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大神林にて 兄弟ケンカと変な展開

 兄さんと姉さんと兄弟ゲンカをするために、前に三体と戦った広場に着いた。そこまで派手なケンカにはならないと思うけど、大神林(だいしんりん)の植物への被害を抑えて戦える場所って言ったらこの広場しか思いつかなかった。


 広場の真ん中で僕と二人が向かいあって立ち、その間に父さんが立っていて母さんは広場の端で僕達を見てる。


「お互いに悔いを残さないようにな。ただ危なくなったら止めるぞ。良いな?」

「おう!!」

「わかってるわ」

「うん」


 父さんは僕達の返事を聞くと、うなずいて母さんのところに行った。そして父さんが母さんの隣に着いたら、兄さんが姉さんを見た後に一歩前へ出る。


「まずは、兄さんとって事?」

「そういう事だ!!」

「それじゃあ、これが開始の合図よ」


 姉さんが足元にあった何かの欠片を手に取って、僕と兄さんに見せたら親指で上に弾く。そして姉さんが少し離れた時に、地面に落ちてカサッていう小さい音が鳴った。


「おらあ!!!」


 兄さんが一瞬で僕との距離を無くして殴りかかってくる。うん、赤のクトーとは比べ物にならないな……って、感心してる場合じゃなかった。


緑盛魔法(グリーンカーペット)超育成(ハイグロウ)樹根触腕(ルートハンド)


 僕の足もとから樹の根を何本も生やし兄さんをからめとろうとしたけど、兄さんは僕を殴るのを止めて根を迎撃しパパパパパパンと軽い音を連続でたてて根を砕いていく。それを見て僕は強化魔法(パワーダ)を発動させ、逆に兄さんの懐に入り込んで殴りかかる。


 まずは兄さんの腹を右拳で狙ったけどパシッと叩かれそらされる。次に顎を左で狙うけど同じように叩かれそらされる。その後も僕の打撃は、兄さんのどこを狙っても叩かれ当てる事ができなかった。


 …………兄さんが根を砕きながらでも僕の攻撃に反応してくるだろうなとは思ってたけど、強化魔法(パワーダ)を発動させてここまで当てれないとは思わなかった。それに兄さんは僕の動きを見逃さないように警戒してて油断の欠片もない。やっぱり赤のクトーとは違うな。……それならこうしよう。


緑盛魔法(グリーンカーペット)超育成(ハイグロウ)樹根触腕(ルートハンド)


 今度は僕と兄さんの周りを埋め尽くすように生える根の本数を一気に増やした。兄さんは驚いた顔したものの、すぐに少し根の密度が低い見つけてそこの根を砕きながら跳んで僕から離れる。兄さんならそうするだろうって思ってたよ。僕は大量の根に包まれながら次の魔法を発動させた。


緑盛魔法(グリーンカーペット)樹根魔装(ルートアーマー)


 僕を包んでいた根が緑色に光りビキビキと音を立てて変形し三体と戦った時の鎧になる。僕は身体を動かして鎧の具合を確かめた後、さっきと同じように兄さんの懐に跳び込む。ただし今回は素の兄さんが反応できない速さでだ。


「うおっ!!」


 反応できてない兄さんは僕に強く押されて、離れて見ていた姉さんの方に飛んでいく。そして兄さんは姉さんの近くで止まると立ち上がって僕をにらんできた。


「……ヤート、どういうつもりだ? 今のは俺に打ち込む良いチャンスだったよね?」

「兄さんへのお返しだよ」

「何の事だ?」

「さっき兄さんも僕の打撃を叩くだけで、反撃はしてこなかったでしょ。だから、そのお返し。それに……」

「それに?」

強化魔法(パワーダ)を発動させてない兄さんに勝ててもうれしくない」

「…………」


 兄さんが黙っていると姉さんが兄さんに話しかける。


「ガル、調子が悪いなら代わってほしいわ」

「変わるわけねえだろ。強化魔法(パワーダ)


 兄さんが強化魔法(パワーダ)を発動させて身体に魔力で覆っていく。赤のクトーが二回目に発動させた強化魔法(パワーダ)よりも、数段上の安定具合で力強さは本当に赤のクトーとは比べ物にならない。あと兄さんの魔光は見ててきれいだね。僕がじっと見ていると兄さんが話しかけてくる。


「ヤート、どうした? 俺の強化魔法(パワーダ)見てビビったか?」

「そんな事ないよ。ただ兄さんの魔光はきれいだなって思ってただけ」

「……お前な、それは戦ってる時に考える事か?」

「そういえばそうだね」

「はあ……、なんかお前と戦うのは調子が狂う。…………仕切り直しだ」

「わかった」


 僕と兄さんは魔法をそのままにして開始位置まで戻って構えた。そして何かがコツンと小さな音を鳴らしたら、また兄さんがさっきの倍以上の速さで殴りかかってくる。強化魔法(パワーダ)発動させただけの僕だったら絶対に反応できなかったけど、今の僕の状態ならきちんと兄さんの打撃を避ける事ができる。


 でも僕の強化魔法(パワーダ)樹根魔装(ルートアーマー)の二重の強化が、兄さんの強化魔法(パワーダ)一つの強化と同じくらいなんだから、やっぱり僕の身体は弱いな。あと強化魔法(パワーダ)樹根魔装(ルートアーマー)っていう持続型の魔法の二重発動は、さすがに僕の魔力量じゃキツイ。


「やるじゃねえか。ヤート」

「いろいろ考えてるって言ったはずだよ」


 兄さんの打撃を避けて反撃しながら答えたら、兄さんがそういえばそうだったみたいな顔をした。絶対に忘れてたよね? そうしてしばらく戦っていたら突然僕も兄さんも弾き飛ばされた。


「うわ!!」

「なんだ!!」


 何が起こったのかわからなくて兄さんと戦っていた場所を見たら、そこには姉さんが立っていた。うん僕と兄さんが弾き飛ばしたのは確実に姉さんだね。しかも姉さんが片足で立ってるって事は姉さんに蹴られたのかな? 


「姉さん?」

「ヤート、そろそろ私の相手もしてね。強化魔法(パワーダ)


 姉さんも強化魔法(パワーダ)を発動させた。兄さんの強化魔法(パワーダ)は安定して力強い鎧みたいな感じで姉さんのは動きやすくて無駄のない戦闘服みたいな感じだ。リンリーや他のみんなの強化魔法(パワーダ)はどんな感じなのか気になるけど、それよりも……。


「ガル、変わってもらうわよ」

「マイネ、てめえ……」

「始めは譲ってあげたんだから、そろそろ良いでしょ?」

「ふざけんな。邪魔だ」

「「…………」」


 なんで……、なんで兄さんと姉さんがにらみ合ってるの? 僕が兄さんと姉さんに戦える事を見せるものじゃなかったの?

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


感想・評価・レビューなどもお待ちしています。

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