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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
サイドストーリー 相原 浩介編
6/86

record6 親友

この話はサイドストーリーです。

読まなくても本編に直接の影響はありません。

一日の授業がようやく終わり、浩介は左隣の席の敦司に声をかける。

これは敦司が何者かにつかまる前、浩介が学校を休む前日の話になる。


「おい、敦司! 今日こそは一緒に遊ぼうぜ!俺の方はバイトはないし、お前もないだろ?」

「悪いな、先約がある。また今度ならいいぞ」

「先約……だと……どうせまた、愛しの和奏ちゃんだろぉ!」


いつも通りのハイテンションで敦司に接する。

バイトや幼馴染みなどの理由でよく誘いを断られることがあったが、浩介にとってはもう慣れっこだった。


「愛しのってなんだよ……ただの幼馴染みだってだけだ」

「ハハハ、お前なら絶対にそういうと思ったぜ! あ~あ、でも和奏ちゃんはかわいそうだよな。あんなにもお前のことを一途に思ってるのにさ」

「なーに言ってんだよ! そんなわけないだろ。あいつはただの幼馴染みだっての。お前の方こそ彼女が――」


と敦司は一息入れた後に


「あれ? いないか」


とわざとらしく思い出したふりをして浩介を茶化す。


「俺に彼女がいないのを知ってての嫌味か! いつか敦司より可愛い彼女を作ってやるかららなぁ!」

「あーはいはい、頑張って可愛い彼女を作ってな」


対抗する浩介を敦司は軽くあしらうと、教室から出ていこうとする。

けれど、なにを思ったのか敦司は急に教室の出口で足を止め、浩介に向き直る。


「ん、どうかしたか? やっぱり俺と遊びたくなったのか?」


冗談混じりに浩介は敦司に向かって問いかける。


「残念ながら違う。ただ、お前の言葉に間違いがあったから訂正をしようと思っただけだ」

「訂正? 俺、なんか変なこと言ったか?」

「さっきも言ったが、俺に彼女はいないからな。よって俺より可愛い彼女を作ることはできない」


それだけを言うと敦司は教室を出ていってしまう。

残された浩介は少しの間唖然としていたが、ふと思うと笑いがこみあげてきた。


「あれじゃあ和奏ちゃんも苦労するよなぁ~。あれだけアプローチされて気付かない敦司は、あれはある意味才能かもしれないな」


鞄を持ち、席を立つと浩介は他の男子の集まりに足を向けた。




時刻はすでに夜九時を回り、十時になろうとしていた。

路地を歩いているせいかあたりは暗く、人影などはない。

敦司に遊びの誘いを断られた後、浩介は他の友達と遊びに出かけた。

そしてみんなと別れてからは家に真っ直ぐは帰らず、かれこれ二時間ほどブラブラしていた。


「姉ちゃん……」


言葉にして呟くだけでも胸の中がズキリと痛む。

友達と別れ前に、偶然姉妹の話が出てきて思い出したくない過去の記憶がよみがえってしまったのだ。


「どこに行っちまったんだよ……」


誰に向けた言葉でもなく、吐き続ける。

彼の姉、相原まどか(アイハラ マドカ)は数年前に忽然と姿を消してしまったのだ。

他の十人の人達と――。

この事件は世間を騒がせ、ニュースで速報された。

行方不明になった十一人の関連性は全くなく、消息不明になったと思われる現場も、県をはさむほど離れていたため、別々の事件と判断された。

捜索は今も尚、続いているが証拠はなにも発見されず未解決事件となっていた。

――頼む……帰ってきてくれよ。いったい何があったっていうんだ……。

事件当日の夜の事を思い出せば思い出すほど自分が嫌いになっていく。

今まで考えないように無理して、明るく振る舞っていたせか、いろんな感情が一斉に流れ込んでくる。

――おれが……俺があんなこと言ったから……。

そのとき、不意に後ろから声がかかる。


「君、そこでいったい何をしているんだ!」


浩介は声のしたほうを振り返る。

そこには一人の警察官がいた。

おそらく夜のパトロールでもしていたのだろう。

そして、路地でフラフラ歩いている浩介を見つけたから声をかけた、というところだろう。


「こんな時間に何の目的もなしにフラフラしているなんて危ないじゃないか!」


今の時刻を確認するために浩介は自分の腕時計を見る。

時間はちょうど二十三時になろうとしているところだった。

――こんな時に見つかるなんて……今日の俺はとことんついてないなぁ。

逃げようとも考えたが、知らぬ間にかなりの距離を詰められていたので浩介はおとなしく怒られることにする。


「すみません、考え事をしていたもので……」

「名前はなんていうんだい? 家の住所や電話番号は?」

「相原浩介です。家の電話番ご…………」


途中まで言いかけて浩介はおかしなことに気付く。

普通なら何かあった時のためにお互いをサポートし、守りあえるようにツーマンセルで行動をする。

それにも関わらず目の前には警官が一人しかいなかったのだ。

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