record49 襲撃
この話はサイドストーリーです。
読まなくても本編に直接の影響はありません。
午前二時半頃、暗号を解くための操作パネルがエントランスホールで操作されていた。
『おめでとうございます! 見事開錠条件が満たされました! 次が最後の問題です。無事に帰れることを祈っております』
合成音が流れたかと思うと、重そうな扉が左右へと割れていく。
機械仕掛けになっているのかガコッという音とともに地下へと続く階段が見えてきた。
扉が開くときの音でみんなを起こしてしまうか心配になったが、見かけに反して音は意外にも静かだった。
扉の手前まで行き中を覗くと、鉄の階段が下へと続いていた。
そしてある程度それが続いたところで今度は奥へと続く平坦な道が真っすぐと伸びていた。
幅はそれなりに狭く、人が二人ほど通れるくらいの広さだった。
ただ、何かの拍子に落ちないようにするためか、両サイドには腰辺りまでの手すりがあった。
下を覗いてみるとどこまで続いているのか分からないほど奥が深かった。
「やっぱりこれは嘘じゃないみたいだな……初めは疑ったがまさか本当に扉が開いてしまうとはね」
誰もいないエントランスホールで樹はぽつりと独り言を呟く。
視線の先には綺麗に折りたたまれた紙が握られていた。
そこには『0・5・2・9・2』と五桁の数字が表されていた。
この『紙』が送られ始めたのは実はかなり前からのことだった。
一番初めの『紙』に書かれていたことは初めの四人、要するに河西、翔、久遠、和奏が危険だと促すものだった。
なんのことかと初めは疑ったものの、封筒の中に入っていたもう一つの文を読んだことにより納得したのだ。
そう、そこには理由が記載されていた。
初めの四人が危険だという理由が……。
けれどなぜそれが自分に送られてきたのか樹は正直不安だった。
もしかすると誰かの罠なのかもしれないとも思った。
だから一番話しやすそうで、裏切りそうもない敦司という同年代の高校生を仲間に入れることを決めた。
でも結果上手くはいかず、一人で実行することになったのだ。
――まあ、誰だか知らないが元の世界に帰ることに協力してくれたことには感謝してるぜ。
樹はお礼とばかりに一度振り返り軽く頭を下げた。
その時だった。
ヒュッ! 風邪を切る音がしたかと思うと後ろの壁の方でバキッと音が聞こえてくる。
ちょうどさっきまで頭があったところに何かが飛んできたのだ。
「っ!」
瞬時に危険だと判断した樹は近くにあった階段の裏へと身を隠す。
誰が自分を襲っていて、どんな意図があって襲いに来たのか気になったが、そんなことを考えても今は無駄だと即座に判断する。
そして樹は頭の中で現状を冷静に整理していく。
――音からして相手が武装しているものはおそらくボウガン。今のは本当に運が良かっただけだな……。
もし振り返って頭を下げていなかったら、今頃は自分が立っていた床が血の海だ。
そう思うとなぜか笑いがこみ上げてくる。
自分でもなぜだか分からないが、ある程度こうなることは予想していた。
あそこまで大それたことをしたのだ。
命を狙われる覚悟はしていた。
「だとしても、まさか飛び道具を持ってくるとはね」
正直狙われるにしても後ろから、突然刃物で襲われるくらいしか想定していなかった。
だから周囲には気を配っていたのだがまさか遠距離からの攻撃とは……。
「けど、俺にもまだ勝機はあるみたいだな」
樹は階段の陰に隠れながらもバッグから適当なものを取り出す。
実は、一回目の攻撃の時に飛んできた矢の方向から相手がどこら辺に身を隠しているかある程度予測をしていたのだ。
樹は潜んでいると思われる方に紙切れを飛ばす。
その瞬間、そこに寸分違わず矢が飛んできた。
そのまま紙を貫くと矢は壁に当たってバキッという音とともに折れた。
――今だ!
階段の陰からさっと姿を現すと、矢が飛んできた方向へと走っていく。
樹が予想をしていた通り、次の矢はすぐには飛んでこなかった。
クロスボウは確かに強いが、次の装填まで時間がかかるというところが欠点だ。
だからわざと一発撃たせてから、その間に間合いを詰めようと考えたのだ。
近距離戦に持ち込むことさえできれば樹は負ける気がしなかった。
今まで喧嘩など、幾度となくしたことはあったが負けたことは一度もなかった。
「そこに居るんだろっ! 覚悟しろ!」
エントランスホールの柱の裏が見えるところまでいくと樹は相手へ警告を促す。
そしてそちらに振り返った時だった。
樹の目に映ったのは、既に矢が装填されているクロスボウをこちらに向ける人の姿だった。
足元を見ると既に撃ち終わったクロスボウが床に転がっていた。
――っ! 元々装填済みのボウガンを何個か持ってたってわけか!
相手の顔を確認しようとするが、仮面を被っているせいで誰だか分からない。
そう頭で理解したと同時に引き金が引かれる。
ヒュッ! 矢がクロスボウを離れて樹のこめかみをめがけて飛んでいく。
だが実際に刺さった場所は左腕だった。
それは樹が咄嗟に致命傷を防ぐために自分の左腕を犠牲にしたからだった。
矢を左腕に受けながらも樹は一気にその人物との間合いを詰めた。
今回はどうだったでしょうか!?
皆さん楽しんでいただけたでしょうか?
とはいっても変なところで終わっていますが……。
次回をお楽しみに!




