吸収】【錬金術】【身体能力強化】【加重耐性Lv48】
PVPってスゲーな。
レベルが3つも上がった。
『スキル【巨剣】を入手しました』
しかも、スキルゲット。
至れり尽くせりだな。
リスポンしてボーゼンとしている集団を無視して、その場を立ち去る。
勿論、装備は着物に替えた。
「さて、狩りに行くか」