決着後にて 再構成と威圧感
広場は楕円形で一面を下草に覆われていて、下草以外にも広場の真ん中に実をつけた果樹があり、それ以外の場ところには紫色の花の固まり・前世で言う竹っぽい奴・棘だらけの藪なんかの色々な植物があった。そして鬼熊と破壊猪は広場の真ん中から少しはずれたところに巨体を横たえている。とりあえずこのまま見ていてもしょうがないから、広場に腰まである下草をかき分けて入って、植物に覆われている鬼熊と破壊猪のところに行って二体の状態を確かめる。
……うん、呼吸も脈拍もあるから眠ってるだけだ。ただ植物に覆われて眠っている状態は絶対に普通じゃない。あとディグリは、どこにいるんだ? 二体が広場にいるし植物達がディグリの事も表してたから、ディグリもここにいると思ってたけど当てが外れたな。
わからない事を考えても時間の無駄だから、とりあえず眠ってる二体を起こそう。眠っている原因だろう二体の身体を覆っている植物をなんとかすれば良いかな。そう思っていつもの感じで二体を覆っている植物に同調すると、いくつかの事がわかった。
まず二体を覆っている植物は、二体の身体に寄生していて魔力や養分を吸っている。次に広場で異常な成長している植物達は、魔力的なつながりがある。つまり広場に生えている植物は、種類は様々だけど一つの同じ枠組みの集合体である。最後にこの集合体の枠組みはディグリである。要は人型にまとまっていたディグリの身体がばらけて、二体の身体ごと広場を覆い尽くしているみたいだ。
という事は、ディグリを元の状態に戻せば二体を覆っている植物も無くなって起きるはず。ただ今のばらけた状態だとディグリの意識が薄くなってるから、かなり強く呼びかけないといけない。体調が万全じゃない中で、しっかりとやれるか自信がないけど被害は治すって約束したからがんばろう。
「緑盛魔法・緑盛人形」
僕が深呼吸して魔法を発動させると、元ディグリの植物達がザワッと震えて広場の端の方から少しずつ植物達が移動し始める。…………これはなかなかきつい。言ってみれば人一人分の砂山を自分の手で造って、そこから人型に成型しないといけないから時間がかかる。僕は細かい制御は得意だけど、元々魔力が少ないから持久力がないんだよね。まあ、どう考えても身から出た錆だからがんばろう。
その後しばらくの間、じりじりと少しずつ広場の真ん中に集めながら思うのは、確実に僕の魔力が保たないから何か他の手段を考えないといけないって事だ。さし当たって思いつくのは、広場の真ん中にある実をつけた果樹かな。同調で調べて特にディグリの核ってわけじゃないけど、僕が核になるように誘導すればディグリも自力で身体を元に戻す事ができるなるかもしれない。……よし、緑盛人形を実に集中させたら、実が淡く光ると鼓動のように点滅をし始めた。
「ディグリ聞こえる? 僕の言ってる事がわかる?」
僕が呼びかけると返事をするように実が強く光る。これならなんとかなりそうだ。
「ディグリ、僕が補助するから自分の身体を思い出して再構成して」
緑盛人形を再び広場全域に広げると、実の光と広場の植物のざわつきが強くなる。そして実が一際大きく光って広場を光が満たした。光が無くなり目が慣れてから周りを確認すると、広場を覆っていた植物達が消えて広場の真ん中にディグリが立っていた。
「身体の調子はどう?」
「ゴ迷惑ヲオカケシマシタ」
「特に問題ないから大丈夫だよ」
とりあえずディグリは元に戻ったけど、鬼熊と破壊猪はどうかな? 二体を見ると、ちょうどのっそりと立ち上がってたけど明らかにだるそうだ。植物に覆われるっていう妙な状態にだったんだからしょうがないか。
「身体の状態をもう一度確かめるから無理に立たなくて良いよ」
「ガア……」
「ブオ……」
地面に横たわった二体を同調で確認したら、外傷は無くて疲労と脱水の状態だった。まずは水分補給が先決だね。腰の小袋から種を取り出して僕の足もとに埋めて魔法を発動させる。
「緑盛魔法・超育成・水蜜桃」
水蜜桃水蜜桃は、見た目が桃に似た甘い果物でとにかく水分があるから、これなら水分補給と甘いしエネルギー補給もできる。実際、僕も森を散歩していて疲れた時にこれを食べている。少し時間をかけて成長させて果実がなる前までにした後、強めに魔力を集中して果実をどんどん結実させて鈴生りの状態にする。
「ディグリ、二体に水蜜桃を食べさせたいから果実を採るの手伝って」
「ワカリマシタ」
ディグリと手分けして水蜜桃を二体に運んでいくと、二体はあっという間に食べていく。たぶん冬眠明けの動物はこんな感じかな。そして樹になっていた水蜜桃が無くなると、ようやく落ち着いたみたい。
「ガア!! ガ?」
「ブオ。ブブオ」
「うん、体調が戻って良かった」
「主、アナタノ身体ハ大丈夫デスカ?」
「筋肉痛で動きにくいくらいで、他は特に問題ないよ」
「ソウデスカ、良カッタデス」
「まあ、これで証明できたから僕も良かった」
「証明デスカ?」
「ガ?」
「ブ?」
三体が何の事だろうと首をかしげる。
「お前らとあれだけ戦えたら、大神林の奥に行くのは問題ないよね? 僕の体調が戻ったら案内よろしく」
「ガ!?」
「ブ!?」
「……そのしまったっていう顔は何?」
「何ノ話デスカ?」
「ああ、ディグリと出会う前に大神林の奥に案内してもらうって約束してたんだ」
「…………本当デスカ?」
「……ガア」
「……ブオ」
「チョットコチラニ来テクダサイ」
ディグリに鬼熊と破壊猪が広場の端に連れて行かれた。声は聞こえないけどディグリが二体を問いただして、二体がうろたえながら答えてる感じかな? 僕が座って空を見ながら待っていると三体が戻ってきた。……あれ?
「私シモ行キマスノデ」
「二体の住処にって事?」
「ソウデス」
「わかった。ところでさ」
「何デショウカ?」
「二体と何かあった?」
「イイエ」
「そう」
「ハイ、何モアリマセンヨ。ソウデスヨネ?」
「ガア……」
「ブオ……」
二体がディグリから微妙に距離をとってるし絶対に何かあったと思うんだけど、ディグリから妙な威圧感を感じるから聞かないでおこう。なんとなくリンリーとお姫様が向かい合っている時の感じに似てる気がする。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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