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 田中くんの事を思い出しつつ、次のトレーニングに。合間を見て水分補給をする為、業務用のような大きな丸い水筒が、すぐに空っぽになってしまった。


「中身はスポーツドリンクですか? 補給してきますけど」

「悪いな。食堂で貰えるはずだから頼むよ」


 トレーナーの方に聞き、水筒を両手に持って食堂へ。そこには私と同じように、水筒を持ったマネージャーさんがいた。仲が良さそうにお喋りをしながら補給していて楽しそう。私も交ぜて貰っちゃお。


「こんちには。補給の仕方教えて貰ってもいいですか?」

「…………」


 あれ、反応がない。聞こえなかったのかな?

 もう一度声を掛けても山咲さんは応えてくれず、関さんは私に気付いているものの、私と山咲さんを交互に見てオロオロしているだけ。


「あの……」

「そういえばさぁ、生徒会にいるビッチが手伝いに来たけどさぁ、いい迷惑だよねぇ」


 生徒会にいるビッチ。誰のことだろう? そんな名前の人いないけど。

 そこでやっと私に気付いてくれたのか、咲山さんがチラリと私の方に目を向け、クスりと笑う。


「なんだ居たんだビッチさん」


 ニヤニヤと笑う咲山さんの後ろで、顔を青くさせる関さん。


「ビッチって私のことですか?」

「あんた以外誰がいんの」


 なんてこと。ビッチとは私のあだ名らしい。初対面なのにあだ名を付けてくれるなんて、親しみやすい人なんだ。

 どうしよう、あだ名で呼ばれたことないから嬉しいよ!


「なんだか照れちゃいますね」

「はぁあ? バカじゃないのあんた」


 なんで嫌そうな顔をされるのかわからないけど、嬉しい気持ちを抑えて補給しないと。部員さん達の喉が渇れてしまう前に急がなきゃ。


「水筒に入れるドリンクは冷蔵庫から持ってくればいいんでしょうか?」

「……関さんが教えてあげれば」

「えっ!? は、はい。水筒の中にスポーツドリンクの粉末を入れて、あそこの冷水機の水を入れるんです」


 人数が多いから市販で買うより自分達で作った方が経済的で場所も取らない。皆いっぱい飲むもんね。

 教えられた分量を入れて水を入れ、溶かす為にかき回していると、咲山さんの視線が刺さる。


「他校にまで尻尾振るなんて男好きも程があるんじゃない? そこまでしてモテたいの?」

「はい?」

「こっちは真剣にマネージャーの仕事してんだから、男目当てで手伝われるのははっきり言って迷惑。それが終わったら帰ってよ」


 ハッキリとした口調で言われて衝撃を受けた。お手伝いをすることで迷惑を掛けるなんて。でも待って。迷惑の理由がおかしい。


「男目当てなんかじゃないですよ! お手伝いがしたいんです」

「それが迷惑なの。あんたに仕事を教えるぐらいなら、自分でやった方が早いの。わかる? そこに居るだけで邪魔なんだけど」


 そんな……居るだけで迷惑を掛けていたなんて。でも言われてみると確かに、不慣れな私が記録とか補給するより、慣れてる2人がした方が早い。

 お手伝いしたかったけど、足手まといになるなら帰った方がいいよね。はぁ、お手伝いもっとしたかったな。

 肩を落としガッカリした様子に、咲山さんがある提案をしてくれる。


「そんなに手伝いたいなら、裏方の仕事をやってよ」

「裏方?」

「記録係りは私らがやるから、あんたは洗濯とか荷物運びしてよ。それも『お手伝い』でしょ?」


 ニヤリと笑う咲山さんの言葉に、下がってしまったテンションが急上昇!


「やりますやります! 洗濯でも掃除でも、お手伝い出来ることがあるんならやります!」


 洗濯なら私にも出来るから足手まといにならないはず。

 やる気が出てきた私を怪訝そうに見つめ、ドリンクがたっぷり入った水筒を咲山さんが持ち上げる。


「あっそ。ならこれは私が持って行くから、あんたは洗濯機にあるタオルを干してて。それが終わったら部室周りの草むしりと水まき。そうそう、ついでに部室の掃除もしてよ。いい? 道場には来ないでよ」


 道場に行ってはいけない理由がわからないけど、私でも出来る仕事がたくさんあって嬉しい。早速部室の場所を教えて貰い、洗濯物を干しに行こう。トレーニングをしている所を見れないのは残念だけど、それはまた今度見学しに行けばいいしね。今はお手伝いが最優先だ。


「あの、先輩。仕事押し付け過ぎなんじゃ……」

「はぁあ? 何言ってんの。篠塚がやりたいって言ってんだからやらせればいいじゃん。そうでしょ?」

「はい! お2人は記録係りをお願いします。不慣れな私がやるよりずっといいですから」


 合宿は土日の2日間しかないんだから、スムーズに進んだ方が絶対にいい。洗濯機のある部室へと走って向かった。


「先輩、まずいですよ」

「……どうせすぐにボロを出すわよ」




 運動部共同の洗濯機の前に、山盛りになったタオルが。これ全部洗うんだ。手洗いじゃとても間に合わない。電化製品万歳。

 聖琳と聖蘭のタオルが混ざらないように分けて干す為、最初に洗っていたタオルを取り出して聖蘭のタオルを洗濯機の中に。ふふふ、洗濯の仕方はもう覚えてるもんね。お母さんのお手伝いしててよかった。

 重っ。カゴいっぱいのタオルを持って、外にあった物干し竿の所にふらつきながらたどり着く。


「あ、これ御子柴くんのだ」


 1枚1枚皺を伸ばして干していくと、御子柴くんの名前が書かれたタオルを見つけた。使い込まれた真っ白なタオル。今頃頑張ってるかな。

 全部を干し終わり一段落。これを毎回やってるなんて、マネージャーさんは大変だ。洗濯1つ腕がちょっと疲れた。

 だけど泣き言を言ってる暇はない。次は草むしりをしなきゃ。その前に水まきをする為に、ホースを用具室から借りておいた方がいいかも。


 職員室に用具室の鍵を借りに行くと、須藤先生が気だるそうに椅子に座っていた。


「おはようございます須藤先生」

「あー? 篠塚か。なんでいる。今日は土曜日だぞ」

「柔道部のお手伝いに来ました。用具室の鍵を借りていきますね」

「お前も好きだな、手伝うの」


 無精髭をなぞりながら、呆れたような眼差しを向けられるが気にしない。誰かの役に立ちたいのは本当だけど、なにより私がやりたいのだから。

 職員室の時計を見ればもう10時。お昼休憩は12時半だったから、早く戻らないと時間に間に合わない。


「それでは失礼します!」

「おー、頑張れよ」


 おおぉ……須藤先生が応援してくれてる。頑張ります!


 用具室でホースを借りた後、草むしりをするけど軍手を持ってくればよかったと後悔。柔道部の部室の周りは結構草が生えていて、1人でやるとなると時間が掛かりそう。


「でもやるって言った以上、やるしかない!」


 草をむしりながら、時々蟻の行列を見つけたり、名も知らない小さなお花を見つけたりと、草むしりを楽しんでいたら、なんだか頭がふらふらしてきた。

 お日様が登り、気温が上昇したせいか蒸し暑い。額から汗が垂れ、日差しを受ける背中が熱い。


「篠塚さん!」

「……ほえ?」


 名前を呼ばれて振り替えれば、薙定くんが驚いたような顔で立っていた。


「顔が真っ赤っすよ!? 水分補給してますか? それに帽子も被らないでそんな事やってたら日射病になりますよ」


 焦った顔をした薙定くんが、持っていたタオルを頭に被せてくれる。

 あ、日射病か。こんなに天気が良かったら日射病になってもおかしくないか。それに水分補給もしてないし、危なく倒れる所だった。健康だからって、体には気を付けなきゃ。


「ありがとうございます。どうして此処に?」


 まだお昼休憩の時間じゃないはず。


「水筒の補給から戻って来ないし来たのは別の人で、聞いたら違う仕事をしてるって言うから気になったんすよ」

「そうだったんですかー。今は草むしりをしてたんです。もうすぐ終わりますけど」

「1人で、ですか?」

「はい」


 火照った熱を冷ます為、1度日影に移動。体育祭の時も暑かったけど、テントの中にいたし今日程気温が高くなかったから油断しちゃったな。

 手をパタパタと団扇代わりにしていると、眉を潜めた薙定くんが手の甲を口に当てて考え事をしている。


「仕事押し付けられてるんじゃないんすか? もしかして虐めとかっ」

「いえいえいえ、違いますよ! 私の方が迷惑を掛けちゃってたので」


 勘違いさせたらダメなので、山咲さんとの会話を伝えるとますます眉間に皺が。なんでそんな顔になるんだろ。


「確かに言ってる事は一理あるんすけど、なんか引っ掛かりますね。1人でやるような事じゃないっすよ」

「そうですか? 私は楽しいので全然構いませんけど。さっき彼処で可愛いお花見つけたんですよ」


 部室の壁際にひっそりと咲いていたお花の場所を教えると、薙定くんが可愛いと呟いた。


「可愛いですよねー」

「可愛いのは篠塚さんすよ」


 うん、確かに愛花ちゃんは可愛い。そこは同意。


「午後から聖琳と練習試合するんすけど、見に来てくれませんか?」

「え……」


 見に行きたいのは山々だけど、道場に行ったらダメだって言われてるしどうしよう。


「時間があったらでいいんで。俺が柔道をしてるとこ見てもらいたいんすよ」


 真っ白な歯を見せて笑う薙定くん。うぐぅ……見たい。咲山さんに頼んでみようかな。仕事を全部終わらせたら大丈夫だよね。


「残りの仕事を全部終わらせたら聞いてみます」

「え、残りの仕事? それって……」

「あれー晴道じゃん。サボっていちゃついてんのかよ」


 薙定くんの言葉を遮るように現れたのは、聖蘭の人。確か愛花ちゃんの噂を知っていた人だったような。


「ち、違いますよ! ちょっと休憩してたんすよ!」


 慌てて薙定くんが立ち上がり、少し顔を赤くして否定する。熱いのかな?


「ふーん。で、悪女ちゃんは他の子に仕事押し付けてサボってんの?」

「はぁ? いくら先輩でも怒りますよ! 篠塚さんは1人で此処の草むしりをしてたんですから」

「えっ、マジで?」


 その人は辺りを見回し、草の山を見て驚いていた。

 所で、此処には私しか女の子はいなし、悪女ちゃんとは私のことなんだろうな。

 最近は皆優しく接してくれるので、悪意の眼を向けられることは少なくなっていたので、なんだか懐かしいなと思ってしまう。


「おかしいなぁ。聖琳の悪女といえば、可愛いけど我が儘で傲慢で、生徒会の権力を振りかざしては男に色目を使うって聞いてたんだけど」


 すっごい言われようだ。そんな噂が流れてるなんて、愛花ちゃんは有名人だなぁ。


「そんなの根も葉もない噂っすよ。きっと篠塚さんを妬んでる奴が流したんじゃないんすか」

「んー、実際どうなの悪女ちゃん?」

「ど、どうなんでしょうか?」


 聞かれても困る。確かに愛花ちゃんは我が儘だと聞くけど、本当は寂しがり屋なだけであって。でもそれは私が知る愛花ちゃんであって、学校での愛花ちゃんを見たわけじゃないからなんとも言えない。


「どうなんでしょうかって、自分の事でしょ」

「私記憶喪失なので」

「「記憶喪失!?」」


 2人揃って驚かれた。その反応も懐かしい。 


「記憶喪失って、何も覚えてないの? 何時から?」

「えーと、GW明けからです。全部忘れてしまったので、皆には色々と驚かれたりしてるんですよ」


 今では私も皆も随分と馴染んでると思う。人の対応力ってすごいよね。

 驚いたままのその人の隣で、悲痛に似た顔をする薙定くんが。


「全部忘れてしまうなんて……辛いっすよね」

「そんなことないですよ。確かにわからないことでいっぱいだけど、毎日が新鮮で楽しいです」


 同じことの繰り返しのようで、同じ日なんて1つもない。毎日がキラキラと輝いている。


「生徒会の皆や、真由ちゃんと佳奈ちゃんやクラスの皆。皆さんと仲良く学校で過ごせて、私とっても幸せ者なんです。貰った分の幸せ以上をお返ししたい。だからお手伝いもしたいんです。まあ、半分は私がしたいだけなんですけどね」


 なんだか気恥ずかしくなって、ポリポリと頬軽く掻く。でも本当に私は恵まれてるよ。天使さんに感謝しなきゃ。それに誰よりも愛花ちゃんに。

 帰りに神社に行ってお祈りしよう。あれ、でも天使さんなら教会の方がいいのかも。この辺りに教会あったかな?


「天使だ。篠塚さん本当に天使だ!」


 ご、号泣してる。なんで?


「あれだなー。噂は宛にならないってやつ」

「俺、マジで惚れてます。俺と付き合ってください!」


 両手を掴まれ真剣な表情で言われるとドキッとしてしまうけど、手の力がちょっと強くて痛いんですが。


「あの、ごめんなさいっ」

「付き合ってから俺の事ゆっくり知って欲しいんすよ。おれっ、俺、本当に篠塚さん好きっす!」


 鼻息を荒くし、目が血走ってる。なんか怖いです。というより、本当に力が強すぎて手の骨が砕けちゃう!!


「痛っ!」

「あ、おい晴道、やめろ!」

「先輩は邪魔しないでください!」


 薙定くんの肩を掴んで先輩さんが止めようとしたのを、薙定くんは顔だけ振り返って威嚇。それによって力が余計に入る。

 ゴキッて、今手がゴキッて鳴った!? このままじゃ本当に怪我しゃう。

 離してって叫ぼうとした時、


「すんません。柔道部って此処っすか」


 聞き覚えのある声。

 薙定くんも動きを止め、声の方に振り向く。薙定くんの肩越しに見えたのは、不機嫌そうな顔をした何時もの悠哉くんがいた。


「ゆ、悠哉くん?」

「あ? お前此処にいたのかよ。……つか、何してんだよてめーら」


 なんで学校に悠哉くんが? しかもすっごく睨まれてるような……

 悠哉くんが現れたことで薙定くんの手の力が緩み、骨が砕けなかったことにホッとしたら、悠哉くんに強引に引き離された。


「なっ、誰だお前!?」

「てめーこそ誰だよ」


 長身の悠哉くんに見下ろされても怯むことなく睨み合う2人。喧嘩はいけません。


「悠哉くんはどうして此処に?」

「あー……」


 背負っていた鞄から取り出したのは、ピンクのお弁当袋。


「弁当。今日1日学校にいるんだろ」


 目の前に差し出されたお弁当。一瞬驚いて反応が遅れてしまったけど、これはもしかしてっ、


「悠哉くんの手作りですか!?」

「んな訳ねーだろ」


 おふっ、チョップされた。

 でもわざわざ届けに来てくれたんだよね? お休みなのに私の為に学校にまで。どうしよう、感動で胸から何かが込み上げて来る! すごく嬉しい!


「ありがとうございます。悠哉くん大好きです!」

「大好き!?」


 悠哉くんは「うるせー」と言ってデコピンしだけど、最近こうしたスキンシップが増えてきた気がする。仲良くなってる証拠だよね? お姉ちゃんと言ってくれる日も近いかもしれない。

 そんな私と悠哉くんの隣で、驚いた顔をした薙定くんが震えながら指を指す。


「ま、まさか……か、彼氏?」


 呟いた声はあまりに小さくて聞き取れなく、そのままガックリと膝を着いた。


「えっ、どうしたんですか?」

「……篠塚さんはそいつの事……す、好きなんすか?」


 膝を着き四つん這いになった薙定くんに驚くも、聞かれたことに素直に答える。


「悠哉くんのことですか? はい、大好きです」

「っ!! ……そっすか」


 落胆する素振りで深いため息をつき、なにか呟いたと思ったら勢いよく顔を上げた。その瞳に涙を浮かべて。

 ええっ、なんで泣きそうなの?


「お前、し、篠塚さんを、篠塚さんを泣かせたら俺が許さねぇからな!!」


 泣いてるのは薙定くんです。

 悠哉くんに対して指を指してそう言い放った薙定くんは、もう目からも鼻からも大洪水。どうしてそうなったの。


「ちくしょうぉぉおおおおっ!!」


 叫びながら走り去って行く薙定くんを、茫然と見つめるしかなかった。


「……なんだ彼奴」

「晴道の失恋回数更新決定か。さすが悪女ちゃん、もう新しい彼氏出来たんだね」

「彼氏? いませんよ?」

 お互い不思議そうに見合せ首を傾げる。


「隣にいるそいつが彼氏なんじゃないの?」

「彼氏じゃねーよ!」


 透かさず否定の言葉を叫ばれ、ちょっとしょぼん。恋人みたいに仲良く見えてるってことだと思うけど、そこまでハッキリ否定しなくても。まあ、お姉ちゃんですからね私は。いいです、拗ねませんよ。

 はっ! もしかして悠哉くんは好きな人がいるんじゃ? まさか恋人が? そんなお話は1度も聞いたことがなかったから興味ある。もし悠哉くんに恋人がいたらちゃんと姉として挨拶しなきゃ。弟をよろしくね、なんて言ってみたーい!


「恋人じゃないんなら、お2人はどういう関係?」

「悠哉くんは弟なのです」

「えっ、弟!? 似てなっ」


 前にも悠哉くんとの関係に驚かれたけど、そんなに似てないかな?


「こいつが彼女とかありえねーから」


 彼女じゃなくてお姉ちゃんでいて欲しいってこと? おふふふっ、照れちゃいます。


「結構酷い事言われたのにもの凄く嬉しそうな顔してんだけど……」

「その顔きめー。俺もう行くからな」


 用は終わったと言わんばかりに面倒臭そうな顔をして、悠哉くんは帰ろうとした。


「え、帰っちゃうんですか? よかったら一緒にお昼食べませんか?」

「ダチと食べに行くんだよ」


 一緒に食べたかったけど、友達と約束してるんならしょうがない。お休みの日だもん、友達と遊びたいよね。

 納得したものの、落ち込んでるのが顔に出てしまったのか、悠哉くんため息が聞こえた。


「飯ぐらいいつも食ってんだろうが」

「お外で2人で食べたことないです」


 家族で外食したことや、お家で2人で食べたことはあったけど、外ではまだない。お外で食べるとまた違った感じがしていいと思うんだよね。


「あー……また今度な」


 やれやれといった感じで後ろ首を掻く。約束してくれたんだよね? 一緒にお外で食べてくれるんだ。

 わわっ、嬉しい!


「約束ですよ! 絶対絶対食べましょうね!」

「………10年後な」

「はい! 10年後楽しみにまってます」

「ポジティブ過ぎじゃね!?」


 一緒に食べられるなら10年待ちます。忍耐強さでは負けませんよ。


「じゃあな。怪我すんなよ」

「はい。悠哉くんもお気を付けて」


 届けてくれたお弁当を抱きしめ、去っていく悠哉くんの背中を見つめながら、手を大きく振る。このお弁当のおかげで、午後からも頑張れちゃいます。




「……君達本当に姉弟?」





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[気になる点] 脱字:いない 所で、此処には私しか女の子はいなし、悪女ちゃんとは私のことなんだろうな。 脱字:を なんだか気恥ずかしくなって、ポリポリと頬軽く掻く。 誤字:た 悠哉くんは「うるせー」と…
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