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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
第六章 終わりの始まり
39/86

record39 ハウスルール

部屋に戻ると、ベッドの脇に置いておいたファイルを手に取る。

パーティーの時に河西から、そしてここに住むみんなから受け取ったファイルだ。

表紙には『みんなと仲良く暮らしていくためのハウスルール八ヶ条』と太字で描かれていた。

――とりあえず見ておいた方がいいかもな。

中を見ると、意外にも守って当たり前のようなことしか書かれていなかった。

思い出せば、河西もそんなことを言っていたような気がする。

それに書き方もそこまでしっかりとした書き方ではなかった。

みんなが馴染みやすいように箇条書きで書かれていた。


※みんなと仲良くしていく上で守ってほしいこと

1、部屋の中でだらだらしない。出来るだけみんなと一緒に遊ぶこと。

2、誰とでも仲良くすること。仲間外れとかはしちゃダメ!

3、部屋のカギは寝る時以外はできるだけ開けておいて。

4、誰かが困っていたら助けてあげること。人を思いやる気持ちが大切!

5、夕食だけは食堂に集まってみんなで食べよう。(19時には集まること)

6、なんでも出せるからって無駄遣いはしちゃダメ! 資源は大切に。

7、掃除をしなくても綺麗になるからってさぼっちゃダメ! 整理整頓はしっかり!

8、廊下で走ったり、騒いだりしないこと。周りの人の気持ちを考えて行動しよう。


このルールが守れない人はダメ人間!

元の世界でも当たり前なことはここでも当たり前!

どうしても約束が守れない人は河西さんに別室で怒られちゃう。

それでも言うことを聞かないときはこわ~いお仕置きが待ってるよ。

罰を受けたくない人はしっかりとルールを守って、みんなと楽しく暮らそう!

~みんなと仲良く暮らしてくための八ヶ条~


文章はそこで終わっていた。

ファイルを閉じながらも、敦司は軽い笑みを零す。

初め、河西からこのファイルを渡されたときのことを思い出したのだ。

ルールを守れない人には罰則があると聞いた時はすごく不安だったが、今これを読むとなんだか笑いがこみ上げてきたのだ。

全くと言っていいほど、自分が思っているほどたいしたことはなかった。

――でも河西さんの説教か……確かに嫌だよな。

館に来たのがすごく前のように思えるのは自分の気のせいだろうか。

もっと前から居て、みんなと一緒に話していた様な気がしてならない。

でも実際は昨日来たばかりなのだ。

それからいろいろなハプニングに巻き込まれたが、そこまで嫌な記憶はそれほど多くはない。

――でも今日帰れなかったら、一体いつ帰れるのだろうか。

やはりこの問題が一番気になる。

河西は自分が脱出する方法を見つけるまで普通に暮らしてくれと言っていたが、本当に任せっきりでいいのだろうか。

でも自分が協力をするといったところで足を引っ張ることしか出来ないと思うと、申告しづらかった。

だとしたら、今自分に出来ることは――。

――今まで通り、みんなと仲良く暮らしていくことに専念することか。

そんなことくらいしか、今の敦司には思いつかなかった。

ベッドの脇にあるテーブルに目をやると、そこにはみんなが書いたプロフィール帳が置いてあった。

敦司は手を伸ばすと、そのファイルを手に取った。

みんなと仲良くやっていく上で相手のことを知らなかったら元も子もない。

そう思って本を開いてみる。

中にはみんなのことがこと細かく書かれていた。

全てのページを読み終わった敦司は、二つのファイルを重ねてバッグの中に入れた。

元の世界に帰るときに持ち帰れるかまでは分からないが、これも敦司にとっては大切な思い出みたいなものだ。

――明日はまた、みんなと今日みたいに遊んだり、話したりできるかな……。

浩介のことも心配だったが、敦司は今自分にできることをやっていこうと心に決めていた。

そして、明日もみんなと楽しく暮らせるようにと願いながらも深い眠りに落ちていくのだった。




深夜三時頃。

みんなが眠りについたとき、食堂の右脇にある扉についているパネルがひとりでに

点滅を始める。

さっきみんなが何も起こらないと問題視していた、あの扉だ。

0~9のパネル全てが点滅を始め、それから少し経ってから誰もいないエントランスホールに合成音が流れる。


『おめでとうございます。見事一つ目のカギを解くことに成功しました。脱出まであともう少しです。ご健闘を祈ります』


そう告げるとパネルの点滅が収まり、ぼうっと点灯する。

そう、ここからがほんとの幕開けだと、今は誰も知る由もなかった。


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