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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
第十一章 見えてくる犯人像
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record78 現実と演技

あれから俺は、今までの流れから真夜と和奏の二人と一緒に行動を共にしていた。


「佐久間さん、私はどうも納得がいきません。果たして風間さんを殺した犯人は本当に笹川さんなんでしょうか? それに最後まで誰も殺していないと言っていた笹川さんの言葉、正直私にとってはあれが一番気になるんです……もし犯人が捕まっていないとするなら一人で行動するのも危険だと思いますし」

「まあそれはそうだよな。真夜ちゃんの言いたいことも分からないわけでもないよ。だからこうして一緒にいるわけだし」

「それはそうですけど……でも佐久間さんは笹川さんが犯人だと思っているじゃないですか」


あまり納得がいっていないせいか、真夜は少し不服そうに訴えてくる。

先ほど俺は河西や久遠と同じ意見で全ての犯人は笹川の仕業だと思うと賛成してしまったのだ。

それからというもの彼女のご機嫌は少し斜めなのだ。

でも真夜の意見にも理がかなっていると思ったかららこうして俺は彼女たちと行動を共にしているのだ。

もちろん、彼女たちの中には真夜と同意見だった和奏だっている。

そしてその和奏が先ほどから真夜の説得にかかってくれているのだが――


「まあまあ、せっかくあっくんが私たちの意見を少しでも取り入れてくれたんだからここはありがたく思っておこうよ」

「和奏さんは佐久間さんに甘すぎるんです! 私たちは本当に危険だから団体行動を促したんですし、それにまだ真犯人が居てもおかしくないんですよ」

「確かに真夜ちゃんの言うことは私も正しいと思うんだけど……私たちの発言する言葉には根拠がないんだよね。ただの憶測の話になっているから信じてもらえないんだよ」

「でも、何かあってからじゃ遅いですし! これ以上誰かが死ぬところなんて私は見たくないんです」

「それはみんな同じだよ、真夜ちゃん。私だってそう思ってるよ。けど、みんながみんなあっくんみたいに私たちの意見を取り入れてくれるわけじゃないから」


――だからどうしようもない。


和奏が最後まで口にしなくてもなんとなくだが俺には分かった。

おそらく真夜も和奏の言いたいことが分かっているからこれ以上言い返さないのだ。

でもこれ以上誰も死なせたくないという真夜の純粋な気持ちは俺には痛いほど伝わってきた。

だから彼女の気持ちを汲み取ってあげたいと思ったが、河西や久遠の当の本人たちが納得してくれなくては危険を促しても意味がない。

それは分かっているのだが――


「……いや、そうか。単純に納得させればいいんだ」

「何ですか、急に。河西さんたちを納得させるには根拠が必要なんですよ。和奏さんの話を聞いてたんですか?」


真夜は俺の呟きを聞くと、やれやれといった面持ちで首を横に傾げた。

ただ俺だって何の根拠もなしに呟いた言葉じゃない。

しっかりした根拠はある。


「ちゃんと聞いていたさ。だから思いついたんだよ。河西さんたちを納得させる方法を!」

「……何を言い出すかと思えば、もしかして私の気を紛らわせるために言っているわけじゃないですよね?」

「そんなわけないじゃないか。証拠を捜すんだよ、証拠をさ」

「証拠、ですか? でも全て出揃ってしまったじゃないですか。他に何かあるっていうんですか?」


うーんと顎に手を当てて考える素振りを見せる真夜。

そんな彼女を横目で見ながらも俺はわざとらしい口ぶりを意識して――


「だから探すんだよ! ないなら見つければいい! まあとりあえず何もしないよりはいいだろ? とりあえず行動、行動!」

「わっ、ちょっ、佐久間さん!!」


早速行動に移そうと食堂から出ようとする俺を止めようと、真夜が言葉にするが聞こえないふりをしてそのまま階段を駆け上がる。

長々と食堂に居ても仕方がないし、こうでもすればきっと二人はついてくる。

もしついてこなくてもその時は、その時と考えていた。

食堂に残された真夜はあきれた様子で後ろにいる和奏を振り返った。


「もう……単独行動は危険だってあれほど言っているのに……本当に死んでも知りませんよ」

「あはは、あっくんは昔から言葉より先に行動を起こしちゃう人だったから、きっと癖なんだよ」

「でも、癖でもなんでも今は状況が状況です。本当に危険なんですから」

「大丈夫、真夜ちゃんの思いはちゃんと届いてるから。それより、私たちも早くあっくんのところにいこ! ね?」

「んぅ……分かりました」


渋々了承する真夜とその隣を並んで歩く和奏は敦司の後を追うために二階へと向かった。






「本当に何もないな。こんなんで何か見つかるのか?」


二階へ上がってきた和奏と真夜と合流をした俺は、犯人だと疑われていた笹川の部屋へと来ていた。

あれから数十分ほど部屋の中を探し回っているが映画の照明器具や大型撮影機ばかりで証拠らしいものは見つからなかった。

これだけ探しても見つからないとなると、さすがに愚痴でもこぼしたくなってくる。

まあ既に口から出てしまった後なのだが――


「佐久間さん、そんなこと言っても仕方ないじゃないですか。第一、証拠を捜すって言いだしたのは佐久間さん本人じゃないですか!」

「まあそうなんだけどさ……ほら、あれだ。なんとかなるってやつだよ」

「はぁ、少しでも期待した私が馬鹿でした」


いやいや、そこまであからさまにため息をつかなくてもいいんじゃないかな、真夜ちゃん?


「まあまあ、きっとあっくんもちょっと疲れてるんだよ。それにほら、さっき私に事件の振り返りをさせたいって言ってなかったっけ?」

「あ、そうそう! 一応それもしてみようよ!」

「一応って……まあ別に構いませんけど」


和奏から助け舟を出してもらってどうにかこの場を切り抜ける。

そして真夜がこれ以上何かを言い出す前に記憶を振り返り始めた。


「まず風間くんの事件についてだけど、正直これに関しては証拠が少なすぎて犯人を特定するには難しすぎると思うんだ。犯人が傷を負っているっていうのも大きな証拠だけど、館に居るみんなを調べても傷は見つからなかったからね」

「ん? それは違うんじゃないですか? 確かに私たちを含めた、河西さん、久遠さん、笹川さんの六人からは見つからなかったですが、青木さんと相原さんは別ではないですか? あの二人の生存は確認されていませんし、もしかしたらどこかで生きているって可能性もありますから」


そうか、真夜ちゃんの言う通りあの二人は行方不明なんだ。

少し疲れているのか、なんだか簡単なところを見落としているな……。


「そう考えると、風間さんを殺したのはあの二人のどちらかなのかな? 私がまだ居なかったときはその話題はでたのかな?」


話を聞いただけではやはりうる覚えのところもあるのか、確認を含めるような口調で和奏は首を傾けた。


「そうですね、何度か出ましたね。笹川さんもあの二人のことは疑っていました」

「そうだったんだ。相原君、も……じゃあ結局、風間くんの事件は未解決のままなんだね」

「そうなりますね。証拠も何もないですし」


手に持っていたカセットテープを山の上に置くと真夜は和奏の方へと振り向いた。


「結局笹川さんの部屋からは何も見つかりそうはないですね。あっても映画関係の物ばかり、事件に関するものなんて見当たらないです」

「そうだね。射影機に照明器具、あとは映像を取っておくためのテープばっかりだもんね。でも初めの自己紹介で映画研究部だって言っていたから不思議ではないんじゃないかな?」

「なるほど、だからこんなに……ゴホッ、ゴホッ」


和奏と話しながらも物を動かしているせいで舞い上がったほこりを吸い込んだのか突然真夜が咳き込む。

確かによく見てみるとこの部屋にある物は少し埃を被っている。

テープの上を試しに人差し指でなぞってみても、埃が指の腹を覆いつくすほどだ。


「うぅ、佐久間さん、これ以上この部屋を探してももう見つからないんですよ。それに――埃っぽいですし」


よっぽどむせたのか、真夜の顔を見ると目元にうっすらと涙を浮かべてそんなことを訴えてきた。


「確かに埃っぽいのは俺も嫌だがこの部屋以外はもう調べ尽くしたしな。それに他の部屋は鍵がかかっていて調べられないだろ」

「そうですけど、鍵がかかっているのは風間さんと相原さんの部屋だけじゃないですか。その他の部屋は開いていますし、笹川さんの部屋にこだわる必要はないじゃないですか」

「あっ、それは私も気になってたかも。最初に笹川さんの部屋を探すって言いだしたのはあっくんだもんね。何か理由でもあるの?」


真夜が愚痴らしき言葉を口にすると、それに便乗するように和奏も会話の中に溶け込んでくる。

要はなぜ俺がこの部屋を調べたがるのかこの二人は知りたいわけか。

なら答えるまでだ。

それは――


「なんとなくだ!」

「なんと、なく?」

「そう、勘だ!」


堂々と答える俺に対して、良く状況がつかめていないのか和奏はポカーンと口を開いたままだ。

俺としては和奏は予想通りの反応だ。

さあ、じゃあ真夜ちゃんの方はどう出てくるかな?

きっと冷ややかな視線をこっちに寄こしながらも怒ってくるは、ず?


「あれ? 真夜ちゃん?」

「なんでしょうか?」

「勘なんだよ?」

「そうですか、勘でしたか」

「いや、根拠もなくただの勘だったんだよ!? もっと他に言うことは!」

「え……なんなんですか急に、別にないですよ」


想像していたものとは別に真夜はただ俺の方を見つめてくるだけで特に何も言ってこなかった。

ただ近付いていった俺に対して少し距離を取っただけだ。


「だって真夜ちゃんらしくないでしょ! なんかこうもっと、いつもなら怒ったりするじゃん」

「なんですか、いつも怒っている人みたいな言い方しないでくださいよ」

えっ、実際いつも怒っているような気がするけど……と一応心の中で呟いておくだけにしておこう。

「ただ勘も悪くないかなって思っただけです。実際佐久間さんのおかげでとけた事件だってあるわけですし」

「ま、まあそれはいろいろな条件が重なってってこともあるけどさ、本当に大丈夫なの?」

「だから、私はいつも通りです! ただ一つ気になったことがあっただけで」


ふざけあっていたせいか真夜の表情にも少し笑みが浮かんだが、それもすぐに消えていく。

それほど何か重大なことにでも気付いたのだろうか。


「気になったことって、もしかして事件関連のことか?」

「そうですけど、あんまり確証はないです。それに根拠も何もないですし」

「なんでもいいさ。とりあえず話してみてよ」

「あんまり真に受けないでくださいよ。本当にあり得ないようなことなんですから……その、今まで起きた事件って、実は全て演技だったんじゃないかなって思って……」

「え?」


一体何を言い出すかと思えば本人の予告通り確かに変なことを言い出した。

はい、更新遅れてすみませんでしたーー!!

最近忙しくて、何より熱いので(関係ないですが)、長い目で見てもらえると幸いです。

次回もできるだけ早めに更新できるよう心がけますが、実際仕事が忙しくてどうなることやら……執筆時間をできるだけ増やせるよう頑張るので、これからも皆さんどうぞよろしくお願い致します!


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