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 間宮先輩に連れて来られたのは、アイスの種類が豊富なお店。見た目が美味しそうな物もあれば、グロテスクな色をしたアイスもあって、何を食べようか迷う。アイスの名前が変わっていて、なんの味かよくわからない。店員さんに聞いては悩むの繰り返し。


「うーん、うーん。よし【常夏ハワイアン】の上に【友情は不滅】と【夢は無限大】でお願いします!」

「……常夏は兎も角、後の2つはなんの味かさっぱりわからんな」

「カップとコーン、どちらに致しますか?」

「コーンでお願いします」


 折角の3段重ね。コーンで食べなきゃ損だもん。


「お待たせ致しました。【常夏ハワイアン、友情は不滅、夢は無限大】でございます」


 渡されたのは上からピンクのアイスにキラキラと輝く多彩なトッピング。【夢は無限大】その名の通り、夢は無限に輝いているという表現を表しているのかも。

 真ん中のアイスは【友情は不滅】。真っ赤なアイスにラムネが入っている。友情とは炎のように熱いというイメージかな?

 1番下の【常夏のハワイアン】は黒と青のアイスがマーブル状にになっていて、


「とっても美味しそうです」

「いや、おかしいでしょ!? 青ならわかるけど、なんで常夏ハワイアンに黒色が入るのさ」

「常夏からかけ放れた色合いだな」

「しかも爽やかな青色じゃなくて紺色に近いっていう……」


 全体的に見たらかなり派手な色合いだけど、憧れの3段重ねのアイスの前に喜びが抑えられない。


「見てください田中くん! 3段アイスです」

「あ、篠塚さん走ると危なっ」

「「あ」」


 田中くんの所に駆け寄ろうとした時、不安定な1番上のアイスがべちゃっと音を立てて落ちた。それはもう無惨な姿に。

 ああ、私の夢が……


「……………………」

「し、篠塚さん。俺のアイス食べる?」

「絶望とはまさにこの事だと示している顔だな。篠塚、落ち込むな。もう1つ買ってくるか?」


 落ちたアイスを見ながら首を左右に振る。

 だってこのアイスは、間宮先輩が体育祭で頑張ったご褒美で奢ってくれた物だもん。そのアイスを落としてしまうなんて……


「サイテー」


 グサッと西嶋さんの言葉が胸に刺さる。


「間宮先輩が奢ってくれたアイスを落とすなんて信じらんない。間宮先輩の気持ちを踏みにじったようなものじゃない」

「鈴音! 愛花、気にする事ないからね。落ちたならまた買いに行こう。転ばなくてよかったじゃん」

「間宮……先輩」


 慰めるように頭を撫でて微笑んでくれる。奢ってくれたアイスを落としたのに、怒りもせずに許してくれるなんて。


「はい、あーん」

「?」


 意味がわからず言われるままに口を開けると、スプーンですくったアイスの味が口の中に広がる。爽やかなチョコミントの味。


「美味しい? 私チョコミント好きなんだよね」

「美味しいです。スーってします」


 少しだけ元気を取り戻した私に、ホッとしたような笑みを浮かべる田中くん達。そこに一ノ瀬先輩が落ちたアイスと同じアイスをカップに入れて買ってきてくれた。


「これは俺からのご褒美だ。体育祭では頑張ってくれたからな」

「一ノ瀬先輩……」


 うう……先輩達の優しさが身に染みる。落としたアイスを片付け、皆とベンチに座って食べた。


「アイスじゃ腹の足しにならんな」

「うわ、なんかすごい独特な味がする」

「相変わらず桜子の味覚センスは飛び抜けてるよね」

「え、美味しいじゃん。何事もインパクトは大事でしょ」


 2段重ねのアイスを食べ終え、一ノ瀬先輩から貰ったカップのアイスを食べようとした時、さっきからずっと黙ったままだった西嶋さんが立ち上がった。


「なんで……なんで皆この女に優しくするのよ! 前まで疎ましく思ってたじゃない!」


 唇を噛み締め、私を睨むの瞳には涙が浮かぶ。その瞳は怒りの感情だけじゃなく、どこか悲しそうな苦しそうな感情が感じられて戸惑う。


「いつも間宮先輩に偉そうな事言って、一ノ瀬先輩に迷惑がられて最低な女なのよそいつは!」

「いい加減にしろ。愛花に以前の記憶はない。その事で愛花が不自由に感じている事を何度も話しただろう」

「そんなの嘘だもん!」


 一ノ瀬先輩の叱りをはね除け、止めようとする間宮先輩を押し退けて私の前に立つ。


「あの時私見てたんだから! 間宮先輩があんたに泣かせられてるのを!」

「え!?」


 一斉に視線が間宮先輩に集まり、間宮先輩は気まずそうに視線を外す。

 あの時っていつの話なんだろう? 愛花ちゃんは間宮先輩が泣いてしまうぐらい酷い事を言ったのかな。


「それは本当? 鈴音ちゃん」

「本当です。間宮先輩と何か話してその女が立ち去った後、間宮先輩は崩れるように泣いて座り込んだんだから」

「ちが、鈴音っ……そうじゃない」


 榊先輩の表情がみるみる険しくなり、腕を掴んで西嶋さんを止めようとする間宮先輩に、一ノ瀬先輩は場を落ち着かせるように間に入った。


「落ち着け西嶋。それはいつの話だ」

「……4月の終わり。GWに入る前です」

「本当なのか桜子」

「………それは」


 GW前。それは愛花ちゃんが自殺するほんの数日前の話。もしかしたら、もしかしたら自殺の原因に関わる事なんじゃ……

 心臓が嫌な音を立てて早くなる。状況がわからない今、生唾を呑み、ただ黙って見ているしか出来なかった。


「桜子、黙ってないで教えて。なんで泣いてたんだよ。愛花ちゃんになに言われた」

「違う、違うの。愛花はなにも悪くない」

「それじゃわからないだろ!」

「いたっ」


 西嶋さんを掴んでいた手首を掴み、強引に引っ張る。よろめく間宮先輩を支えたのは一ノ瀬先輩。


「やめろ啓介」

「……ちっ。どういう事か説明してよ桜子」


 いつも温厚な一ノ瀬先輩が冷たい眼差しで睨む。

 怖い。この空気もだけど、あの一ノ瀬先輩が本気で怒っているのが。それだけ間宮先輩が大切なんだ。ズキリと痛む心臓。これは私の気持ちなのか、愛花ちゃんの気持ちなのかわからない。


「桜子」

「……ごめん、言えない。これは私と愛花の二人の問題だから」


 顔色が悪く今にも倒れそうだ。そんな間宮先輩にこれ以上追求する事は出来なくて、苦虫を潰したかのように顔を歪めた榊先輩が私を見る。

 思わず榊先輩の視線から逃れるように下を向いてしまった。気まずい。


「だからその女が記憶喪失なんて嘘! 間宮先輩を傷付けて皆に責められるのが怖かったから記憶喪失なんて嘘をついてるのよ。じゃなきゃ、都合が良すぎるじゃないの!」


 あ。もしかしてそれが、それが理由? 皆に責められるのが怖くて自殺してしまったの?

 ……ううん、違う気がする。御子柴くんから聞いた愛花ちゃんの性格なら逃げたりしない。真正面から立ち向かう強さがあったと思う。でも、愛花ちゃんが自殺する数日前の話だというなら関係はあるのかもしれない。

 足りない。まだ決定的な何かが足りない。


「愛花ちゃんの記憶喪失が嘘……いやいや、ないでしょ流石に」

「あれが演技というなら、篠塚は将来すごい女優になりそうだな」

「面影がまるでないからな」


 又もや一斉に見つめられ首を左右に振る。そんなに違うのかな、私と愛花ちゃん。


「あのさ、篠塚さんに聞きたい事があるんだけど」

「なんでしょう?」

「篠塚さんはいつ、記憶喪失になったの?」

「え……」


 少しだけ軽くなった雰囲気の中、真剣な表情の田中くんが予想もしていなかった事を聞いてきた。


「記憶喪失って、頭に強い衝撃を受けたりしなきゃならないものだよね? 誰かに……殴られたんじゃないの?」

「そうなのか!?」


 慌てたように御子柴くんが立ち上がり頭を撫でる。こぶでも探してるのかな?


「殴られたりしてません。朝起きたら記憶がなくなっていたんです」

「朝、起きたら?」

「はい。ですからどこも怪我はしてませんよ」


 安心して下さいという意味を込めて笑顔を向けると、御子柴くんはホッとしたような顔をしたけど、逆に田中くんと一ノ瀬先輩の顔が険しくなった。どうして。


「朝起きたら記憶喪失って、ありえるんですか?」

「普通に考えるとありえないな」


 田中くんと一ノ瀬先輩がお互いの顔を見合わせて頷き、再び私を見る。もしかして、墓穴掘ったんじゃ……

 考えてみたら確かに朝起きて記憶喪失になってました……なんておかしいよね? そもそも記憶喪失ってどうやったらなるの? こんな事なら階段から落ちましたとでも言えばよかった。あ、でも記憶がないのに覚えてたらおかしいし、頭に傷はないし、お母さんに聞かれたら嘘だとバレてしまう。なにか、なにか上手い言い訳は……頑張れ私の頭!


「篠塚さん。本当の事を教えて」

「篠塚」

「愛花」

「あ、いえ、本当に、朝起きたら記憶が……」


 必死に頭を働かせても上手い言い訳は浮かばず、追い詰められていくうちに泣きたくなってきた。本当の事なんか絶対に言えない。此処は押し通すしかない。


「私、本当に」

「記憶喪失ってさ、頭に衝撃を受ける他にも、別の理由でなる事があるんだよね」


 私の言葉を遮るように、榊先輩の呟きのような言葉が響いた。


「別の理由? どういう事だ」


 私から少し離れた所にいる間宮先輩の隣に立ち、さっきまで殺気に似た怒りの感情はなく、眉を潜め何か考えている。


「心理的、極度のストレスによって記憶をなくす。自分を守る為に事故防衛として、辛い記憶を忘れてしまうんだ」

「ストレス……それは愛花が記憶をなくすぐらい辛い思いをしたという事か?」

「そんな、篠塚さん……」


 あれ。なんか雲行きがおかしい。間違ってはいないはず。辛い思いをしたから愛花ちゃんは自殺をしてしまったんであって、間違ってはいないはず。だけどなんだろう。この空気、ものすごく危ない気がする。

 疑惑の視線から、今は哀れみの視線に変わっていて居たたまれない。


「心の耐性が低いとなるらしいよ。ただ、そのストレスが深い所までいくと、記憶喪失じゃなくて解離性障害になるみたいだね」

「解離?」

「解離性障害。ようは、二重人格」

「二重人格!?」


 え、ちょ、ええぇぇぇっ!? なんか話が大きくなってるぅぅ!


「違います! 私二重人格じゃありません」

「普通は皆そう言うよね。だって二重人格はわからないものだから」


 違うんだって! なんでそういう話になってしまうの? 本当の事が言えないのが辛い。

 このままじゃ、また病院に連れて行かれてしまう。それだけは阻止しなきゃ。


「病院で診察して貰いましたが、ただの記憶喪失だって言われました」

「ちゃんと専門家に見て貰った? カウンセラーは?」

「うぐ……だって、だって違うもん。私は、私だから」


 反論も出来なければ本当の事も言えない。悔しさで涙ぐむ私に、優しく頭を撫でてくれる御子柴くん。


「そこまでだ。俺達は専門家でもないし、篠塚も記憶がなくて不安なのは間違いない。これ以上追い込むな。大丈夫だ篠塚、もう泣くな」


 あやすように頭をポンポンされ、なんだか心が暖かくなってきた。安心させようと微笑んでいる御子柴くんの笑顔が暖かくて……


「ありがとう御子柴くん」

「……………」


 んん? 表情が固まった。何故?


「確かに、これ以上愛花に追求するのはよくない。無理に思い出そうとするのは体に負担を掛けると聞くからな。悪かったな、愛花」

「ごめんね。俺が聞いたりしたから」

「愛花、頭痛くなったりしてない?」


 額に手を宛てて心配してくれる間宮先輩。愛花ちゃんとの間になにがあったのか気になる。二人の問題だって言ってたけど、私に教えてくれるかな?


「なんでよ!」


 悲鳴に近い叫び。西嶋さんが涙を溢し泣いていた。一人ポツンと立っていて、とても寂しそうで、駆け寄ろうとしたけど西嶋さんに睨まれ動けなかった。


「記憶喪失なんて簡単にならない。その女がストレスを感じたりする訳ないじゃない。そうよ、そうやって同情して欲しくて嘘をっ」

「鈴音!」


 渇いた音が響いた。

 間宮先輩が西嶋さんの頬を叩いたんだ。目を見開いて驚き、叩かれた頬を押さえまた涙が溢れる。


「な、なんで、間宮、先輩。私は、先輩の為にっ」

「いい加減にして鈴音。どうして今の愛花を見ようとしないの? 確かに前の愛花はやり過ぎたりした事もあった。けど今の愛花はなにもしてないでしょ? 鈴音に酷い事を言われても、一度でも言い返したりした? してないよね。今の愛花は思いやりのある優しい子だから。誰かを故意に傷付けたりしない」

「…………」

「いつも私の為にって、頑張ろうとしてくれるのは嬉しい。でも今は違う。今の鈴音は、自分の思い通りにならなくて癇癪を起こしてるだけだよ」

 どうしてだろう。叩いた間宮先輩の方が悲しそうな感じがする。私からは背中しか見えないけど、きっと泣いてると思う。

 人通りの多いショッピングモール。行き交う人が私達を見ては去っていく。

 俯いたままだった西嶋さんは急に顔を上げ、間宮先輩の肩越しに私を睨み、


「みんなあんたのせいよ!」

「鈴音!」


 泣き叫び、西嶋さんはこの場から走り去っていった。


「和樹、後はお願い。私は鈴音を追い掛けるから。愛花、気にしないでいいからね」

「あの、間宮先輩!」


 食べ掛けのアイスのカップを一ノ瀬先輩に渡し、西嶋さんの後を追おうとした間宮先輩を呼び止める。


「……今度ゆっくり話そう。さっきの事も、今までの事も全部」

「……はい」


 少しだけ切なげに微笑んで、間宮先輩は西嶋さんが行った方向に走って追い掛けて行った。


「で、どうすんのこの後」

「アイスを食べたら帰るか」

「だよねー。なんかシラけちゃったし」


 楽しいはずのアイスの日が、どうにも痼が残る形になってしまった。

 いつか、西嶋さんともわかり合える日が来るのかな。来るといいな。溶けかけのアイスみたいに、西嶋さんとの氷った距離が溶けていけばいい。


「そういえば、篠塚はいつ記憶喪失になったんだ?」

「えーと、GWが終わる前日でした」

「前日?」


 一ノ瀬先輩の眉間の皺が深くなった。困惑しているような、驚いているような。

 首を傾げる私に気付いたのか、なんでもないと言っているけど、口元に手を宛て悩みだした。どう見てもなんでもなくない。


「……間に入れず、傍観してるしかなかったです」

「あ、いたの新」

「せーんーぱーい。どうせ驚いてなにも出来ませんでしたよ」

「拗ねない拗ねない。ま、ちょっと今の間に入るのは勇気いるよねー」


 千葉くんの頭をわしゃわしゃ撫で回しからかうような笑顔。千葉くんを中心に、御子柴くんや田中くんも堅かった表情が柔らかくなっていく。

 よかった、千葉くんがいてくれて。

 笑いつつも、未だに難しげにしている一ノ瀬先輩が気になるも、なにも聞かずにその日はお開きとなった。

 因みに、同じ店で悠哉くんへのお土産のアイスを買って帰り渡すと、早速食べてくれた。


「にがっ」







 翌日、教室での田中くんは昨日の事は触れずにいつも通り接してくれた。鞄を机の上に置き座った所に、前の席の山本さんが振り返り、


「今日はテスト結果がわかる日だよねー。あー、胃が痛い」


 そうだ。今日は先週行われたテストの結果がわかる日だった。


「楽しみですね」

「胃が痛いって。テスト結果が楽しみなんて、篠塚さんぐらいじゃない?」

「でもさ、篠塚のおかげで今回良い点取ってると思うから、楽しみって言えば楽しみだな」


 そんな話をしているうちにチャイムが鳴り、須藤先生が入ってきた。


「先週やったテスト結果が出た。名前を呼ばれたら前に取りに来い」


 次々に呼ばれ、渡される紙に喜んだり落ち込んだりと様子は様々。

 うん、なんか緊張する。ドキドキしてきた。


「……篠塚」

「はい!」


 手を上げて返事をしてそわそわしながら教壇に行くと、須藤先生が顰めっ面になって首を傾げる。

 無言で渡された紙を歩きながら眺めていくうちに、にやにやとしてしまう。


「篠塚。お前のおかげで前回より30番以上上がった。マジでありがとな!」

「私も! 篠塚さんが教えてくれたおかげで目茶苦茶順位が上がったよぉ」

「本当ですか? 私も嬉しいです」


 お役に立てた。皆勉強会で頑張ってたもんね。努力あっての結果。これぞ学生の醍醐味だよ。


「篠塚さんは何位だったの? 篠塚さんだったら結構前の方だったんじゃない?」

「私は2番でした」

「え……」


 1番になれなかったのは残念だったけど、初めて受けたテストは楽しかったし、今度は1番を目指して頑張ろう。

 そう意気込んでいた私を、信じられない物でも見るような驚いた目で皆が見る。


「ちょっと待って。1位は当然A組の神代でしょ? で、2番が篠塚さん。て事はB組のガリ勉を抜いたって事? 嘘でしょ!?」

「マジかよ!? 篠塚、それちょっと見せてくんねぇ?」

「いいですよ」


 テスト結果の紙を渡すと、皆が集まって凝視する。なにをそんなに驚いてるんだろう?


「……信じらんねぇ。100点とかあるぞ」

「他も全部90点台。うはー、確かに頭良いと思ってたけど此処までなんて」

「B組のガリ勉って、確か全国模試の上位常連でしょ? ヤバくない?」


 なんか私が2番になったのはダメだったのかな? 皆信じられないと言ってはチラチラと見てきて居心地が悪い。


「すごいね篠塚さん。授業中も真面目に真剣に取り組んでたし、勉強会も頑張ってたから努力の成果が出たんだよ。おめでとう」

「田中くん……ありがとうございます!」


 褒めてくれた。自分が頑張った事を褒めて貰えるのって、とっても嬉しい。もっともっと頑張ろうって思っちゃう。


「次は1位を目指します!」

「えー、それは無理でしょ。なんたって神代がいるからね」

「神代?」


 さっきも出てきた名前。有名な人なのかな?


「A組の神代浩平。一年の頃からずっとトップの特待生だよ。目茶苦茶頭良いんだから」

「付いた呼び名が【オールの神】。テストでオール満点取った事があったからな。すげー頭良いよ彼奴」

「へー、すごい人なんですね」

「……俺からしたら篠塚も充分すげーからな。100点なんて見たこともねーわ」


 やっぱり学校には色んな人がいるんだなー。その神代くんという人にも会ってみたい。目指すは1位なんだから、神代くんはライバルだよね。

 ふふふ、ライバル。いい響き。期末試験の前に宣戦布告みたいなのをした方がいいのかな? うー、なんか青春っぽい。


「篠塚」


 テスト結果で盛り上がっていた中、須藤先生に呼ばれ教壇に行く。


「放課後少し残ってくれ」


 周りには聞かれないよう小声で言われ、不思議に思いつつも頷いた。


「お手伝いですか?」

「……待っていればわかる」


 内容は教えてくれなかったけど、先生のお手伝いなら頑張らなくちゃ。



 言われた通り、放課後大人しく教室で待っていると須藤先生が迎えに来て、使われてない教室に連れて行かれた。そしてその教室には、見知った先生もいれば見たことがない先生もいて、須藤先生を含めて5人の先生が。


「あの、いったいこれは……?」

「篠塚」


 低い声と突き刺さる視線。それは以前、須藤先生が愛花ちゃんによって未来が壊されたと言ったあの時と同じ。蔑むような氷の目だった。


「篠塚。お前にはカンニングの疑いが掛かっている」





投稿が遅くなってしまい、本当に申し訳ありません。漸く書けるようになりました。



次回は10月3日予定です

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[気になる点] 余字:に 1番下の【常夏のハワイアン】は黒と青のアイスがマーブル状にになっていて、 余字:の 唇を噛み締め、私を睨むの瞳には涙が浮かぶ。
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