大神林の奥にて 僕の感情と植物の力
三体にも手伝ってもらい樹々は元に戻せた。まったく魔石が無駄になぎ倒さなきゃ、こんな手間もなかったのに、どこまでも迷惑すぎる。次は魔石に栄養を奪われてた植物達の状態の確認か。強薬水液を使って回復させたけど、長い間栄養が奪われてた植物達がそう簡単に正常な状態に戻るわけがない。しかも急激に治すのも植物達には負担になるはずだから、じっくりと改善する必要がある。僕はどうするか考えながら魔石が元々いた広場に三体といっしょ戻った。
「魔石ガイタ広場ノ周リノ植物達ハ大丈夫デショウカ?」
「詳しく今の状態を調べてみないとわからないとしか言えないかな」
「ソウデスカ……」
「まあ、魔石がいなくなった時点で今以上に栄養状態が悪くなる事はないから、立ち枯れるとかの最悪な事にはならないはずだよ」
「ガ」
「何?」
「ガ、ガア」
鬼熊が動物について聞いてくる。
「うん、動物も増えてくると思う」
「ガア……」
「極端に暴食する奴がいなくなれば自然と増えてくるよ。……本当に魔石って何だったんだろう」
「ブオブオ」
「確カニ広場ノ周リノ植物達ニ聞ケバ、魔石ノ事ガ何カワカルカモシレマセン」
「何かわかるとうれしいね」
魔石が元々いた広場に戻ると、魔石の身体だった倒木が無くなっていた。しっかりと緑喰が食べきったようで、その証拠に緑喰がちょっと成長していて機嫌良さそうだ。ただ気になるのは……。
「「ゲッゲゲッゲゲッゲゲッゲッゲッゲッゲーー」」
何で緑喰が二体いるの? 二体の緑喰が葉と根を使って器用に踊りながらクルクルと小さな円を描いている。もう一体はどこから来たんだ? とりあえず呼んでみよう。あと擬態花はどこかに行ったのかな?
「おーい」
「「ゲッゲッゲーー」」
僕の足下に来ると二体の緑喰が声を出しながら交互にピョンピョン跳ねる。すごく楽しそうだ。……なるほど片方は擬態花が緑喰に化けてるのか。僕が同調で調べている間もピョンピョン楽しそうに跳ねてるけど、これはどうしようかな……。
「緑喰も擬態花も楽しそうだね」
「「ゲッゲッゲーー」」
「お前達が良ければこのまま別れる? 僕としては正直なところお前達は頼りになるから、これからもいっしょに来てもらえるとうれしいんだけど」
「ゲ?」
「ゲ?」
「ゲ」
「ゲ」
「ゲゲ!!」
「ゲゲ!!」
「「ゲッゲッゲーー」」
緑喰と擬態花は相談した後、僕の周りをピョンピョン跳ねだした。いっしょに来てくれるみたいだ。
「ありがとう。これからも頼りにしてるよ。よろしく」
いっしょに来てくれるお礼を言って緑喰と擬態花それぞれに手を差し出すと、握手代わりにガジガジ甘噛みして種に戻っていく。僕は緑喰と擬態花の種を握って、もう一度ありがとうって念を送った後に腰の袋に入れた。こうして思うのは植物でも感情は豊かなものだね。……………あれ? もしかして僕って感情豊かな植物より無感情?
「ガア?」
「ブオ?」
「ドウカシマシタカ?」
「あ、うん、ちょっと気づいた事があっただけだから気にしないで」
なかなか衝撃的な事に気づいて黙り込んだ僕に、三体が心配して声をかけてきたから誤魔化した。とりあえず今の僕の感情の事は置いておこう。赤の村長のグレアソンさんも、その内自然に感情は出てくるものだって言ってたしね。気を取り直して弱った植物達の状態を確認していく。あとはそうだな。
「ディグリ、植物達に栄養不足以外で目立つ症状が無いかをわかる範囲で確かめて」
「ワカリマシタ」
「鬼熊と破壊猪は、一応見回りと警戒をお願い」
「ガア」
「ブオ」
僕達はそれぞれの作業に入った。…………樹々を調べたけど、やっぱり栄養不足だけだ。虫に食われてるとか樹の中に空洞ができてるとかもないから良かった。僕が胸をなでおろしていると三体が戻ってきた。
「お帰り。何かあった?」
「ガ」
「ブ」
「周りに異常なしと。ディグリはどうだった?」
「一通リ確認シマシタガ、特ニ問題ハアリマセンデシタ」
「そうか、僕の方も栄養不足以外は特に問題は見つからなかった」
「良カッタデス。ソレデハ植物達ヲ、ヨロシクオ願イシマス」
「うん、きっちりやるよ」
まずは植物達を健全な状態にするために、土中の栄養を増やす事いわゆる追肥をする事に決めた。だけどさすがに僕一人だと難しいから別の植物の力に頼る事にする。そのための準備として種を埋める場所を決めてそこの近くを掘り返す。そして掘り返した土に強薬水液を加えて良い感じによく混ぜ、その土を掘り返して出来た穴に全部戻し表面をならす。準備が出来たから特別な種を入れている青色の腰の小袋から出した種を広場の真ん中くらいに埋めて魔法を発動させる。
「緑盛魔法・超育成・豊穣木」
この豊穣木は見た目は普通の樹なんだけど本当に不思議で、散歩中に偶然触って特性を同調で調べたらある程度まで成長すると自分が根付いている土地を豊かにする性質があるっていうのを知った時は驚いた。詳しく調べたら空気中の魔力を吸収して栄養に変えて根から土中に放出していて、しかも栄養が有り過ぎないように調整もするという何とも器用で優しい奴だった。……よし、上手く根付いてくれた。
「周りの植物達をお願い」
僕が豊穣木にお願いすると豊穣木から、ニコッと優しく笑ったような感じが伝わってきた。これであとは時間さえあれば大神林の他の場所にも負けない雄大な自然の森の風景が戻ってくる。
本当にこの世界の植物は色々な奴がある。もっと身体が丈夫になったら珍しい植物を探して旅をするのもありかもしれない。まあ、まずは身近な大神林を全部見て回ってからだけどね。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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