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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
サイドストーリー 相原 浩介編
7/86

record7 警官

この話はサイドストーリーです。

読まなくても本編に直接の影響はありません。

――まさか、俺まで狙いに来たのか……。

浩介は地面をけり、自分と警官の間に一定の距離をとる。

それを不審に思った警官は、腰に手を伸ばし何かを引き抜こうとする。


「させるかよっ!」


危険と感じた浩介は、サッとしゃがみ込むと土をつかみ、警官めがけてばらまく。


「うっ……!」


その土が目にでも入り込んだのか、警官に少しの隙ができる。


「残念だったなおっさん!」

「くはぁ!?」


それを好機とふんだ浩介は、全体重をかけながら思い切りタックルをくらわせる。

前が見えない警官は、浩介の攻撃に対応できるはずもなく訳が分からないまま地面へと転がる。

その警官の上に浩介は馬乗りになるようにして乗っかると、男が所持しているものを奪い取る。


「なっ!? こ、これは……」


それは日本の警察官などがよく使うM36(リボルバー)だった。

あまりにも非日常的なものをてにしたせいか、浩介は驚きが隠せなかった。

その表情を見た警官は目を細めた。


「子供が扱えるようなものじゃないさ。それを返しな」

「うるさいっ!」


叫びながらも、浩介は警官の頭に向けて銃口を突きつける。


「やめときな、撃てやしないさ」

「どうだかね、今の俺ならわからないよ……」


トリガーに添えてある指に力を籠めると、そのまま警官に対して質問を始める。


「お前、俺の姉、相原まどかに関して何か知っているのか?少なくとも名前くらいは聞いたことがあるんじゃないか?」

「あぁ? んなの知るかよ。それに知ってたとして、それを教えると思うか?」

「……じゃあ、お前らは組織ぐるみで行動しているのか? 11人が失踪したあの事件。あれにどう関わっているんだよ!」

「ははは、そういうことか……その事件にお前の姉ちゃんが巻き込まれたってわけか。おまえはどうやらとことんついてないなみたいだなぁ~」


そう言うと、警官は何を思ったのか力を抜きはじめた。


「この国はいまや世界の中で一番安全と呼ばれた国、日本。だがそれは外見だけだ。見た目だけに騙されてちゃーまだまだってわけだ」

「それがいったいどういう関係があるんだよ!」

「まあまあ、落ち着けってぼうず。俺が言いたいことは、見た目に騙されるなってことだ。本当の悪はなんなのかってな」

「ほんとうの……あく……?」


数年前の失踪事件。

世の中では別々の事件というが、本当にそうなのだろうか……。

もしこの十一人に関連性があり、すべての事件が関連していたのなら一度にこれだけの人数を誘拐するにはかなりの権力と計り知れないくらいの力がないとできないはずだ。

――それだけの力を持つもの……。

浩介に考えられるのは国家しかなかった。


「さぁて、次は俺からの質問だ。お前はなんで俺が警官じゃないと気付いたんだ?」


薄ら笑いを浮かべながらも、今度は警官が質問をしてくる。

浩介としては別に答えてやる義理なんてなかったが、急いでいるわけでもなかったので素直に答えてやることにする。


「それはツーマンセルで行動せずに、お前が一人でやってきたからだよ」

「ほぉー……それは考えたものだな。たださっきも俺は言ったはずだぞ。見た目に騙されるなと……クックックッ」


警官は喉の奥で笑う。

ただ浩介にはただの強がりにしか思えなかった。

――警官じゃないって見破られたのが、そこまで悔しかったのか?

そう思った瞬間、浩介は身をもって読みがあまかったと後悔することになる。


「うっ!!」


突然後ろから、布のようなものを口に無理矢理押し当てられたのだ。

――くそっ、そういうことか! こいつはただのおとりかっ!

浩介はすぐに機転を利かせると、体をひねるようにして捕獲されていた状態から抜け出す。

そして地面を転がると、二人の男から距離をとる。

――まあ、まだ俺の方が状況的には有利だな。

こっちにはまだこれがあるしな……。

相手に銃口を向けると、浩介は数歩ずつ下がっていく。

そのとき足元がグラッと揺れるような感覚に襲われる。


「っ! 地震か!?」


だが前の二人を見ても平然と立っていることが確認できる。

――どういうことだ?変に感じるのは俺だけなのか……?

浩介がそう感じた時だった。


「異変が起きているのはぼうず、お前の方だけだ」


瞳孔から脳内を覗き込むようにして男は笑っていた。

『お前はもう詰んでいる』という警告だ。


「ぐっ……はぁ、はぁ……」


浩介の方はというと、既に呼吸は乱れ始め、意識を保つのがやっとだった。

――布に薬でも染み込ませてあったのか……。

壁にもたれかかり、できるだけ遠くへ逃げようと重い身体を引きずる。

――このことを他のだれかに……しらせなきゃ……。

だがそう長くはもたない。

足がふらつき、自分を支えることさえできなくなる。


「くっ、はぁ……」


そのまま地面に倒れこむと、今度は意識が朦朧とし始める。

すると、男は浩介のそばまでやってくる。


「一つだけ教えてやる。お前の姉はもう既に死んでいる。だから自分の身の事だけを考えろ。見かけに騙されるな。信じられるのは……自分だけだ」


――くそっ、姉ちゃんが……そんなことあるか……姉ちゃんは……。

それを最後に浩介の意識は途切れた。


次回はようやく館へ行ってからの話になります。

お楽しみに!

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