決戦にて 怪しい動きと命がけの行為
「「貴様ら、よくも……よくも我らの寝所を汚してくれたな‼︎ 貴様らの罪は万死でも足りん‼ ︎楽に死ねると思うな‼︎」」
「あの状態で、よくあれだけの声を出せるものだ……」
父さんの不快九割、関心一割のつぶやきは僕も同感だね。僕達の魔法により起きた爆発に巻き込まれたせいか手足の中にはへし曲がってたり炭化しているものもある。さらに僕達から見える肌が大穴近くに倒れてた三人みたいにヒビ割れてるから満身創痍と言って良いはずなのに、僕達へ空気をビリビリ震わせながら大声を出してきた。まあ、見た目は普人族でも中身は魔石だから人族基準で考えるのはおかしいか。
「緑盛魔法・純粋なる緑を纏う光線」
僕は魔法を唱えて、世界樹の杖の先端に咲いているムーングラスの葉から数本の深緑色の光線を空へと放つ。そして空へと伸びた光線はある程度の高さで折れ曲がり大声を出している二人の後ろの地面を貫いた。
「「クッ……」」
「させない」
「ヤート?」
「あそこの地面の下に汚泥を溜め始めてたから、とりあえず牽制で撃ち抜いただけ。本命はこれだよ。緑盛魔法・純粋なる緑を纏う波紋」
うめいてるもののまだ諦めてない二人の攻め手を潰すため世界樹の杖で地面を軽く小突き、そこから発生させた深緑色の波で爆発痕の表面を全て覆う。
「「何っ⁉︎」」
「お前らのやりたい事はやらせるつもりはないから」
これにより地面を伝わる波で地表近くに溜まっていた汚泥を浄化して土に戻し、さらにあの二人がこれ以上汚泥を地下へ流すのも防いだ。これであの二人のやれる事はかなり制限したはずだけど、どうだろう?
「負けを認める?」
「「こんなものは我らの障害にはならんわ‼︎」」
二人は折れている手をためらわず動かして掌に魔力を集め、それを地表を覆っている純粋なる緑を纏う波紋に叩きつけようとする。でも、それもディグリが腕から伸ばした根を巻きつけ固定したので無意味に終わった。
「「草ごときが我らの邪魔を、グビャッ‼︎」」
「黙リナサイ……」
二人が自分達の腕に巻きついているディグリの根をもう片方の手で触り汚泥を浴びせようとしたけど、ディグリは腕から別の根を伸ばして二人を殴る。
「「グべッ、ゴバッ、ギザッ、マッ、ヤメッ」」
あ、今度は根で二人の身体を縛り上げて振り回し、爆発痕の地表に二人の頭部を何度も叩きつけ始めた。
数分後、ずっと地表に落とされ続けた二人は声を出さなくなっている。ただ負けを認めたり諦めたりはしてないようで、何かを狙い続けていた。界気化した魔力でも二人の思考の肝心なところを読み取れてないから、まだまだ警戒は必要だね。わかる範囲で確かなのはディグリにボコボコにやられてる二人が、僕らの今立っている台地の地中に意識を向けているって事。僕は確認のため界気化した魔力を台地の内部へ流してみた。
「…………うん?」
「どうした? ヤート」
「何か大きなものが台地の中にあるなって」
「「貴様っ‼︎」」
ラカムタさんに聞かれて僕が台地の中に何かがあると言った瞬間、ディグリに縛られていた二人は身体中から汚泥を出してディグリの根を腐らせ自由を取り戻す。そして爆発痕の底へ戻ってから、すぐに僕達へ汚泥を放ってきた。これに関しては純粋なる緑を纏う波紋を空中へ流せば解決できるんだけど、その汚泥を目くらましにしてずっと同じ言動をしていた二人が別々の事をやり始めたのは不自然すぎる。そんなに台地の中にあるものは二人にとって重要なものなのか?
疑問が膨らむけど片方は前に出て僕達へ汚泥を放ち続け、もう片方は拳を頭上に上げたまま拳に自分の魔力を集め始め続けてるから考える余裕はない。
「みんな、聞いて」
「ヤート、何があった⁉︎」
「あの二人が何かを起こそうとしてる。僕が汚泥を消すから、みんなは全力で攻撃して。特に拳に魔力を集めてる方へお願い」
僕のお願いに、みんなは戦闘体勢になって応えてくれた。…………チラッとディグリの方を見たら身体から危険な植物が生えてきてる。さすがに僕達には影響がないようにしてくれてるけど、あの二人に拘束を解かれてイラついてるみたいだ。
「緑盛魔法・純粋なる緑を纏う波紋」
「させんぞ‼︎」
「これは……まずいかな」
僕達へ汚泥を放ってくる奴が、どんどん弱ってきてる。本当に今この瞬間に自分を使い潰すつもりだから純粋なる緑を纏う波紋と張り合えてるようだ。視界が晴れないとみんなが攻撃できないし時間もない。……それなら僕は力を貸してもらうだけ。
「シール、合わせて」
『お任せを』
「『緑盛魔法・純粋なる緑を纏う波紋』」
「チッ……、まだか⁉︎」
「あと二呼吸分だ‼︎ 絞り尽くして時間を稼げ‼︎」
「わかっている‼︎」
僕とシールの同時詠唱の魔法と自分を犠牲にして放つ汚泥が衝突した。結果はもちろん僕とシールが競り勝ってる。でも、少しの間均衡があったからあいつらに必要な時間を与えてしまう。それに自分の方が負けるとわかったあいつは、魔力を溜めているもう一人の前に立ち塞がってみんなの攻撃を全身で受け止めた。
「あ……ま…………た……」
「よくやった‼︎ これで目覚めさせる‼︎」
頭上の拳に魔力を集めてた奴が拳を自分の足もとへ振り下ろす。僕とシールはとっさに爆発痕の表面を覆っている純粋なる緑を纏う波紋を強化したけど、面での防御は一点突破に弱いから打ち抜かれた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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