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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
第五章 深まる友情
29/86

record29 解説

「う~ん……やっぱりだめだ。俺にはわかりそうもない!!」


気持ちいいくらいに敦司はきっぱりと言い切る。

あれから四十分若、ずっと食堂に居た。

食事は最初の十分ほどで既に終わっていたのだが、敦司と真夜はまだ食堂に居た。

あの後、敦司はモニターで食事を頼み、真夜はココアを頼んだ。

初めはあまり喋っていなかったのだが真夜が手帳を出して書き始め、何を書いているのか敦司が聞いたところから始まったのだ。

そう、あの扉を開くための謎解きが……。


「俺にはもう理解できない! やっぱ謎々とかは無理だ!」

「私の説明不足かもしれません……それに私の答えが合っている保証もありませんし」

「いやいや、真夜ちゃんのせいじゃないよ! それになんとなくだけどその答えはあってる気がするんだよなぁ」

「なんとなく、ですか?」

「うん、どっかでその問題を……」


あるところまでは出かかっているのだが、なかなか思い出せないのだ。

――まあとりあえず今はこの問題を解かなきゃ意味ないよな。

敦司は真夜の方へと向き直り、顔の前で手を合わせる。


「真夜ちゃん、もう一回説明お願い! 今度こそ理解して見せるから!」

「あの、私以外の人にも聞いてみたらどうですか?」

「いや、真夜ちゃんしかいないです! お願いします!」

「…………」


真夜から返事はなかったがその代わりに手帳のページをめくり、新しいページを用意してくれる。

――頼むと嫌そうな顔をしないでやってくれるし……結構優しい子なんだな。

もう既に三回ほど敦司に対して説明を繰り返しており、普通の人ならあきれ返る頃だ。

それなのに嫌味一つなしに教えてくれる。

だから敦司としても、どうしても真夜の説明で理解をしたかったのだ。

真夜はペンを持つと手帳に星や数字を書き込み、それから敦司に見やすいように手帳を置いてくれる。


「まず星の下の数字から説明しますね……この数字は平仮名の五十音順の横を表すものなんです。『あ・か・さ・た・な・は・ま・や・ら・わ』、これらを表すのが数字なんです。例えば、数字が『5』なら『な』の行を表す……ここまでは分かりますか?」

「あぁ、そこまでは分かった」


敦司が頷くのを確認すると、真夜は次の説明に移る。


「じゃあ次は星の説明です。星は五十音順の縦を表しています。『あ・い・う・え・お』、要するに黒く塗りつぶしているところの違いで、示すものが変わるんです。その変わり方は時計回りに黒が移動していくごとに、その分だけ下にずらせば分かるはずです」

「え、ちょっと待って。そこがよく分からないんだよな。黒く塗りつぶされて……ああっ!」


そこでようやく真夜の言いたいことに気付く。

分かってみるとすごく簡単で、なぜこんなことが分からないのか自分でも不思議なくらいだった。


「真夜ちゃん! ようやく分かったよ。ってことは……ちょっと待ってね。えっと……ん? あの問題の答えって、『わ・え・ふ・よ』?あれ、でも意味が分からないな。やっぱ間違えてるのか?」


自分でも分かると興奮していただけに、間違っていると気付くとなんとなく恥ずかしくなってくる。

けれど、真夜は首を横に振った。


「いえ、佐久間さんは合ってますよ。その答えでいいんです。私も始めは間違えていると思ったんですけど、ヒントのPCってところを読んで理解したんです」

「PC? 一体どう関係してるって言うんだ?」

「よく考えてみてください、これは元々四桁の数字にするのが目的なんですよ?」

「いや、だとしてもどうやって平仮名を数字に変換するって言うんだ? そんなこと不可能じゃないのか?」


せっかくここまで解けたのだからと考えてはみるが、敦司は唸ることしかできない。

何度考えても平仮名を数字へ変換するヒントがパソコンにあると思えなかった。

すると真夜がペンを走らせ、手帳に何かを書き込むと敦司にもう一度見せてくれる。


「普通のパソコンのキーボードってこんな感じになってませんか?」

「ん? あっ、言われてみれば確かにそうだよな! キーボードの数字の下に平仮名が書いてあった」


普段気にせずパソコンを使っていたせいか、すぐには気付かなかったが真夜の描いた図の通り確かに数字の下に平仮名が書いてあった。


「私もさすがにここまでの専門知識はないので、部屋の方でパソコンを実際出してみたんです……そうしたら答えは」

「『0・5・2・9』の四桁になるってわけか」

「おそらくそうですね……合っているという保証はないですが」

「なるほど……それよりすごいな、真夜ちゃんは! よくこんな難しいのが分かったね! やるじゃん!」


なぜだか真夜と一緒に、この館の謎を少しだけ解き明かしたみたいな気分になって感情が昂る。

だから、いつも浩介や和奏に接しているみたいな軽い感じで真夜に接してしまう。

対して、敦司のテンションについていけない彼女はどう言葉を返せばいいか困っていた。


「え、あの……」

「あっ、ごめん。つい、いつもの癖が出ちゃって」


真夜は人見知りで特に男の人が苦手と聞いていただけに、気軽に接してはいけないと思い考えるより先に謝っていた。

――なんでこうすぐに謝っちゃうかな……これも俺の悪い癖だなぁ。

そんなことを思いながらも、敦司はどう言葉を続ければいいか分からず薄笑いを浮かべる。

そして敦司が何かを喋ろうと思ったより先に、真夜の方が先に口を開いた。


「あの、佐久間さんはどうして私をそんなに気遣ったりするんですか……? 食事の時も私に声をかけてくれたし……」

「え?」


敦司としては意外だった。

真夜の口からそんな言葉が出てくるとも思っていなかったし、そんなこと気にしているとも思っていなかった。

真夜の方を向くと、いつもと違いこちらをしっかりと見つめていた。

まるで敦司が答えるのをじっと待っているみたいだった。

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