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プロローグ
静寂な深夜。とある大学病院の一室で、一人の少女の命の灯火が消えようとしていた。
少女は呼吸器を付けたまま息苦しそうに、自分の意識が遠退いていく中で感じていた。もう、終わりなのだと――
少女は産まれた時から心臓が弱く、十歳まで生きられないと医者から言われていた。幸い少女の家は裕福であり、少しでも生き長らえるようにと入院生活をさせ、何とか17歳の誕生日を迎えるまで生きることが出来た。
しかし、とうとう少女の心臓は動きを止める。ゆっくりと意識を無くしていく少女は、両親と担当医や看護士に感謝の気持ちを思う。ありがとう、ありがとうと。
病院生活の一生だったが、産まれてきて後悔はない。何度も手術を繰り返し、最後は起き上がる事も出来なくなったボロボロの体。それでも少女は思う。
「……もっと……生きたい」
少女の願いは届かず、少女の意識は深い闇へと落ちていった。