赤の山にて 青の護衛と白の魔法
明けましておめでとう御座います。
新年、一回目の更新です。
「僕の魔法は「同調」を基本としている……か。なんで、そう思ったの?」
「君が明らかに破壊猪と会話をして親しくしている。これが理由だ」
「そんな事が理由になる?」
「ああ、十分になるよ。自分とは異なるものと意思疎通をする場合、何かしらの方法なり要因なりが必要になる。例えば「念話」、「魔力の相性の良さ」、そして「同調」だ」
「それだと他の可能性も出てくるよ?」
「いいや君は間違いなく同調」だよ。まず「念話」は基本的に自分からの一方通行で、破壊猪の方も「念話」を使えなければ意思疎通は成立しない。見たところ破壊猪から君に向かって魔力を発してはないから「念話」を使えないのだろう。この事から「念話」は除外される。次に「魔力の相性の良さ」は基本的に精霊や死霊なんかの非生物に関わる事で破壊猪には関係ない。以上の理由から二つは除外され残るのは「同調」のみだ。一度同調してしまえば同族になったに等しいから、生物の破壊猪と双方向の会話ができる。一応、これが結論なんだけど、どうかな?」
どうかなって僕に確認してくる割に、イリュキンの声は確信に満ちていた。
「まあ、正解かな。ただ、僕の同調はそこまですごいものじゃない。お互いがこんな感じの事を言ってるってわかるくらいで、同族になるなんてほど遠いよ」
「それでも構わない。そもそも同調できるもの自体が少ないから、その同調が使える魔法使いから話を聞けるだけで十分価値がある」
「なんと言うか物好きだね。……まあ良いか。それで僕の魔法の何が聞きたい?」
「教えてもらえるなら、どんな事でも構わない」
僕を見てくるイリュキンの本当に真剣な表情が悩みの深さを表してるな。
「……僕の緑盛魔法は、植物を色んな形に成長させたり部分的に使わせてもらったりと植物に力を貸してもらうもので植物を生み出すものじゃない。魔法の対象は種・実・苗・僕の周りに生えている植物の枝・葉・根、それと植物由来の物品もそうだね」
「かなり対象となる範囲が広い。…………つまり君は植物と協力できるという事か」
「簡単に言えばそういう事。まあ、いろいろ条件はあるけどね」
「それはどうい……、いや、すまない。弱点や条件は、軽々しく聞いて良い内容じゃなかった」
「その辺は当然答えたくない」
「すまない。ただ同調については……」
「……僕のは説明が難しい」
「何が難しいんだい?」
「僕の同調は、これって言う手順がない」
「手順がない?」
「他の同調は知らないけど僕の同調に関してはないね。強いて言うなら、それなりの時間を対象といっしょに過ごしてたり触ってたら、いつの間にか同調できてる感じ」
「へえ、かなり感覚的なものなんだね……」
僕のあいまいな同調の説明を聞いてイリュキンは感心しながら何かを考えるように顎に手を当てていた。
「黒の村の周りにあった植物を触ってたら、いつの間にかできるようになってたよ」
「……同調を欠片でも良いから感じたかったんだけど、さすがに虫が良すぎたか」
「それなら僕と手をつないでみる?」
「えっ?」
「この散歩で、イリュキンとしばらくいっしょにいたから同調できてるかと思ったけどダメだった。今までの僕の経験から対象に触ってた方が同調できるまでの時間が短いから、手をつなぐと早く同調できると思うけどどうする?」
僕がイリュキンに接触による同調を提案したら、また離れた場所からガサゴソと音が聞こえてきた。そういえば僕とイリュキンがさっきから、何かしようとする度に音がする。…………うっとうしいから撃つか。
「緑盛魔法・超育成・射種草」
「なっ!! ちょ……まっ」
なんかイリュキンが僕を止めようとしてるけど関係ない。とりあえず撃つ。僕が射種草を成長させて蕾の射出口をガサゴソ音のする方に向けると、なんか慌てたように音が大きくなって遠ざかり始めるけど逃がすか。ポンと軽く叩いて射種草に合図を送ると遠ざかる奴へ次々種を撃ち込んでいく。そうすると別の方からも同じような音がしてきた。不思議に思い近くの樹木に触って同調し僕達の周りの様子を教えてもらったら、いつの間にか囲まれていた。僕は腰の小袋に手を入れ探りながらイリュキンに話しかける。
「イリュキン」
「なっ、なんだい?」
「いつの間にか囲まれてる。うっとうしいから仕留める。緑盛魔法・刺激する赤」
小袋から取り出した真っ赤な実に魔力を通してつぶやくと、その実から大量の真っ赤な霧を発生して僕の周りを埋め尽くしていった。そして僕がパチンと指を鳴らすと、真っ赤な霧がまるで意思を持っているかのように周りの気配に向かっていく。そして僕らを囲んでいた奴らの「ゲハッ」や「グ……ガ」と言ったうめき声が聞こえてくる。……何か忘れてるような? なんだろ?
「ブ……」
「あっ、ゴメン。思いっきり巻き込んだ」
破壊猪の鼻の良さを忘れてた。嗅覚が鋭い奴に、この刺激臭はキツかったはず。イラッとしてたとは言え身近な奴を巻き込むとかひどいな。反省しないと……って反省してる場合じゃなくて早く手当てしないといけない。うん、この場合だったら、これが効くはず。
「すぐに治すから耐えて。緑盛魔法・鎮める青」
今度は腰の小袋から取り出した青い実に魔力を通してつぶやく。すると青い実が液体状になって僕の掌の上に浮かぶ。
「ほら、これ飲んで」
「ブ……ォ……」
真っ青な液体を見て破壊猪はためらってたけど、覚悟を決めたのかグッと口を噛み締めた後に一気に口に入れ飲み干した。……見た目は確かに変だけど、そんなに覚悟を決める事じゃないんだけどね。
「ブオ」
「良かった。ちゃんと効いた」
「ブ?」
「あの青い実の効果は知ってるけど、使うのが初めてだから、ちょっと不安だった」
「ブ!!」
「イラッとしてたとはいえ、巻き込んでごめん」
「ブオ」
「反省してる。以後気を付けるよ」
「君は何を考えてるんだ!!」
僕が破壊猪に謝っていると、イリュキンが突然大声を出した。
「どうかした?」
「どうかしたじゃない!! なぜ、いきなり魔法を発動させたんだ!!」
「なぜって、僕の知らない内に尾行されて囲まれてたからだけど?」
「……そうか、言わなかった私が悪かった」
「イリュキンの仲間?」
「そうだ。さっき言ったけど水添えは、青の竜人族内に基本的に一人しかいないから常に護衛が着いている。それと同じで候補者にも護衛が着いているんだ」
「大事にされてるんだね」
「……護衛の存在を言わなかった謝罪は後でいくらでもするから、その破壊猪のように護衛達の手当を頼めないだろうか」
「ああ、そうだった。ごめん、直ぐにやる。緑盛魔法・鎮める青」
再び腰の小袋から青い実を取り出してから真っ青な霧を発生させたら、うめき声のしている方へ流していった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
今年も続けていくので、よろしくお願いします。
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