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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
第八章 サドンデス
54/86

record54 失敗

人間は誰しも間違いを犯す。

そしてそれから改めて思うんだ。

あぁ、もっとこうしていれば違う未来があったのではないかと――。


「ごめんね、敦司くん……私がもっとしっかりしていればこんなことにならなかったのに……今度は私が守ってあげるね。約束、絶対だからね」


――あぁ、そんな約束もしたかもしれないな……そうだ、懐かしいな。


なんだか当の昔の記憶、何百年前かと思えるほどの記憶。

なんでこんな危険な状況の時にこんな関係のない事を思い出すのだろうか。

目の前にいる、怯えている女の子一人も救うことが出来ないのに……。

その時だった。

コツンッ! 耳元ですごい音がしたかと思うと、カランと言う音が自分の足元から聞こえてくる。

その音のおかげで敦司は我に返った。


――いや、最後まであきらめないんだ! しっかりしろ、敦司!!


気合を入れなおすと、敦司は真夜を抱き上げるようにして持ち上げた。


「やっ! やめてください! 下ろしてください!」

「ごめんね、真夜ちゃん。今は誤解を解く時間がないんだ。我慢してくれ」


そう小声で呟くと自分の部屋へと駆け寄る。

次に矢が飛んできたときが最後だろう。

わき腹辺りにじりじりと焼けるような痛みが走る。

おそらく一番初めの矢がかすったのだろう。

だとしても今はそんなことを気にしている余裕もない。

そのまま一気に走り出すと自分の部屋へと走る。

そして扉を開けると駆け込んだ。

ヒュッ! その瞬間に今まで敦司がいた場所に矢が飛んできた。

それが命中しなかったと分かると同時に舌打ちをしながら廊下の奥から姿を現す者がいた。


「ちっ! 逃げちまったか……ったく、風間の野郎といい、佐久間の野郎といい、どいつもこいつも運がいいやつばかりだな」


逃げていった部屋の扉に目をやりながらも矢が継がれていないクロスボウを床へと投げ捨てる。

そして右腕に目をやると、包帯が真っ赤になっているのが目に入った。


「くそっ、後でまた新しい包帯に変えなきゃな……やっぱりあの時質問タイムなんて設けないで風間をさっさと殺しておくべきだったな。そうしていたら初めの一発の時点であの女の命はとれていたのによぉ」


さっき樹が死ぬ前に撃った、最後のクロスボウの矢が右腕をかすめていたのだ。

そのせいで上手く狙うことが出来ず、庇うために割り込んできた敦司のわき腹をかすめるだけに終わっていた。

元々の作戦としてはあそこで真夜が敦司の姿を見てすぐに叫び、そこで悲鳴を聞きつけたみんなが目を覚まして、その現場を見た他の人達が敦司を犯人に仕立て上げる。

そういう算段だったのだ。

真夜の性格からして男は信じないと思っていたが、自分で思っていたよりも真夜からの敦司への信頼が深かったみたいだ。

そのせいで上手くはいかず、真夜はとうとう叫ばなかった。

だから次のプラン、真夜を殺してそれから何か大きな音を立ててからみんなをおびき出す。

そしてその現場に倒れている真夜とそれを茫然と見つめる敦司をみんなに見せつけ、犯人に仕立て上げる。

だがこれも上手くいかなかった。

結局、樹を仕留められたこと以外は上手くはいかなかったのだ。

けれど、一つだけ不可解なことがあった。

それは――。


「俺が撃った三発目は間に合わなかったとしても二発目の矢は絶対に当たってたよな。どう見ても佐久間の奴の頭にめがけて飛んだはずなんだけどなぁ」


そう、どう見ても真っすぐに矢は敦司をめがけて飛んでいったのだ。

だから絶対に仕留められたと思っていたのだが。

そのとき、足元に転がっている何かが目に入る。


「ん、これは……」


床へと視線を向けると、そこには自分が放った二発目の矢が転がっていた。

その位置はちょうど、さっきまで敦司が立っていた場所だった。


「どういうことだ? やっぱり俺が撃った二発目の矢は真っすぐ佐久間に飛んでいったってことなのか……でも何らかの方法で防ぎやがった。あの状況下で……?」


さっきの状況を思い出してみることにする。

敦司は真夜を助けようとしてどこかを怪我していたはずだ。

その後逃げようとしたが真夜に拒絶され、おそらく次はどうしようか悩んでいるところに次の矢が飛んできた。

その中で適切に矢を弾き飛ばしたってことか?

一体どうやって?


「まさかあいつも何か罠を仕掛けてたのか?」


天井や床をじっくり見てみるが身を守れそうな仕掛けは見当たらなかった。

となると他の誰かが佐久間を守った?


――いや、それはありえないか。


あのときは自分を含めて三人しかいなかったはず。

神崎のやつは完璧に怯えきっていたしなぁ……。

そう考えると――。


「まさか……な。これは面白くなってきたかもな。ククククッ」


不気味な笑いとともに黒い影が周りを包んでいく。

そしてその廊下には誰も居なくなった。

その頃、部屋の中へと逃げ込んだ敦司達は――。


「怪我はない? 平気……? 真夜ちゃん……?」

「来ないで……やめて、触らないで、私に触れないで」


部屋のカギをしっかりと閉めたのを確認してから真夜へと近寄るが、敦司の声が届いていないのかブツブツと自分を拒絶するような言葉を並べて呟いていた。

過去のトラウマでも思い出しているのだろうか。

でも無理もないのかもしれない。

突然血の付いた服を着た男に会ったと思ったら突き飛ばされて、それから抱えられたと思うと急に部屋に連れ込まれて迫られる。

しかもその相手の男とは、一番信頼をしていた佐久間敦司という男なのだから。


「来ないで……許して、お願い……ごめんなさい……」

「…………」


自分からは見えない何かに怯えている。

やはり、それほど過去につらい記憶があったのだろう。

その記憶を自分が呼び起こさせてしまった。

そうなると本当にここまでして助けて良かったのか自分でも分からなくなってくる。


――あぁ、俺がしたことって正しかったのか……それとも自己満足だたのかなぁ……。


何が正しくて何が間違っているのか、正確な判断が出来なくなり自分でも段々と分からなくなってくる。

でもそれは、真夜の行動を見てだけのことではなかった。

実は、敦司自身は気付いていないが思ったよりも矢をかすめた傷が深かったのだ。

そのせいで血が足りなくなり、頭が働かなくなってきていることも影響していた。


――なんだ……なんか、目の前が歪んで見える。くそっ、せめて真夜ちゃんの誤解だけでも解いてあげなきゃ……。


そう思って手を伸ばすが真夜には届かず、そのまま敦司は床へと倒れた。

最近、地の文(喋り言葉以外のところ)がうまく思い浮かばず、書くスピードがガタ落ちで...何かいい方法とかあればぜひ教えてもらえればと思います!

では、次回もお楽しみに!

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