表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
213/318

黒の村にて 久々に聞いたみんなの評価と不可解な事

 数日が経ち、僕はもはや日課と言って良い事をこなすため広場にいた。日課の内容は当然ポポ達との模擬戦。でも、前の一対一を五連戦とはやり方が変わり、今は五対一で勝負がつくまで休まず戦い続けてる。


「やあっ‼︎」

「フンッ‼︎」

「うりゃあっ‼︎」

「負けないわよっ‼︎」

「今度こそ当ててやるっ‼︎」


 界気化(かいきか)した魔力を周りに放ち、ポポ達の動きを事前に感知して対応した。つまり拳を弾き、蹴りをさばき、つかみかかってくる手から離れ、尾による不意打ちを避けた後、僕は冷静に一人ずつ体勢を崩し後頭部や首を触っていく。


「これで勝負あり、だよ」


 最後まで残ったポポは、僕に後頭部を触られて身体から力を抜いた。そして僕が頭から手を離すと、ポポはつぶやく。


「また勝てなかった……」

「そうだね。でも、前より動きは良くなってるし、連携も取れてたよ」

「だとしても、五対一でヤートに攻撃を当てれないのは……」

「僕はどんな時でも、できる限り避けれるように鍛錬してるから」

「……クソッ」


 僕の言葉を聞いてポポ達は悔しそうにしていた。


「……また俺達と戦ってくれるか?」

「僕にとっても良い鍛錬になるから大歓迎なんだけど、界気化(かいきか)した魔力を使って相手の考えを読む反則をしてる僕と戦うのは嫌じゃないの?」

「なんで嫌になるんだ? おもしろいに決まってるだろ。なあ?」


 ポポが即答してから周りの子達に聞くと、周りの子達も「もっとやりたい」とか「挑みがいがある」って同意してきた。


「ヤートの界気化(かいきか)は、ヤートが鍛錬して習得した技術で、その技術を自分の弱い部分を補うために使ってるんだ。文句なんかない。それにヤートの戦い方は、俺達が今まで見た事のないものだぞ。嫌がる奴なんて、この黒の村にいるわけがない」

「さすがに全員っていう事はないよ」

「広場の周りを見てみろ」

「周り? ……え?」


 村長(むらおさ)や門番のネリダさんをはじめとした黒の大人達が、広場の端に並んで僕を見ていた。パッと見でいないのは父さん・母さん・ラカムタさんくらいだから、本当にほぼ全ての黒の大人達が集まっているみたい。……まあ、それはそれとして。


「みんな、仕事は良いの?」

「たぶん、速攻で終わらせたか、ヤートと俺達が戦ってる時だけ止めてるんじゃねえかな」

「えー……」

「俺達も大人達も、ヤートに興味津々だって言っただろ?」

「……あれ? ここ何日かで、父さんと母さん以外から戦いたいとか言われた事ないよ?」

「それはマルディさんから大人達に、ヤートが回復するまで無茶をさせないよう、お願いされてたからだな」

「そうなんだ……」


 どうやら父さんは、しっかりと村のみんなに根回ししてくれてたみたいだね。


「それだけじゃないぞ」

「うん?」


 声をした方を見たら、父さん・母さん・ラカムタさんが大人達の列の間を抜け僕達の方に歩いてきてくる。気になるのは父さんが兄さんを、母さんが姉さんを抱いている事。……どうやら前に言ってたのを、今日やったみたいだと思いつき、すぐそばまでやってきた母さんに確認してみる。


「母さん、兄さんと姉さんの二人と戦ってどうだった?」

「二人とも、打撃の重さも動きの速さも上がってて強くなってたわ」

「満足できた?」

「もちろんよ。二人の打撃を受け止めた時に残った腕の痺れは忘れられないわね」

「それなら良かった。ところで兄さんと姉さんは大丈夫?」


 僕が聞くと、二人はプルプル震えながら顔を僕へと向ける。


「森の、中で、ずっと、戦ってた……」

「疲れ、過ぎて、動け、ないの……」

「……そこまで疲れてるなら、家で休めば良かったんじゃ」

「ヤートと、父さんの、戦いを、見逃して、たまるかよ……」

「ガルの、言う、通りよ。寝てる、場合じゃ、ないわ……」


 兄さんと姉さんの言葉を聞き、ついに来たかと思い父さんを見た。


「父さん、今日やるんだね」

「ヤートの動きを見て、エステアとラカムタに相談した結果だ。いけるか? ヤート」

「うん、大丈夫だよ」

「そうか。ラカムタ、ガルを頼む」

「まかせろ。ポポ達も、俺達と下がるぞ」


 ラカムタさんは父さんから兄さんを受け取り、母さんやポポ達と広場の端へ移動していき、広場の真ん中に残ったのは僕と父さんだけになる。


「父さん」

「何だ?」

「さっき言ってた、それだけじゃないっていうのは何の事?」

「ああ、それは簡単でな、村に戻ってきたヤートと最初に戦うのは父親である俺だっていう話だ。例え村長(むらおさ)に頼まれたとしても、これは譲れない」

「……なるほど」


 父さんの身体から戦意があふれてきた。……かなりやる気になってるから、期待外れにならないよう真剣に戦おう。僕は深呼吸を一回して界気化(かいきか)した魔力を放ち戦闘態勢に入った。そして…………。


「良い感じに張り詰めてるな。そういう精神のブレが小さいところはさすがだ」


 父さんに後ろを取られた。界気化(かいきか)した魔力を放ってたのに、父さんの僕の後ろに回り込むっていう考えが感知できなかった。いったい父さんは何をしたんだ?

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


後書きの下の方にある入力欄からの感想・評価・レビューもお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ