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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
第七章 序章
48/86

record48 推理

朝早い投稿になってしまいすみません。

自分の部屋に戻ると、敦司は机の前にある椅子へと腰を下ろした。

とりあえずこれまでのことを頭の中で整理をしようと思ったのだ。

樹の事情を知っており、前からの浩介を知っている自分ならみんなからは見えない何かが見えると思ったのだ。


――まずは浩介のことから……。


あいつに関しては少し前から行動がおかしかった。

いつもなら笑っているはずの表情が険しかったり、あそこまで豹変して怒ったり……元の世界の浩介からは想像もできないくらいだ。

そして樹が、浩介は利き腕を骨折していると言っていた。

この館で普通に暮らしている分では、まず骨折はしないと思う。

一体なにをしたらあそこまでの怪我をするのだろうか?

正直、ここに関しては全くと言っていいほど推測が出来ない。

喧嘩などをして怪我をしたのならばすぐに誰かが気付くだろうし……。


――まあ、浩介に関しては青樹さんに任せるしかないか。


なんとなくだが、あの青樹佳奈という人に任せておけば浩介は元に戻るような気がするのだ。

現にさっきだって止めに入ろうとしてくれていた。

もしかしたら浩介が骨折した理由だって知っているかもしれない。

そんな淡い希望を抱きながらも今度は話の中心を浩介から樹へと変えていく。


――まあ、風間くんに関しては事前に知っていた分おかしなところはあまりないと思うけど……。


初めはそう楽観視していた敦司だが、少し考えてみると引っかかるところが段々と見えてくる。

それは今日の河西への行動に対してのことだ。

順を追って思い出すと今日の朝、樹から早く帰るために手伝ってほしいと頼まれた。

その時は、自分は頭が悪いから知恵を貸してほしいということだった。

そして怪しい人物がいるからあなたに頼みに来たのだと……。

となると、元の世界に早く帰ることを以前から望んでいたことが推測できる。

だから自分に協力してほしいと頼んできたのだ。

けれどそれに対して自分から返事がなかったから今日の行動に至った。

ここがどうも敦司には引っかかるところがあった。

それは決断の速さだ。

昨日樹から頼まれてから、現在までの時間は約14時間程度。

考えてから行動に移すまでやけに速すぎはしないだろうか?

自分なら頼んだ相手が返事を渋ることを考えて最低一日、そして返事がないと思って次の行動に移るまでせいぜい三日。

合計で四日間くらいは黙っていろんな考えにふけるはずだ。

それにもしかしたら協力を頼んだ相手が裏切る可能性だってあるわけなのだから、余計に様子見の時間が長くなるわけだ。

それに今回の行動を起こしたことによって樹はみんなの輪を乱し、仲間を自ら減らしたわけだ。

そして下手をしたら命を落とす危険性もある。

そこまでして行動を起こす理由は……?


「くそっ! ここまで思いつけたのに最後までは分からない!」


なんとなく見えそうで見えないことに対して敦司は苛立ちを覚える。

樹が言っていた通り本当に『彼女が心配だから』だけの理由であそこまでしたのだろうか?

もし自分なら……で推理をしていこうと考えたが、経験がないためはっきりは分からない。


「結局風間くんのことも、浩介のことも、そして最初の四人が危険かもしれないことに関しても何も分からないままで……ん?」


――いや、待てよ。なんでだ……いや、明らかにおかしい。

思いついた考えが頭の中ですごいスピードで膨れ上がっていき、ある結論に辿り着く。

考えてみれば自分でもそうする。

なんでもっと早くこんな簡単なことに気付かなかったのだろう。

そして、もしこの推論が合っているとするのなら聞きたいことが山ほど出てくる。

敦司は椅子から立ち上がると部屋を出ようと扉の方へと向かう。

その途中で外からノック音が聞こえてくる。

それから声が聞こえてきた。


「敦司くん、少しだけ話したいことがあるんだけどいいかい?」


おそらく声からして扉の前に居るのは河西だろう。

そう分かったとき、敦司の頭の中で『ルールに逆らったものは殺される』という言葉が瞬時に思い浮かんだ。

河西は今日の朝、樹と自分が話しているところを見かけている。

もしかしたら隠れて話の内容を聞かれていた可能性もある。

そう考えると――。


――俺を消しに来たのか?


そう思うと、無意識に扉を開けるために握ったはずの手に力が入る。

そして扉が開かないようにぐっと力を籠めていた。


――別に河西さんを疑っているわけじゃないけど……けどこの扉を開けたら……。


そのまま敦司が黙ったまま扉を抑えていると足音が少しずつ遠のいていくのが分かる。

そのことに敦司は知らず知らずのうちに安心感を覚えていた。

頭で分かっていても、やはりどこか河西を疑ってしまっているのだろう。

敦司は鍵を閉めてからベッドの方へと戻ると仰向けに寝転がった。

そして目覚まし時計を自分の方へと引き寄せると明日の午前三時くらいに時間をセットする。

この時間帯に会いに行けば他の人の邪魔が入ることもないと敦司は考えたのだ。

まあ相手が起きているかは別だが、静かに何度かノックをすればきっと応じてくれると考えたのだ。


――さぁて、じゃあ今日はもう寝るか。


枕元に目覚まし時計を戻すと敦司はゆっくりと目を閉じた。

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