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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
第七章 序章
46/86

record46 仲間割れ

連続で更新が遅れてしまい申し訳ありません。

仕事への準備が始まり、多忙でなかなか小説を書く時間が取れず今に至っております。

これからも仕事関連で忙しくなるので、週に三回の更新が出来なくなり更新が不定期になる可能性があります。

申し訳ありません。

出来るだけ更新できるよう、頑張るのでこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m

それと題名を変えさせていただきました。

ご了承ください。

自分の席に座りながらも敦司は手の中にある紙切れを力いっぱいに握る。

他人のことのはずなのに自分のことのように思えて胸の鼓動が止まらない。

あの後久遠たちの部屋から自分の部屋へと戻ったのだが、誰かが壁と扉の隙間に紙切れを挟んだのか、扉を開けた時に床へと落ちたのだ。

何が書いてあるのか気になって拾い上げてみたところまでは良かったのだが、紙切れに書いてあった文面に問題があったのだ。

それを見た時から胸騒ぎがしてならなかった。

――冗談だよな……いくらなんでも危険すぎる……頼むから何も起こらないでくれ――。

河西さんたちを信じていないわけではないが、やはりどこか怪しいところもあるような気がしてならない。

だからといって今の自分に何かできるわけでもない。

ただひたすら無事に何も起こらず時間が過ぎるようにと願うことしか出来ない。

それから少し時間が経ち、みんなが夕食を食べ終わるのを待ってからタイミングを見計らって河西が口を開く。


「みんな、もう既に気付いているとは思うけど例の扉の開錠に進展があった。おそらくだけど、昨日僕たちが寝た後に回答が認証されたみたいだね。それにどんな意味が含まれているかは分からないけど……」


確かに言われてみれば回答を入力してからの認証が遅い。

運営側が何かの意図があって仕組んだのだろうか?

それとも機械のバグか何かだろうか?

考えれば考えるほど頭の中がいっぱいになっていく。


「結局僕たちの考えた回答は合っていたみたいだけど、残念ながら扉は開かなかったみたいだね。でも、だからといって卑屈にならないでほしい。僕はあの新しい謎が出たことが脱出への一歩を示していると考えている。だから安心してほしい」


河西は一度目を伏せると、ゆっくりとまた目を開いた。


「元の世界に帰れる日も、そう遠くはないと思う。みんな、もう少しの辛抱だよ。僕がきっと謎を解いてみせるから」


河西のこの言葉にあたりが静まり返る。

ざわめきが起こらないところを見ると、なんと言葉を返せばいいのか迷っているのだろう。

周りをきょろきょろと見回し、出方を窺っているだけだった。

相手が帰りたいと思っているのか、もしくは帰りたくないと思っているのか分からない間は軽い気持ちで言葉に出来ないのだろう。

だから目配せをするだけで終わっていた。


「じゃあこれで解散としようか。時間をとらせてすまなかったね」


河西の言葉を合図に一人が立ち上がると次々とみんなが席を立ち上がり、食堂を出ていく。

自分もそれに続くが、歩きながらも敦司はある人へと視線を向ける。

そこに人がいないことを願いながら――。

けれど、その願いは叶うはずもなかった。

敦司の視線の先にはじっと席に座る樹が映っていた。

それを見て敦司は心の中で大事に至らならないようにと願った。

そう、手の中に握られていた紙は樹からのものだったのだ。

久遠の部屋から出た後、自分の部屋へと戻ったのだが壁と部屋の隙間に紙の切れ端が挟まっていたのだ。


『佐久間くんの意見を取り入れる』


書いてあった言葉はそれだけだった。

でも敦司には見ただけでその意味がすぐに分かった。

樹がこれから何をしようかと言うことも……。

食堂を出ようとしていた河西は、席から立ち上がらずに座っている樹に気付くと、足を止めた。


「樹くん? どうかしたのかい?」

「……自分にも協力させてくれませんか?」

「なんのことだい?」


河西が怪訝そうな表情をする。

やはりこの類の話はあまりされたくないのだろうか?

それに対して低く、けれどはっきりと聞き取れるような声で樹は口にする。


「この館の謎について自分も調べたいんです。河西さん一人では見落としている部分もあるかもしれない。だから、みんなで調べれば気付ける部分があると思うんです」

「そういうことかい……わかったよ。樹くんの意見も一応候補に入れておくよ。ただ、少しの間は今まで通りに生活を送ってくれないかな?」

「嫌です。考えるんではなく、今すぐお願いします。自分は一刻も早くこの館から帰りたいんです。協力をしてくれないのであれば自分一人で調べるのでいいです」

「っ、樹くん!」


これが樹の本心なのかもしれない。

自分しか知らないとは思うが、樹から聞いた元の世界に残してきた彼女への思い。

それだけ心配であり、今すぐにでも無事を確認したいと思う気持ち。

その気持ちが樹をここまで焦らせているのだろう。

河西の静止を振り切ると食堂から出ていこうとする。

その時、樹がこちらをちらっと見る。


『やっぱり河西さんは手伝ってくれない』


そう目で言ってきたような気がする。

別に怒っている様子でもないが、友好的な感じでもない。

――これから風間くんはどうするんだろうか?

敦司が予想していた事態よりも悪くなっているかもしれない。

そう思った時だった。

エントランスホールに声が響いた。


「ちょっと待てよ。ここのルールはみんなのルール。一人でもそれを破るやつが出たときにはルールは消える。だから規律はしっかりと守った方がいい」

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