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「何処から話そうかしら」
ティーカップを置き、ゆっくり肩で呼吸した後、お母さんは口を開いた。
「初めてお父さんと出会った時、この人ロボットなのかしらって思ったわ」
「ロボット?」
「いつも無表情で笑わないし怒らない。女の子に囲まれても冷たく見るだけ。男女関係なく人気あったけれど、友達と呼べる人は少なかったんじゃないかしら」
無表情なんて、今のお父さんからはとても想像がつかない。何時だって笑顔だもん。
「前から思ってたけどよ、なんで親父と結婚したんだよ」
「……それはねぇ」
苦笑いしながら「あそこまでされちゃあね」と呟く。どんな出会いだったんだろう?
お父さんはお母さんが大好きだっていうのは見ててわかる。毎日愛してるとか、オデコにキスしたりとか、見てる私が照れちゃうぐらいに。
「お父さんと出会ったのはサークルの飲み会。色んなサークルの人が集まった飲み会で、お父さんは無理矢理連れて来られた感じだったわ」
当時の事を思い出したのか、クスクスと笑い懐かしそうに目を細める。
「お母さん、最初はお父さんが大っ嫌いだったの」
「ええっ!?」
「見透かしたような目で人の心を言い当てて場の空気なんて読まない。顔が良いだけの、無神経で相手の気持ちなんてお構い無しな人。その飲み会でカチンときちゃって、お父さんにビール掛けちゃった」
悪戯した子供のような笑顔。最初は仲が悪かったんだ。
「でもね、お父さんは人の気持ちを考えないんじゃなくて、わからなかっただけだったのよ」
「今と変わらねーじゃん」
「今以上にね。それがわかってから、なんでかお父さんの姿を見掛ける度に視線が放せなかった。今思えば、あの時から惹かれてたのよ」
悠哉くんのツッコミに苦笑いしつつ、お母さんとお父さんの馴れ初めの話は続き、佳奈ちゃんの恋話以上にドキドキして聞いていた。
あまり詳しくは話してくれなかったけど、次第に2人の距離は近くなっていって、付き合うようになったんだって。く、詳しく聞きたい。今度教えて貰おう。
「それで結婚しようって言われたんだけど、実はお父さんには親が決めた婚約者がいたの」
「えっ!」
私も驚いたけど、それ以上に驚きの声を上げたのは、一ノ瀬先輩だった。
「凄く反対されたわ。婚約者の人のお家は莫大なな資産家で、お父さんの実家の会社の経営を援助して貰う為の結婚。所謂政略結婚ね。相手の方は美人でお父さんの事が好きだったようだから、相手の家の方からの批判も凄かったの」
これが俗に言う、昼ドラというやつでしょうか? 病院のホールであったテレビに、お昼から始まるドラマ目当てのおばちゃん達が楽しそうに見ていたのを覚えてる。愛と憎悪にまみれたドロドロのお話で、あの時の私はまだ子供だったからよくわからなかった。
「お父さんのご両親は、子供は親の敷いたレールを歩むべきだという考えの持ち主で、何を言っても反対の言葉しか出なかった」
ソファの背もたれに寄り掛かり、天井を見つめるお母さん。好きな人との結婚を反対されたら辛いと思う。
「親の言うままに大学まで進んだらしくて、親に逆らった事がなかったと思うの。反対するご両親に頭を下げて言ったのよ」
間を置き、真っ直ぐに私を見つめ、
「結婚相手は彼女しかいない。彼女だけを愛してる。彼女と結婚出来ないのなら、この家を出ますって」
「きゃーー!!」
聞いてるだけで頬っぺたが熱くなってくる。家族よりお母さんを、愛する人を選んだんだ。
恥ずかしそうに微笑むお母さんに、呆れた顔でお菓子を食べている悠哉くん。恋話は興味ないのかな?
お母さんの隣で嬉しそうに微笑む一ノ瀬先輩は、もしかしたら自分と重ねているのかもしれない。間宮先輩にも婚約者がいるから、どうか一ノ瀬先輩には頑張って欲しい。
「子供は親の言う事を聞くべきだと怒鳴ったご両親に、お父さんはこの先の未来は自分で決めさせて下さいと言って、今はあちらとは絶縁状態」
「え……」
「あちらの圧力が掛かったのか、決まっていた就職先から断りが来て当時は大変だったわ」
高ぶった気分が一転、重い沈黙になる。お父さんの実家って、かなり大きい会社を経営してたんだ。
「それでもお互い支えあって頑張って来たわ。事業を起こして何度も挫けそうになりながらも、私を幸せにするんだって。そして、愛花がお腹に授かったの」
お父さんのお母さんに対する愛情深さが伝わってくる。最初に聞いてたロボットの話から此処まで人は変われるんだって、恋ってすごい!
「愛花がお腹に授かったと言ったら顔面蒼白だったのよね」
「え」
「どう接したらいいかわからなかったんだと思うのよ。やれ歩いたらダメだとか、やれ健康な物しか口にしてはいけないとか……鬱陶しかったわね」
妊婦さんはある程度の運動が必要らしいけど、お父さんはきっと心配だったんだろうな。その時の状況が浮かんで笑ってしまう。
「愛花は早産だった。予定より一月近く早く産まれて、すぐに保育器に入ったのよ。すっごくちっちゃかったんだから」
そうだったんだ。愛花ちゃんも産まれた時は入院してたんだ。私と同じ。
「忙しい中、毎日毎日病院に足を運んで、ジッと愛花を見守ってた。保育器から出て、初めて抱いた時なんて号泣してたのよ、あのお父さんが。そして私に産んでくれてありがとう、愛花に産まれてきてくれてありがとう。苦しかっただろうに、頑張ってくれてありがとうって」
目頭が熱くなる。お母さんの目尻に涙が光り、ぎゅっと手を掴んだ。
「愛花はすぐに熱を出して、その度に病院に走ったわ。1年なってあっという間で、悠哉がお腹に授かってからまた慌ただしくなって。目が回るってあの事を言うんだと思う」
育児の大変さはわからないけど、小児科で看護士さんが困り果ててた様子は何度か見たことがあった。病院嫌いな子供の方が多いもんね。
「悠哉は丈夫だったけど、夜泣きとかが多かったから、必然的に愛花の面倒はお父さんが見るようになって、すっかりお父さんっ子になってたのよ」
「夜泣きしてたんですか悠哉くん」
「赤ん坊の時だろ。んな記憶ねーわ」
ああ、きっと赤ちゃんの頃の悠哉くんは可愛かったに違いない。見たかった。写真ないかな?
「悠哉くんの赤ちゃんの頃の写真ありますか?」
「あるわよ」
「おい、んなもん見てどうすんだよ」
「持ち歩きます!」
「やめろ!」
話はずれてしまったけど、愛花ちゃんが3歳になった頃に事件は起こった。
「公園の砂場で遊んでいた時、男の子が愛花の顔を玩具のスコップで殴ったのよ。お父さんが見てる前で」
「うっわ……」
この後の展開が予測出来たのであろう悠哉くんは顔を歪めた。
うん……なんとなく私にもわかるよ。
「顔に傷が出来た愛花を見て、般若の如く怒ったお父さんはそれはもう、ね」
「その男の子は今……」
「すぐに引っ越ししたわ」
おふ、子供にも容赦ないんですねお父さん。顔を見る限り傷痕は残っていない。その男の子が元気だといいな。
「それからというもの、ご近所で愛花は腫れ物を触るような扱いになってね。友達が出来なかったのよ」
「悠哉くんもですか?」
「悠哉は逆に近所のガキ大将になってたわ」
「……なんだその納得したような目は」
一ノ瀬先輩と一緒になって生暖かい目で悠哉くんを見た。
ガキ大将って事はやんちゃくんだったんだろうなきっと。ああ、絶対に可愛い。タイムマシンがあったら絶対に会いに行くのに!
そんな愛花ちゃんにますますお父さんは寂しくないように可愛がり、すっかり甘えん坊になった愛花ちゃんは、小学生になる頃にはお姫様気質になっていたらしい。
「そんな時に愛花が高熱で入院したの。すぐに退院出来たんだけど、お父さんは赤ちゃんの時と重ねたのね、きっと。仕事も休んで付きっきりで、退院してから余計に愛花に対する保護欲が強くなった」
送り迎えしたがるのも事故に合わないように。何かを手伝わせた時、過って怪我をしないように。少しづつ、エスカレートしていったんだって。
「反抗期だと思っていたのが、いつの間にか我が儘になっていって、咎めようにもお父さんが庇うものだから余計酷くなっていった」
「以前に私がお母さんを突き落としたっていうのは……」
「あれは今思えば、衝動的な物だったと思うわ。愛花もまさか私が落ちるなんて思わなかったのか、顔色が真っ青だったもの」
ホッとした。いくらなんでも実のお母さんを故意に突き落とすような真似はしないとわかって。
だけどその時から愛花ちゃんにどう接したらいいかわからなくなったらしい。
「愛花も私にあまり話し掛けないようになって、お父さんが海外勤務になってますます愛花は孤立してしまった。母親ならちゃんと向き合わなきゃならないのに、ごめんね愛花」
繋いだ手に力が入り頭を下げて謝られた。慌てて止めようとしたら、
「もっと愛花と話していればよかった。記憶喪失になって、素直で優しい子だった事に気付くなんて親失格だわ」
鼻をすすり手の甲で目を擦った後、少し赤くなった目が私を見つめる。
「お父さんは確かに過保護で頑固で人の気持ちなんてわからなくて、人の話は聞かないし自分の思いを力ずくで押し通して周りの人に迷惑を掛けまくる最低な人よ」
「………えぇぇ……」
「ボロくそだな」
あまりにも真剣な表情で言うから否定出来なかった。少し思い当たる所もあるけど、そうですねなんて言えない。
「でも貴方達2人に対する愛情は本当なの。本当に大好きなのよ。ちょっとだけ横にズレてしまったけど。そこだけは信じて」
「……はい」
「……まあ、うぜーとは思うけどな」
お菓子を食べるのを止め、ソファの背にもたれ掛かったまま天井を見つめる悠哉くん。悠哉くんにも何か思う所があるのか、それ以上口を挟まなかった。
「今の愛花の気持ちを誰よりもわかってくれるのはお父さんよ。今頃、自分のご両親と同じような事をしていた事に気付いて落ち込んでいると思うわ」
「私……お父さんと2人っきりで話してきます」
立ち上がり、お父さんの書斎に向かおうとした時、一ノ瀬先輩も立ち上がった。
「俺はそろそろ帰ります」
「ごめんなさいね、巻き込んでしまって」
「いえ……勇気貰えましたから。お話が聞けてよかったです」
どこか嬉しそうな笑顔を見せ、一ノ瀬先輩を見送る為に玄関へ。お母さんが車で送っていく事になり、車を動かしている間、一ノ瀬先輩が励ましてくれた。
「愛花。自分の思いを、これから先どうしたいのか伝えたら、きっとわかってくれる」
「はい、頑張ります」
「俺ももっと頑張らなきゃな」
一ノ瀬先輩が何を頑張るのかはわからない。だけどそれは、間宮先輩の事だと何となく思った。両想いのはずなのに、どうして2人が付き合えないのか気になってしまう。聞いてみたら教えてくれるだろうか。
一ノ瀬先輩が帰り、悠哉くんはお風呂に。そして私はお父さんの書斎へと向かった。
「お父さん、入ってもいいですか?」
ドアを数回ノックしたけど返事はなく、沈黙が続いた。根気よく何度も話し掛けると、ゆっくりドアが開く。
「……………」
悲壮。
その言葉がぴったりの、顔を青くさせ今にも泣いてしまいそうな、そんな悲しい顔をしたお父さんが立っていた。
「お父さん、お話があるんですが」
「……入りなさい」
「失礼しま……えっ」
部屋に通され最初に目に入ったのは自分の写真。それも大きいサイズの。その写真の隣には悠哉くんが。そして書斎の中で1番目を引く巨大パネルは、少し若い頃のお母さんが微笑んでいる。
……お母さんが大好きなんですねお父さん。
「そこに座りなさい」
1人用のソファに座り部屋の中を見回す。所々に飾られている写真に目が引かれてしまうものの、ベーシックな品の良さそうな書斎。観葉植物が置かれ、お香やランプなどもあって、お父さんの癒しの空間のようだ。
「話というのはさっきの事かい?」
「はい。えっと、その」
「愛花の思うようにしなさい。お父さんはもう口出ししないから」
「え……」
顔を上げれば、どこか虚ろなそれでいて疲れたような顔で。
「これからは愛花の好きなようにしていいんだよ」
疲れた顔で微笑む。また壁が生まれた。今度は拒絶と怯えのような、そんな壁が。
「もう、お父さんは私になにも言ってくれないんですか?」
このままじゃいけない。何故かはわからないけど、直感でそう思った。
「言わない方がいいだろ? まさか自分が父と同じ事をしていたなんてね。今まで窮屈だったろう。ごめんね愛花」
「窮屈なんてそんなっ」
「愛花を全ての害悪から守ろう。そう思っていたのに、僕がその害になっていた」
「害じゃないです!」
「いいんだ、わかっている。愛花の未来を僕が決めていい訳がない。愛花の未来は愛花のもので、僕が妨げになっていたんだ」
違うと何度も言っても、全然私の話を聞き入れてくれない。お母さんも言っていたけど、本当に人の話を聞かないんですね。
ドンドン深みにハマっていく落ち込みように、少しずつ苛立ちが増していく。
「お父さん失格だね。いない方が愛花の為なのかもしれない」
ぶち。
私の中のなにかが切れた。
「いい加減にして!」
ソファから立ち上がり頬を膨らませる。お父さんは目を白黒させ驚き、やっと私の顔を見てくれた。
「いなくなって欲しくなんかないです! 私はお父さんが大好きなんですから!」
「し、しかし……愛花のしたい事をさせずに、私が全て選んできた事をさせていた。……嫌われても仕方がない事をしていたんだ」
「確かにお手伝いとかさせて貰えないのは辛かったけど、それとこれとは別です。お父さんの優しさは伝わってますし、これからは私の意見も聞いてくださいね。私が本当に危ない事をしそうだったら止めて欲しいんです。お父さんのこと信頼してますから」
愛花ちゃんとして過ごした1ヶ月ちょっと。病院生活とは全然違う環境に、目を輝かせる毎日だった。ただ、私の行動に驚いたりする周りの人の反応を見ると、ちょっと常識が足りないのかなと思うこともしばしば。
私がやりたいと思っても、それが無茶で危険なことなら止めて欲しい。迷惑を掛けたりしたくないし、怪我でもしたら大変だ。
「信頼……僕を許してくれるのかい?」
「勿論です。親子喧嘩した後は仲直りです」
「………愛花っ!」
抱きつかれ、何度もごめんねとありがとうの繰り返し。徐々に腕の力が強まり息がっ。
その時ふと思い出した。
「あっ! 1つだけ!」
「愛花?」
声を上げたことに腕の力は弱まり向き合う。私のことはもういいんだけど、1つだけ譲れないことが残っていた。
「田中くんには謝ってください」
「えっ、田中って今日送って貰った?」
「そうです。その田中くんです」
善意で送ってくれた田中くんに、酷いことを言ったことを謝って欲しい。これだけは譲れません。
「……そうだね。彼には失礼な事をした。今度直接謝らなければならないね」
「はい! 今度お家に招待します」
「認める認めないは別として、釘を刺しておくべきか。それでも立ち向かってくる根性と想いがあるなら、鍛えるとしよう」
小さく呟く言葉が聞き取れなかったけど、田中くんに謝ってくれるそうなので、私は嬉しかった。大切な友達と家族が仲が悪いなんて悲しいですからね。
その後すぐにお母さんが帰ってきて、一緒に夕食作り。時間は8時過ぎ。すっかり遅くなってしまい、予め用意していたひき肉を焼くお手伝い。
焦げないように慎重に弱火で焼き、半生にならないよう蒸し焼き。お料理って楽しい。
私がお手伝いしている最中、心配そうにそわそわしながら見ているお父さん。曰く、「油がはねて火傷しないか心配」らしい。
心配性は変わらずで、この間お風呂掃除をさせて貰えなかったのは何故なのかと聞くと、
「お風呂場で誤って滑って転んだら危ないだろ? 怪我をするだけじゃなく、頭でも打ってしまったらと思うと……それなら僕が代わりに怪我をした方がいいからね」
楽をさせようとかじゃなかったんだ。心配してくれるのはありがたいけど、お手伝いは私の生き甲斐の1つなので引き下がれない。掃除は充分に気を付けるのでさせて貰えるようにお願いをすると、渋々許可をくれた。よし、やったよ私!
「できましたー! どうぞ召し上がれ!」
机に並べられた料理を目の前にして、お父さんの目に涙が光る。
「愛花の手料理が食べられるなんて、お父さんは幸せ者だね」
「はやく食おうぜ」
いつもなら学校から帰ってきたらお腹が空いたと言う悠哉くんが、出来上がるまで黙ってソファに座って待っててくれた。悠哉くん大好きです。
「……まあ、不味くはない」
1口食べた悠哉くんの感想。見た目は微妙だけど、食べてみたら美味しく出来ていたので嬉しかった。
「愛花はいいお嫁さんになるね……僕は複雑だよ。一ノ瀬君とはどうして別れてしまったんだい? あんなに好いていたのに」
「えっ、そうなの!?」
お父さんがそのことを知っているのにビックリした。言ったことあったかな? 興味なさげで食べ続ける悠哉くんとは違って、興味深そうに驚くお母さん。やはり恋話は女の子は好きなものですよね。
「一ノ瀬先輩は間宮先輩が好きなんです。想い合ってる人同士が恋人になるのがいいと思ったので、先輩とお別れしました」
「……そうだったのか」
「なら田中君の事はどう思ってるの?」
「田中くん?」
何故そこで田中くんの名前が出るんだろう?
不思議に思い首を傾げつつも、素直に思ったことを言う。
「大切なお友達です」
「……不憫ね」
「不憫だな田中さん」
「さすがにお父さんも同情してしまうよ愛花」
哀れみのような表情で言われ困惑する。どうしてそんな顔をするんだろう?
「それしても美味しいよ、この肉団子」
「……ハンバーグです」
その夜、喉が渇いて目が覚めてしまい、リビングへと向かうと明かりが付いてた。お母さんが起きているのかとなと思い、ドアノブに手をかけ少しドアを開けたら、中からお父さんの声が。
「いつの間にか大きくなっていたよ」
「子供は成長するものよ。その事に気付いてくれてよかったと思うわ」
沈んだ声に入りにくくなり、隙間から覗き込むとお父さん達がソファに寄り添って座っていた。
「愛花や悠哉には申し訳なくて堪らないよ。まさか同じ道を歩いていたなんてね」
「これから一緒に頑張ればいいじゃない。私も逃げずにあの子達と向き合っていくつもりよ」
「夏海さん……ありがとう。親離れしていくのは寂しいものだ」
「ふふ、本当ね」
そっと音を立てないようドアを閉め、自分の部屋へ戻った。あの寂しそうな後ろ姿が頭から消えず、お父さん達に悲しい思いをさせないよう、頑張ろうと布団の中で誓った。
「……もう1人作らないか? 僕達の子供を」
「ええぇっ!?」
お父さんと和解し、なんとか話を纏められました。お父さんとお母さんの馴れ初めなんかも、いつかか書いてみたいなと思います。
シリアス展開はどうしても執筆が遅くなってしまい、申し訳ありません。
次回からは空気が一転。ジャンル通り恋愛話です。ラブコメです、なんちゃってラブコメです。
すっかり出てこなくなってしまったあの人がメインです。




