表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
260/318

大神林にて 四体の関係性と淑女で母親な木

 黒の村を出発してからしばらく経った時、僕はミックに背負われて大神林(だいしんりん)の奥へと運ばれていた。ミックが時に大神林(だいしんりん)の樹々の間をすり抜けるように走ったり、時に枝から枝へ飛び移っていくを見て感心する。


「ミックは人型の身体でも、かなり自在に動けるようになったね。こんな速い速度で移動ができるようになってるとは思わなかったよ」

「…………ナレタ」


 本来なら高速移動中なので舌を噛む可能性などから会話をする余裕はないはずだけど、ミックは僕にできるだけ負担を与えないように気を付けてくれるから大丈夫。唯一心配なのはミックの機嫌だね。


「ミック、僕は気にしてないから」

「…………アイツラジャマ」

鬼熊(オーガベア)破壊猪(ハンマーボア)もディグリも、戦闘中には協力してくれるけど日常に戻るとケンカというか張り合いがすごくなるのは確かだね」

「…………ホントウニジャマ」


 思い出したのかミックも機嫌が悪くなってきたな。事の起こりは、いつものように三体の口論からのにらみ合いで三体が動かなくなったからだ。この時、三体は三体で自分達が戦うと周りへの被害が大きくなるから、にらみ合いの段階で抑えるという気づかいをしてくれたのは間違いない。


 でも、ミックは僕が大神林(だいしんりん)の奥へ行きたいのに移動できない状況に怒り、僕を鬼熊(オーガベア)の背中からサッと降ろし背負ってから走り出した。まあ、僕としてはできるだけ早く大神林(だいしんりん)の奥へ行けるに越した事はないから身を任せる。


「…………コノママススム?」

「うん、進行方向は合ってるから、このままでお願い」

「…………ワカッタ」


 移動をミックに任せて、僕は三体の様子を探るために界気化した魔力を後ろに放つ。…………三体もミックを追ってきてるね。ただ気になるのは爆走じゃなくて静かに走っている事。ディグリは滑るように進むから静かなのは当然として、鬼熊(オーガベア)破壊猪(ハンマーボア)は走り出したら音と土煙がすごくなるのにどうしたんだろ? まあ、追いついてきた時に聞けば良いかと考えていたら、気になる場所に近づいてきたのでミックに呼びかける。


「ミック、少し寄り道したいから向こうに進んでくれる?」

「…………ワカッタ」


 ミックに背負われて着いた場所は、前に僕と三体が魔石と戦ったところだ。…………よしよし、魔石の寄生してた大樹だけが目立ち他は樹々は痩せ細っていたり地面は土が露出していたりと、およそ大神林(だいしんりん)らしくなかった景色が今は太く瑞々しい樹々や地面を覆う下草に将来大木になるだろう若木が生えていて大神林(だいしんりん)らしくなっている。あとは久しぶりに会う樹とのあいさつだ。僕はミックの背中から降りて近づいていく。


豊穣木(マザーズツリー)、久しぶりだね。元気にしてた?」


 豊穣木(マザーズツリー)からニコッと笑い優雅に礼をしてくる感じが伝わってくる。周りの植物達からも慕われてるみたいだし、今もリィーン、リィーンという小さい音とともに周りの植物達を活性化する魔力を放ってるから大丈夫みたいだ。ミックも気持ち良さそうな感じになっていだけど、ハッと気を取り直し腕から伸ばした蔓で豊穣木(マザーズツリー)に触れた。


「…………ミック。…………ヨロシク」


 あれ? ミックと豊穣木(マザーズツリー)って、前に魔石と戦った後であった事なかったっけ? …………あ、そうだそうだ。豊穣木(マザーズツリー)はミックが種に戻った後に、成長させたんだったね。だから、ミックと豊穣木(マザーズツリー)にとっては今日が初対面で良いんだ。疑問がスッキリしたから三体が合流するまで話していよう。




 その後、豊穣木(マザーズツリー)から周りの植物達の回復していく様子や、何か他に異常が起きていないかを聞いたけど、本当に何も問題はなかったみたいで良かったよ。…………お、やっと合流か。重い足音が聞こえてきたから振り向くと三体がいた。


「ここに来るまでの走り方が、すごく静かだったけど何かあった?」

「ガア」

「ブオ」

「周リノ植物達ヘノ配慮デス」

「ああ、そういう事」


 わかりやすい理由で良かった。僕が納得しているとミックが僕の前に出て三体をにらみつける。


「…………オマエラジャマ。ジカンノムダ」

「……ガア」

「……ブオ」

「ソノ点ツイテハ謝リマス」


 僕からも三体に何か言っておくべきかとも思ったけど、とりあえずミックがわかりやすく言ってくれたから、このまま四体の会話を聞いておこう。


「…………ナンデジャマスル?」

「ガア……」

「ブオ……」

「邪魔ヲシタワケデハアリマセン。コノ方々二負ケタクナイカラデス」

「…………イマスルナ」

「「「…………」」」


 ミックにキッパリと言われ、三体は何も言えなくなっていた。意外と……は失礼か。ミックは関係性とか状況を判断してくれるのは頼りになるね。というか独立した個体として僕のそばにいるようになったのはミックが一番最近なのに、ミックの方が三体を圧倒する関係になってるのは見ていて興味深い。


「とりあえず、いったん大神林(だいしんりん)の奥まで休戦してくれると嬉しいんだけど」

「ガア」

「ブオ」

「ワカリマシタ」

「…………ダメナラハコブ」

「もう大丈夫だけど、もしもの場合はお願い」


 三体が気まずくなっている中、豊穣木(マザーズツリー)から、あらあらしょうがないわねっていう子供のケンカを見てる母親みたいな意思がリィーンという音といっしょに伝わってきた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


後書きの下の方にある入力欄からの感想・評価・レビューもお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 誰が保護者か選手権 優勝。ミック! 各々我をおさめ 主の希望を優先しましょう ってな副音声が聞こえた気がした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ