49
駅のホームで電車を待つこと数十分。いつもの通学の時に見掛ける人達はいなく、日曜の朝はシンっとしていて静か。
今日も合宿のお手伝いが出来るのでお弁当を準備。昨日に続き、悠哉くんに持ってきてもらう訳にはいかないもんね。
電車から降りて駅を出ると、空気の冷たさに体が震えた。6月の朝はまだ肌寒い。体を暖める為に軽く走りながら学校を目指していると、掛け声が聞こえてきた。前方からやって来る白い集団。先頭に立って走っているのは松栄さんだ。
もう練習が始まってる。7時に始まるって聞いたけど聞き間違い? まだ6時半だよ?
慌てて白い集団に駆け寄る。ランニングの邪魔にならないよう、私も走りながら挨拶をした。
「おはようございます。遅れてしまってごめんなさい」
「おはよう。遅刻はしていないから気にするな」
松栄さんの後ろからおはようと、手を振って挨拶をしてくれる聖蘭の柔道部員さん達。額には汗が出てるようで、少し息が荒い。何時から走ってたんだろう。松栄さんだけが1人、顔色を変えていないのがすごい。
「ピンクのジャージとか初めて見た。可愛い」
「ああ癒しだ。むさ苦しい野郎ばっかだとやる気出ねぇからな」
懸命に走っていても足の幅が違うせいか、ドンドン後ろの方に下がっていく。体育祭以降、体を鍛える為に少し走ってたりしてたけどまだまだだ。もう苦しくなってきたよ。
集団の真ん中まで下がった頃、隣に薙定くんが走ってきた。
「おはよう篠塚さん。今日も可愛いっすね」
「おはよ、ございます。ありがと、です」
息も切れ切れ。私より前に走っていたはずなのに、薙定くんはそれほど苦しそうじゃない。すごいなその体力。私も頑張らなきゃ。
「息荒いけど大丈夫?無理しない方がいいっすよ。なんなら俺背負いますし」
背負うっておんぶのこと? いくらなんでもランニングの途中でそんなことをしてもらう訳にはいかないよ。
「いいえ、皆さんと走りたいので大丈夫です」
心配せず後ろから着いていきますと言えば、眉を下げたまま薙定くんは置いていかれないよう、前で走ってる集団の中に戻って行った。
話しているうちに最後尾にまで下がってしまい、徐々に離されていく。時折薙定くんや他の人が振り返り気にしてくれるけど、練習の邪魔をしたくはないので先に行ってくださいと叫ぶ。そのうち視界に白い集団はいなくなってしまった。
「はぁ、はぁ……きつい……」
酸素が足らなくて目眩がしてきた。やむを得ず足を止め、持ってきた水筒のお茶を飲む。練習をしに来たんじゃなく、お手伝いをしに来たんだから倒れる訳にはいかないもんね。
少し休んで学校の塀の周りをゆっくりゆっくり走っていると、校門の前で誰かが立っている。
「後少しだ。走り抜け!」
仁王立ちしていたのは松栄さん。もしかして待っていてくれたの? 走り抜けと言われ、足が反応するかのように駆け足になっていく。後少し。後少しでゴールだ。
「よし、よく走りきった」
松栄さんの所まで走り抜くと力が抜けその場に座り込む。息が上手く出来ず、短く吸って吐いての繰り返し。後ろに手を付き、顔を上げて何度も呼吸をする私の頭を、グリグリッと大きな手で擦られた。
驚いた私に、松栄さんの初めて見る微笑み? が直撃する。
鋭い目が更に細くなり薄い唇が弧を描く。ガタイが良く上からのその笑顔? で見下ろされると、まるで獲物を見付けた蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった。
「途中で諦めずよく走った。俺達は柔軟の後練習を開始する。息が整ったら来るといい」
褒められた。厳しい松栄さんから褒められた。すごく嬉しい。固まった顔の筋肉が緩んでいくのがわかる。
笑顔、なんだよね? ビックリしちゃったけど、いつも無表情の松栄さんが笑ってくれた。なんだか少しは認められた気がして、苦しかったのもぶっ飛んじゃう。
よーし、もっと頑張る!
やる気に火がついた。ヨレヨレな足取りのまま、合宿所まで向かった。
「篠塚。早いな」
合宿所に荷物を置いて道場に行くと、聖蘭と同じようにランニングから帰って来た御子柴くんに会った。
おお、昨日クタクタになるまで練習していたのに、早起きだな皆。
「……おはよう」
「おはようございます咲山さん」
低血圧なのか、あまり機嫌が良くないみたいで顔をしかめている。咲山さんの周りに関さんの姿はなく、辺りを見回していると、関さんはお昼から来ると教えてくれた。
急な合宿だったから予定をキャンセル出来なかったらしい。事前報告大事だよね。
「関さんの分も頑張ってお手伝いします」
「当たり前よ。その為に来て欲しくもないあんたを呼んだんだから、働きなさいよ」
「はい! 働きまくります!」
仕事をくれるのは大歓迎。じゃんじゃん働きますよ。
「……なんなのあんた」
意気込む私を余所に、咲山さんの機嫌は更に下がったような気がした。疲れてるのかも。昨日は雑用だけだったけど、今日は出来る限り咲山さんのお手伝いをしよう。
午前中は私と咲山さんの2人だけなので、私は聖蘭に、咲山さんは聖琳に。はっきり言ってすごく忙しかった。
合宿が最後だという事で、昨日は学年ごとの試合だったけど、今日は学年関係なくごちゃ混ぜの試合を行うらしい。対戦表が貼り出された。
「うわ、俺松栄とかよ」
「初戦からとかついてねぇな」
誰と対戦するか確認しては所々で声が上がる。喜ぶ人もいれば、松栄さんと対戦する聖琳の先輩は、落ち込むようにしゃがんでいた。
昨日の試合は見ていなかったけど、やっぱり強いんだ松栄さん。
そんな中、対戦表をジッと見ている御子柴くんの姿が。
「どうしたんですか?」
「ん? ああ、勝ち進めれば決勝で当たると思ってな」
誰に、とは聞かなくてもわかった。真剣な眼差しの先には松栄さんの名前。順当に勝ち続けたら、決勝戦は御子柴くんと松栄さんという、すごい対戦に。
去年は御子柴くんが1回戦で負けたんだよね。公式戦じゃないけど勝って欲しい。応援あるのみ!
「応援します! 頑張ってください」
「ああ、ありがとう」
ポンポンと頭を撫でられ、組手をする為皆の所に戻っていく。最近御子柴くんに頭をポンポンされる事が多い。友達としての触れあいなのかも。
ふふ、友情を育むってこういう事なのかな。なんだかこそばゆい。
「……ちょっと、遊んでないで早く仕事してくんない」
後ろを振り向けば、鬼のような形相の咲山さんがいた。
「ごめんなさい。すぐに取り掛かります」
「色目使ってんじゃないわよ」
組手を始める柔道部の声に、小さく呟かれた言葉は私にしか聞こえなくて。縮めたいと思った咲山さんとの距離は一向に縮まっていないと感じた。
トレーニングをしていた聖蘭の柔道部員さんに付き添っていると、
「あ、あのさ。俺体堅いから、背中押して貰っていい?」
柔道にとって柔軟さはとても大事な事で、少しでも体を柔らかくしたいらしい。背中を押すぐらい御安いご用です。
「痛くないですか?」
「全然平気!寧ろもっと力入れてもいいぐらい」
「ちょ、お前何やってんだよ!篠塚さん、俺も俺も!」
見ていた他の部員さんが、鼻息を荒くして群がってきてちょっと怖い。でもこれもサポートの1つ? なのかも。
「次俺! 腕立てするから、背中にの、の、乗ってくんない?」
背中? いくらなんでも潰れちゃいますよ?
だけど大丈夫だと言われ必死にお願いされたので、取り敢えず背中の上に正座してみた。他の部員さんが「その手があったか」とか騒いでて、腕立ての様子を眺めてる。変なの。
私の重さも何のその。背中に乗ってても腕立て伏せが出来ていて驚いた。鍛えてる人はやっぱりすごい。
「重くないですか?」
「大丈夫、もっと、体重かけてもいいよ」
上下に動く振動は、100円入れると動く遊具みたい。実際に見たことも乗ったこともないけど。
「篠塚さん、今度は俺だから」
「えっ!?」
二の腕を引っ張られ、無理矢理持ち上げられそうになった時、
「はーい、そこまで。これ以上はダメだよセクハラ集団」
「なっ!」
「榊先輩」
引っ張られた衝動で崩れ落ちそうになった所を、榊先輩が支えてくれた。意外な人が登場した事で私は勿論、柔道部員さんも驚く。
掴まれた手を振り払い、背中で私を隠すように壁となる榊先輩。どうして此処にいるんだろう。
「愛花ちゃんが抵抗しないのをいいことに、何セクハラまがいな事してんの?」
「は、はぁ?セクハラなんかしてねーし」
「言い掛かり付けてんじゃねーぞ榊」
さっきまでトレーニングしていた柔道部員さんが榊先輩を囲む。長身の強面のごつい体つきの人に囲まれても、榊先輩は動じず笑顔のまま。寧ろ、なんか怒っているような。目が笑っていない気がする。
「セクハラはしてない?なら今した事を松栄に伝えようか?」
「はっ、お前の事なんか信じるかよ。この腰抜け野郎が」
榊先輩に対しての風当たりが強い。仲が悪いんだろうか。
それにしても榊先輩は腰抜けなんかじゃないよ。駅で男の人に連れていかれそうになった時助けてくれたもん。
「榊先輩は腰抜けなんかじゃありません!」
「……愛花ちゃん。大丈夫、こんな奴らの言う事なんか気にしないから」
そう言って笑ってくれた。いつもの榊先輩だ。
「て事で、そろそろ出てきたらどうだ松栄」
「な、なに?」
「松栄!?いつからそこに?」
おかしい。
榊先輩の背中に庇われているはずなのに、トレーニング室の入り口から伝わる威圧感。どす黒い威圧感が半端ないです。
松栄さんの登場にその場が凍りつく。1名を除いて。
誰も口を開く事はなく、松栄さんも何も言わない。榊先輩の背中から覗いて見た松栄さんは、悪魔も逃げ出す顔をしていた。
足が震えてきた。何もしてないけど謝りたくなる。それぐらい怖い。というか、なんでこんな空気になってるのかわからないんですけど。誰か説明を!
「松栄。これ1歩間違えれば部活停止処分だよねぇ?」
「…………」
「ちょっとまて!そこまでの事してねぇだろ!」
「あれー?した事は認めるんだ。それなら他の人に聞いてみる?お前らがやった事はセクハラかどうかって。自分の所のマネージャーじゃなく、他校の女子生徒になにやってんのお前ら。部活停止処分じゃ生ぬるいぐらいだよ」
怒ってる。悠哉くんのような火がついたよう怒りじゃなく、静かに笑みを浮かべながら怒る姿は、以前にも見た事があった。
「て、部活停止処分?そんなのダメです!」
榊先輩や松栄さんに驚いてたけど、聞き捨てならない言葉があった。部活停止処分なんてそんな事させる訳にはいかない。
「どうして?こいつらに甘い顔する必要はないよ。セクハラまがいな事したんだし」
「されてないです。トレーニングのお手伝いをしただけなので」
「だ、だよなー。ほら、篠塚さんもこう言ってんだろ榊。言い掛かりつけんなよ」
私の言葉に榊先輩があからさまに不機嫌になっていく。眉間に皺が。柔道部員さんは逆にホッとした笑顔で、松栄さんの表情は変わらず。瞬きしてないんですけど……え、生きてるよね?
さっきからセクハラセクハラと言っているけど、思い当たる節がない。
「私がしたのは柔軟で背中を押したり……ああ、その時体が堅いはずなのに、もっと押してもいいよって言ったので乗り掛かるように押してみました。痛いはずなのに弱音を吐かずに頑張ってましたよ皆さん。後は腕立て伏せの時、重石にと私が背中に乗りました。すごいんですよ、私が乗っても腕立て伏せ出来ちゃうんですもん。さすがですよね」
真剣にトレーニングに取り組んでいた様子を説明すると、何故か皆難しい表情になっていた。なんで?
「……だって。松栄はどう見る?」
「いや、だから篠塚さんはされてないって言って……」
「そういう事に無知なのをわかっていてやったんでしょー?咲山に同じこと頼めるの?」
「それはっ……」
どうやら私がわかっていないだけで、私がした事はあまりよくない事だったらしい。セクハラの基準がわからない。だって昨日も柔軟体操で背中を押したけど何も言われなかった。乗り掛かりはしなかったけど。
空気が重くなる一方で、部活停止処分はなんとか止めたいと思うけど言葉が出てこない。折角合宿までして頑張ってきたのに、試合はおろか練習も出来ないのはあまりにも可哀想だ。
「私もちゃんと断らなかったので、部活停止処分は……」
「篠塚」
それまでずっと黙ったままの松栄さんが動いた。皆の視線が集まる中、私の傍にきて頭を深く下げる。
「すまない。邪な思いを持った部員を制する事が出来なかった。部長である俺にも責任はある。本当にすまない」
「ええっ!?そんな松栄さんが謝る事じゃないですよ」
まさか頭を下げられるなんて思わなくて、狼狽えるように両手を振って止める。それでも聞き入れてくれなくて、榊先輩は煽るように口を挟む。
「謝るだけじゃなくて誠意を見せたら?」
「わかった。では俺を殴れ」
「無理です!」
即答で拒否。暴力はいけませんよ暴力は。
「私にも落ち度はあったので今回は見逃してもらえませんか?」
「……まるで愛花ちゃんが悪いことしたみたいな言い方だね」
呆れたように肩をすくめ、裏首筋を掻く。
「でもまあ、確かに危機感もなく無防備だった愛花ちゃんも馬鹿だと思うけどさ。最初に言ったよね? 危なくなったら逃げなよって」
確かにそんな事言ってたような……すっかり忘れてました。
それにしてもどうして榊先輩が此処に? 今日は部活がなかったのだろうか。榊先輩が来るとは聞いていなかったから、てっきり部活があるんだと思ってたのに。
「はー。やっぱり様子見に来てよかったよ。危うく可愛い後輩が汚される所だった。お前らよかったねー、優しい子で。後はよろしく松栄」
全ての事は松栄さんに任せるようで、お互い目を会わせると柔道部員さんの肩を掴み、松栄さんは再び鬼のような形相になった。
「ああ。2度とこんな事をしでかさないようきっちり説教、及び扱きあげる」
最後の『扱き』という言葉をものすごく低い声で言うものだから、さーっと青ざめていく柔道部員さん達。厳しそうだよね、松栄さん扱き。
ガックリと肩を落とした柔道部員さんと一緒に松栄さんも行こうとした時、振り返り私と目が合った。
「本当にすまなかった。誠意は見せるし、俺に出来る事があれば言ってくれ」
「は、はい」
朝に見た笑顔。隣で榊先輩が「げっ」と驚いて、松栄さんは行ってしまった。
松栄さんのせいじゃないのに、真面目な人で責任感のある人なんだ。薙定くんが尊敬しているのも、柔道の強さだけじゃなくそういう所を知っているからなのかも。
「本当によかったね、来たのが俺で。和樹や健人だったらタダじゃすまなかっただろうから」
「えっ? 一ノ瀬先輩も御子柴くんも酷いことはしないと思いますよ?」
タダじゃすまないなんて物騒。2人も優しいし、人に危害を加えるような人じゃない。
首を傾げる私に、榊先輩は幼い子を見るような、それでいて、何処か遠くを見るような目を向けた。
「愛花ちゃん。人は見掛けによらないものなんだよ」
「それって……」
「さあ?」
それだけを言って、榊先輩は道場の方へと歩いて行く。
榊先輩と一ノ瀬先輩と御子柴くん。この3人とは大分打ち解けてきたと思っていたけど、まだ私にはわからない事がきっとたくさんある。普段では知ることが出来ない部分。今、榊先輩に聞いてもはぐらかされるだけ。いつか私にも知ることが出来るのかな。
榊先輩の後ろを追い掛けて、気まずい雰囲気にならないよう話題を変えた。どうして此処に榊先輩がいるのかを聞くと、
「昨日は部員が練習試合中に怪我をして、病院まで付き添ってたから結局来れなかったからさ。どんな様子か見に来ただけ」
「怪我?大丈夫だったんですかその人?」
「ただの捻挫だから平気でしょ。それより愛花ちゃんの方こそ大丈夫だったの?慣れない場所で」
昨日の事を聞かれたので、楽しかった事やあまりお手伝いが出来なかった事を伝えると苦笑いされた。
「愛花ちゃんはさ、もうちょっと学ぶべきなんじゃない?常識もそうだけど、何でもかんでも素直に受け入れすぎ。だから利用されるんだよ」
見下ろされる視線。おどけた口調じゃなく、冷たく低めの声が突き刺さる。
常識は足りないのは自覚してるけど、利用されるっていうのはどういう事?
「隠れた悪意に気付かないと足下救われるよ、いつか」
「あの、意味がわからないんですけど……」
「もっと人を疑えってこと」
善意の振りをして悪意を持って近付こうとする。そういう人もいるんだと、榊先輩は言う。
確かにそうかもしれない。今の私には隠れた悪意なんてわからない。だけどそれを恐れて疑ってしまうのは、なんとく嫌だった。
「利用されてもいいです。人と関わるのが今はすごく楽しいですから」
「……それで痛い目みても?」
「その時はその時です。失敗したらまたやり直せばいいし、辛かったら立ち上がればいいんです。だって、私健康ですから」
「なんでそこで健康?」
不可解そうに眉を潜める榊先輩に微笑む。
健康は大事な事だよ。いきなり道を断たれる事もない。立ち塞がる壁があって突き破れなくても、健康だったらいくらでも別の道を探せるから。健康じゃなかったら前に進む事も、逃げる事も出来ない。
「変な所で頑固だね。らしいって言えばらしいけど。だからつい助けちゃったんだろうな」
最後の言葉を疑問に思うより先に、道場の方から騒がしい声がした。
「マジっすか松栄さん!?」
「二言はない。いいからやれ」
榊先輩と顔を見合せ、駆け足で騒がしくなっている場所に向かうと人だかりが出来ていた。
「なんの騒ぎ?」
人混みの中を掻き分けて進む榊先輩に付いていく。輪の中心を見れば、松栄さんとさっき一緒にトレーニングしていた柔道部員さんが、青ざめて椅子に座っている。その後ろには何かを持った他の部員さんが、オロオロしていて困り果てていた。
「いいからさっさとしろ!」
「は、はい!」
手に持った何かから、ウィーンという音がして松栄さんの頭に当てる。するとどうだろう。ヒラヒラと松栄さんの髪の毛が落ちていくではないですか!?
「ええっ!?」
散髪? こんな所で?
暑いから髪を切っちゃってるの? それにしては一緒に切られている部員さんは顔色が悪いような。
すっかり輝かしい頭になってしまった松栄さんは、柔道着を着ているせいか、どう見ても修行僧にしか見えない。私に気付いた松栄さんは立ち上がり、
「篠塚。これが誠意の1つだ。あのような事がないよう気を引きしめていく」
お日様の光に反射して輝く頭。茫然とする私の横で、高らかに笑い声をあげる榊先輩がお腹を抱えていた。
今回で合宿編は終わらせられませんでした。予定より盛り込みし過ぎました。
次回で本当に合宿編は終わります。
既に書き上げてるので、明日の同じ時間にアップします。
2ヶ月もの間、連絡なくお休みしてしまい申し訳ありません。それでもブクマを外さないで頂けたり、感想を頂けたりと本当に嬉しいです。ありがとうございます。
これからもどうぞ宜しくお願い致します。
黒川天理