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追憶のラビリンス~館の占星術師~  作者: 遠山 龍
第三章 まだ見ぬ住人達
13/86

record13 河西 行人

コツコツとエントランスホールに靴音が鳴り響く。

昨日上ってきた階段を、敦司と河西が下りていく音だ。

前の時は恐怖と不安で頭が混乱していたが、今の敦司は違った。

これから会う、まだ見ぬここの住人達への緊張と期待で気持ちがあふれかえっていた。

そして和奏はというと、あの後敦司が起こしたのだが、意識がはっきりしていくにつれて彼女の顔が赤くなっていき「もしかして私の寝顔、見た?」という質問に対して、敦司が返事をはぐらかしていると、顔をかあっと赤く染めながらそそくさと部屋を出ていってしまったのだ。

――ああいうときは、紳士的に見てないというべきだったんだろうか……。

そんなことを考えていると前を歩いている河西から声がかかる。


「少しここで待っていてもらえるかな? 僕は食堂に全員いるか確認をしてくるから」

「はい、いいですよ。ここで待ってますね」


河西は敦司に確認をとると扉の向こうへと姿を消す。

一人エントランスホールに残された敦司は少し待った後、辺りを歩いてみることにする。

けれど初めに河西が言っていた通り、歩いてみるとそんなに広くはなく、すぐに元の場所まで戻ってきてしまう。

そこでさっき話に出た、地下への扉の前まで行ってみることにする。

――うわっ、すごく丈夫そうな素材でできてるな。

それは素人の敦司の目から見てもわかるほど、すごく丈夫そうな扉だった。

例えるなら、戦争ドラマとかででてくる核爆弾でも壊れないシェルターの入り口みたいなものだった。

ここまでする必要があるのかとあきれながらも関心をしていると、ある疑問が頭にまとわりついて離れなくなる。

それは河西と喋っているときは特に気にならなかった、「地下への扉」と断定して話していたところだった。

普通の人ならここまで丈夫な扉の先にあるものは脱出するための何か、またはもう脱出できると考えるだろう。

それなのに河西は地下へと続いていると言っていた。

――なぜ河西さんはこの先が地下へ続いていると知っているのだろうか……それとも、ただの憶測?

敦司があれこれ考えていると河西がやれやれといった感じで食堂からでてくる。


「すまないね、敦司くん。どうやらまた久遠がやらかしたみたいでね……ん? さっきの謎でも解けたのかな?」


扉の目の前で突っ立っている敦司を見つけると、河西がにこにこ笑いながらもこちらに向かって歩いてくる。


「いえ……少し気になったことがあって……」

「なんだい?なんでも僕に質問してくれていいよ。なんていっても、僕はここの館のリーダーみたいなものだからね」


上機嫌そうにさりげなく自慢をしてくる河西。

よほど自分に自信があるあるのだろうか、さすが大企業の社長といったところだ。

そんな河西を見ていると、疑っている自分が少し馬鹿らしく思えてくる。

敦司が聞こうか渋っていると、河西がもう一度語りかけてくる。


「ほんの些細なことでも構わないんだよ? まだ館に来たばかりなんだから自然と聞きたいことも多くなると思うしね」

「うーん……じゃあ一応聞くだけ聞いてみますね。なんで河西さんはこの扉の先が地下へと続くって知っているんですか?自分は脱出に関連する何かがあると考えたんですが……」

「……」


敦司が質問をすると今まですぐに返事を返していた河西に少しの間ができる。

それから何事もなかったかのように河西はまた口を開く。


「なんだ、そんなことかい? それなら最初から言ってくれればいいのに。あくまでも地下へ続くというのは僕の予想だよ。それにこの扉の先に何があるかは君がそこまで難しく考えるような話題でもないよね。今、僕達にとって大切なことはどうやってこの館から脱出するか、なんだから」

「はい……たしかに一番大切なことは脱出することでしたね……」


一応は河西のいうことに従いはしたが、心の中では河西にしては随分と乱暴な言い方だと敦司は思った。

同時に、この件に関してはあまり触れないほうがいいとも敦司は即座に思った。

だから彼に合わせて話の内容を変えたのだ。

河西はというと「ふふっ」と機嫌よさそうな表情でいる。

話す内容が頭に浮かばず、敦司が話題を作れず困っていると誰かが螺旋階段を下りてくる音が響く。

河西から食堂に全員が集まっていると聞いていたことから、他に誰かいるのかと思い音がしたほうを向く。

そこには自分と同い年ぐらいの女の子だろうか、クッキーをのせた大きな皿を持ちながら、足元が見えないのかフラフラしながらこちらに向かってくるのがみえた。


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