黄土の村にて 女傑と別のもの
僕達は三体と別れ、カイエリキサさんの案内で黄土の村の集会所へと向かっている。道すがら黄土の村の建物も見れるわけだけど、黄土の村の建物は全ていろんな形の石材を組み合わせて建てられていた。しかも、接合部を見ると魔法で接合された跡がある。
……やっぱり建材に石材を使うくらいだから、新しく生まれた植物達は黄土のみんなにとって負担になるかもしれないね。諸々の異常事態を解決した後に、黄土のみんなと相談した方が良さそうだ。
「ヤート」
「何? ラカムタさん」
「嫌な気配は今どうなっている?」
「…………活動量は小康状態だよ。ただ僕達が黄土の村の近くに着く前と比べたら、ほんの少しだけ魔力が活性化してる」
「油断はできないという事か……」
「うん」
「わかった。いつ新たな動きが起こっても、すぐに対応できるように嫌な気配の監視を頼む。ただし疲れが溜まるような無理はするなよ」
「必要ないなら無理はしないから大丈夫」
「「「「「…………」」」」」
ラカムタさんに心配そうな顔をされ、父さん・兄さん・姉さん・リンリーからは自分達がしっかりしないといけないっていう決意みたいなものが伝わってくる。……なんで必要ないなら無理はしないって断言してるのに、そんな反応なのかが少し納得できずにいるとカイエリキサさんが僕達のやり取りを見て微笑んだ。
「フフ、黒の方々は良い関係ですね。後ほど皆さんの事を、いろいろ教えてくださいね」
「僕も黄土の事は興味があるので、いろんな話を聞きたいです」
「そう言ってもらえるのはとても光栄です。私やアステロダは久しく他の色とは交流していなかったので、こういう状況でなければ全力でもてなしたのですが……。忌々しいですね」
「村長、また魔力が漏れてきているぞ」
「……これは失礼を」
カイエリキサさんって物腰は柔らかいけど、もしかして赤の村長のグレアソンさんと同じ女傑っていう感じの人かな? さっきの乱闘の戦いっぷりを見たら外れてない気がする。今まで会った強い人達の中とカイエリキサさんの強さを予想していると、それは起こり僕はかなり気持ち悪さから立ち止まった。
「ヤート……?」
「ヤート君、突然立ち止まってどうしたんですか?」
「…………見られた」
「え?」
「今、絶対にみんなや三体以外の誰かに見られた」
僕が言った瞬間に、みんなは僕を中心に円陣を組んだ。…………改めて界気化した魔力を全開で周りに放っても僕達以外の意識は感知できない。あれだけ気持ち悪い視線の持ち主を感知できないとかあり得るのか?
「チッ、小康状態でも意識はあるって事か」
「ラカムタさん、違うよ。嫌な気配の奴が僕を見てたわけじゃない」
「何……? だが、ヤートは見られたと……」
「少なくとも大霊穴の方からは見られてない。嫌な気配の奴とは別の奴だね」
「別だと……? カイエリキサ殿、泥人形以外に異常はあったか?」
「…………いえ、私達が把握しているのは泥人形だけです」
「それなら……誰なんだ?」
「わからない」
あの気持ち悪い視線からはっきりとした事は警戒を緩めたらダメだという事。逆に言うと、それ以外は何もわからない。…………空振りになるかもしれないけど探せるだけ探すべきか。僕は黄土の村の門へと戻るため歩き出す。
「ヤート、どうする気だ?」
「ちょっと三体と、いっしょにこの辺り一帯を確認してくる」
「ヤート殿、その役割を我ら黄土に譲ってもらえませんか?」
「カイエリキサさん?」
「この辺りは我ら黄土が、はるか昔から住んでいる場所です。ケンカを売られた相手に我が物顔で自由にされるのは、ハラワタが煮え繰り返る思いなのでお願いします」
カイエリキサさんの声は落ち着いてるし魔力に乱れは無い。だけど、誰がどう見ても激怒しているのがわかる。ここはカイエリキサさんの提案にのった方が良いね。僕は腰の小袋を一つ外してカイエリキサさんに差し出す。
「それでは周りの確認は黄土でお願いします。ただ代わりに、この小袋の中身をいろんな場所に散らして埋めてください」
「これは……種ですか?」
「そうです。いざと言う時のための準備です」
「わかりました。あなた達、安全を最優先にして見回りを。そしてヤート殿の依頼も遂行しなさい」
黄土の大人達がカイエリキサさんの指示を受けて走り去っていく。……動きの質は黒の狩人達に劣らないな。
「それでは私達は集会所に向かいましょう」
「そうだな」
残った僕達は集会所に行き情報のすり合わせを行うわけだけど、他にも何か対策を準備しておいた方が良い気がする。何をするかは歩きながら考えよう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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