生まれてから 日々の変化と始まりの旅
兄さんと姉さんに僕が何を考えているか言った後、僕の日常にいろいろと変化が出てきた。
まず、村のみんなと仲良くなった。今までもいじめられてたというわけじゃないけど、僕が身体の事を言っても妙な感じになるのが減って、前よりもいろいろな人に話しかけられるようになった。うーん、……なんでだろ?
次に僕は村の中で働き始めた。主にヘカテ爺さんの下で薬草の世話をしたり、他にも木工や機織りや写本なんかをしている。ヘカテ爺さんの話によると竜人族は基本的に身体を動かす方が好きなため、屋内作業を苦手にしている人が多いらしく屋内作業員は常に不足している。
この状況を改善しようと子供達に仕事を教えているが余り成果は出ていない。屋内作業員を増やしたいから子供達にやらしてみたけど、ほとんどの子には適性が余りなくて兄さんや姉さんも屋内作業を割り当てられた時は目が死んでたね。でも、中には屋内作業を苦にしない子もいるから、とりあえずはその子達には継続してやらせようというわけらしい。
……まぁ、その子達って言っても僕の他に五人くらいしかいないおかげで忙しくて、なかなか散歩に行けなくなった。まぁ、働くのも楽しいから良いけどね。
あともう一つあるけど、今は置いておこう。なぜなら今は他の事を考えてると怒られる場面だからだ。今がどんな状況かというと村の集会所で話し合いが行われており、その議題が僕だ。なんでも他の竜人族の村々から、次に開かれる竜人族の交流会に連れてきてほしいという要望が来たらしい。
竜人族は僕達の黒――僕だけ白だけど――以外に赤・青・黄土がいて、それぞれが各地で村を形成している。そんな竜人族は、四年間隔で各村持ち回りの交流会を開催しており、人材面や技術の交流・お互いの村の特産品の交換などの場になっている中で特に重要視されているのが各村の有望な若者の顔合わせらしい。
鱗の色は違うけど、同じ竜人族だから何かあった場合は当然協力し合う。そんなもしもの時のため若者に各村の場所を把握させたり、村長や他の顔役との顔合わせをさせておくために交流会に若者を連れて行くみたいだ。それで今、議題になっている僕だけど決して有望じゃない。むしろ体力には自信がないから、落ちこぼれと言える。どうして僕なんだろう? 珍しい「欠色」だから?
「話し合いしてるところで悪いけど質問しても良い?」
「ふむ、少し煮詰まってきたところじゃから、ちょうど良いじゃろ。ヤート、何が聞きたいんじゃ?」
「いくつかあるんだけど……、なんで他の村の人は僕の事を知ってるの?」
「そうか……、その事は話してなかったのう。実はヤートが産まれた年に開催された交流会で話してあったのじゃ。各村で新たに起こった事は話す決まりになっておる」
「そうなんだ。本当になんで僕なんだろ? 他の村がどこにあるか知らないけど、僕は体力がないから旅には向かない。うーん、「欠色」を見たいからかな?」
僕が「欠色」と言うと、みんなは少しだけ戸惑ったみたいだけど、すぐに気を取り直して話し合いを再開する。でも、完全に話し合いは堂々巡りになっていた。なんか「他の村からの要望だからできる限り応えるべき」という意見と「わざわざ身体の弱いものに危険な目に会うかもしれない旅に出すべきじゃない」っていう意見があって、そこから結論に至れないようだ。
「これだけ話し合いしてるって事は、なんで他の村が僕を指名したのかわかってないの?」
「今は相手からの返答待ちじゃ。じゃから、その間にこの村の方針だけでも決めようとしたんじゃが……」
「結論が出ないと……」
「…………そういう事じゃ」
「……あと聞きたい事は、特に意見を求められるわけでもなく、ただこの場にいるけど僕ってここにいる意味あるの?」
いきなり昼過ぎに呼び出されて集会所に来てから、だいたい二刻(前世でいう二時間)くらいずっと座って話し合いを眺めてた。その間に何か話を振られるわけでもなく状況を説明されるわけでもなく、この場にいるけど、さすがに我慢できなくなって聞いてみたら村長を含めたみんなが、あって顔になってお互いの顔を見回してた。……どうやら意味はなかったみたいだ。…………はぁ。
「……薬草の手入れに戻っても良い?」
「そうじゃな。それにしても、……すまんのう」
「良いよ。ただ結論が出たり他の村からの返答がきたら教えてほしいかな」
「何か動きがあったら、すぐに知らせよう」
「うん。それじゃ」
微妙な空気の中、僕が集会所を出て行った後も話し合いは続いたようで、夕方になって薬草園での雑草抜きや害虫駆除なんかの手入れが終わって家に帰る途中で疲れた顔の話し合いの参加者を見た。そして家で夕食を食べて、まったりしていると父さんと母さんに呼ばれた。
「ヤート、今度の交流会にガルやマイネといっしょに、お前も参加する事になった」
「そうなんだ。いつ?」
「こっちの準備が終わった後だから出発はだいたい一月後だな」
「僕が準備する事ってある?」
「その辺は大人がするから、あなたは体調管理に専念しなさい」
「わかった」
どうやら、結論として僕を参加させる事に決まったようだ。でも、これで初めて大神林の外に出れる。間違いなく体力面では不安だけど前世でできなかった長期の旅ができるから、やっぱりこっちに生まれて良かった。旅が楽しみだね。
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