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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
第十章 君と僕の最高傑作
74/86

record72 推理パート(4)

「俺も分かったよ! 犯人ではないと言い切れる人、もう一人は真夜ちゃんだね。俺は風間くんが殺害されていることを知ってから二階へと戻ったけどその時に彼女はどこにも怪我を負っていなかったし、血痕がついている様子はなかった。もちろん、風間くんを殺してから部屋に戻って服を着替えたと考えられるかもしれないけど、あの短時間の間にはそれは無理だと俺は思う。だから真夜ちゃんも犯人ではないんだ!」

「そうかい……そういうことかい。じゃあ君たち二人、敦司くんと真夜ちゃんは犯人から除外できると言いたいんだね?」

「そうです。傷がないということは犯人ではないということを証明する証拠となるんです。それに初めに言い出したのは河西さん、貴方ですよね?」

「……そうだね、そこは否定しないよ」


言葉を濁している河西、そこまで彼を追い詰めたのが真夜だ。

あの彼を相手にしてここまで言い負かせることが出来るのはさすがとしか言いようがなかった。

自分なら気迫だけでも押されそうだというのに……。


「他の方、そうは言っても笹川さんしかいませんが貴方も反論はありませんよね? あなたがおかしいと指摘した部分はあくまでも腕を怪我しているといった河西さんの推理、犯人が怪我を負っているという部分には賛成ということですよね?」

「この館内で一番歳が低いのによくやるよ……そうだね、真夜ちゃんの言う通り僕もそこには反論はないよ! 犯人が怪我を負っている、そこの部分を否定してしまったら議論の余地がない。それに階段に血痕が付いていた以上それ以外は考えられないしね」


そう言うと、笹川は真夜の意見をすんなりと飲み込んだ。

でもあの彼がそんな簡単に相手の意見を受け入れるようには敦司には思えなかった。

そう思った矢先「だけど」と笹川が言葉を付け足した。


「悪いけどこれ以上は、この館内に居る誰かを犯人の該当者から外すことはできないはずだよ? 発言には裏付けがないと誰も信用しないからね」

「あなたの言う通り、私はもう一人だけ犯人ではないと言い切れる人がいると思っています。それは――相原さんです!」

「ふーん、彼ね……でも彼は腕に怪我を負っていたよ。それなのになぜ、犯人ではないと言い切れるのかな?」


確かに笹川の言う通り怪我を負っているのだから逆に浩介が犯人と疑われてもおかしくはない。

それなのに犯人ではないと彼女はどうやって証明するつもりなのだろうか?

同時に自分としては別の部分にも疑問を感じていた。

それは真夜が突然、浩介の名前を口にしたことだった。

やはり、それだけ彼女は真実を暴こうとしているという表れなのだろうか?


「私が相原さんを犯人じゃないと思う理由、それはあの腕の怪我です」

「腕の怪我? 急に何を言い出すかと思えば腕の怪我と来たか。だけどさ、怪我を負っているところなんて尚更怪しいじゃないか! もしかしたらその怪我が樹くんを襲う際に負った怪我かもしれないだろ? それが犯人じゃないと断定できる理由になるのか?」

「よく考えてみれば分かると思いますけど相原さんが負っていた怪我、あれは風間さんが殺害される前から負っていた怪我なんです。だから襲う際に負った怪我ではないということになります。それは皆さんもご存じのはずですよね?」


そうだ、浩介の怪我は確かに風間くんが殺される前日にみんなが確認をしたはずだ。

エントランスホールでの、あの二人の言い争い時に――


「そうだね、そういえばそうだったよ。確かに浩介くんは樹くんが殺される前から腕に怪我を負っていたね。でもそれが証明できたからと言って浩介くんが犯人じゃないと証明することはできないよ?」

「そうですね。確かにこれだけの理由じゃ相原さんが犯人と言い切るのは無理ですね。でも相原さんの怪我の様子を見ればわかると思いますけど、彼は右腕を骨折していた。そんな腕で風間さんを殺そうなんて無謀だと思いませんか? 凶器に使われたのはボウガン、腕を怪我している相原さんには適していないと思います。放った後に再度矢をつがえるのにはかなりの力が必要になりますから」

「なるほど、だから浩介くんには犯行は無理だと――」


笹川は一瞬考え込むような素振りを見せた。

それから顔を上げると口をにやっと釣り上げた。


「でもさー、なんで真夜ちゃんは彼が骨折をしていると断定できるのさ? そんなの樹くんを殺すことを事前に計画をしていて、みんなを騙すために包帯を巻いて骨折をしていると嘘をつけば誤魔化せるよね?」

「確かにそうかもしれませんね。でも相原さんが骨折をしていると証言してくれた人が居たんです……それは、今は亡き人、風間 樹さんです」


そうか! あの時、確かに風間くんは口にした。


『そんな力がはいっていない殴りじゃ無理だよ。その右腕、骨折してるだろ? 一瞬だけだけど顔が痛みで歪んでいたぞ』――と。


あの時点で風間くんが冗談半分に骨折をしているなんて言うと思えないし、浩介の方も力を抜いて殴りかかっている様子もなかった。

だからあの晩、既に浩介が骨折をしている証明になる。

それをもとに犯人の該当者から浩介を外そうと考えているのか。


「あの状況で風間さんが嘘をつくと思えませんし、相原さんの方も本気だった。だから骨折をしていたのは間違いないんです。だから相原さん、彼には犯行は不可能なんです。矢を装填できない彼にはボウガンなんて武器は扱えませんから!」

「確かに、浩介くんには無理かもしれないね……そうだよ、考えてみても彼には犯行は不可能だ。これはもう反論の余地はないよ。僕は真夜ちゃんに賛成だよ。じゃあこの後は犯人をどうやって見つけようか」


言い切った真夜に、即座に賛成しながらも話を進めようとする河西。

でもこの推理には少し引っかかる点が自分には合った。

それは――


「ちょっと待ってくださいよ。僕はまだ賛成はしていませんよ。それなのに無理に話を進めようとするのはやめてくださいよ」

「ふふふ、君もしつこい人だね。だってこれ以上反論の余地がないじゃないか。話を進めるのは当然だよ。ほら、次の犯人探しといこうじゃないか」

「だから勝手に進めないでくれませんか。だって真夜ちゃんの発言にはまだ反論の余地があるんですから……それに、きっと敦司くんも気付いているんじゃないですかね? 犯行現場を直接見た彼なら……ね?」


止められても尚、無理に話を進行させようとする河西の言葉を遮って笹川は突然自分へと話を振ってきた。

おそらく自分が感じている、違和感と同じものを彼は感じている。

そしてそれを自分の口から話させようとしている。

そこにどんな意図があるかまでは分からないけれど――でもここで言わないわけにもいかない。


だって俺は、真実を突き止めるためにここにいるのだから!

さあ、敦司はどうやって真夜の推理を崩していくのでしょか。

次回をお楽しみに!

――とここら辺で少し小説のことを忘れ、日頃の疲れを癒すためにリフレッシュをしようかと思っている作者です。

のんびりと一日を過ごすのもいいかなぁ、なんて考えたりしてます。

では次に皆様と会える時を楽しみにしています!

次回の更新予定は4/14です。

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