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大霊湖にて 状況説明と身体での主張

 とりあえず僕は異様な動きをしている八体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達の現状確認をするため、静かに近づいてみると言って大髭(おおひげ)様から降りようとしたら、イリュキンや大髭(おおひげ)様達から僕一人で行くのは危険だと言われた。


 イリュキン達の言う事もわかるけど、まず大髭(おおひげ)様と二体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達はその力の大きさから八体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達に余計な刺激を与えかねないので近づけない。またイリュキンはもし僕に何かあった時、村へと戻ってみんなに状況説明をしてもらわないといけない。さらに僕は同調と界気化(かいきか)を使えて一番解析能力に優れている。


 以上の理由をイリュキン達に説明する事で渋々だけど納得してもらい、僕はイリュキン達から離れて一人で緑葉船(リーフボート)に乗り少し離れた湖畔に上陸した。その後、歩いて八体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達のすぐそばまで近づく。


 八つの小山が集まって一つの大きな山になり、また別れて八つの小山に戻る。……近くで見ても異様の一言だな。それに、これだけ近づいたのに僕への反応は一切ない。この世界の植物達は、何でわからないけど僕を気にかけて力を貸してくれるから、ここまで完全に無視されるのは初めての経験だね。


 まあ、僕の感想は置いといて、まずは確認。大霊湖(だいれいこ)の湖上から僕を見ているイリュキン達に手を振り、これから苔巨人兵タイラントモスゴーレム達へ触るという合図を送る。すると、すぐに大髭(おおひげ)様の両隣にいる二体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達が両手で大きく丸を作り返事をしてきた。僕は視線を戻すと、目を閉じて集中力を高め一番近くの苔巨人兵タイラントモスゴーレムに触り同調する。




 …………なるほど、そういう事か。しばらく同調して知りたい事を知れたので、また静かに苔巨人兵タイラントモスゴーレム達から離れイリュキン達のもとへと戻った。


「ただいま」

「ヤート君、おかえり。離れたところから見てたとはいえ、こうしてヤート君が無事に戻ってきてくれて嬉しいよ」

「バフ」


 イリュキン達に迎えられて僕は、一つ大きく息を吐く。どうやら感情の起伏が小さい僕でも、苔巨人兵タイラントモスゴーレム達の異様な状態を見て無自覚に緊張してたみたいだね。


「ありがとう。苔巨人兵タイラントモスゴーレム達についてわかった事があるから聞いてくれる?」

「もちろんさ」

「バフ」

「まず結論として苔巨人兵タイラントモスゴーレム達があんな風になってるのは、僕の発動させた魔法が解けかけてるからだよ」

「ヤート君の魔法……? あ、そうか、彼らはヤート君の魔法がきっかけで、今の苔巨人兵タイラントモスゴーレムという状態になってるんだったね」

「うん、だから改めて僕が魔法をかけ直したら安定するはずだけど、もう一度苔巨人兵タイラントモスゴーレムになってもらうべきか悩んでる」

「ヤート君は別れのあいさつに来たんだから、対話をするためにも苔巨人兵タイラントモスゴーレムになってもらう方が良いんじゃ?」

「それはそうなんだけど……、苔っていう自然な状態に戻ろうとしてるところに、僕の都合を押し付けるのはどうなんだろ? 誰だって、気持ちよく眠ろうとしてるところを起こされたら嫌じゃない?」

「…………確かに」

「…………バフ」

「どうしようかな……」


 僕とイリュキンと大髭(おおひげ)様が悩んでいると、二体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達から僕を呼ぶ意思が伝わってきた。


「何か良い方法ある? ……え、そうなの? わかった」

「ヤート君、彼らは何て?」

「寝ぼけてバタバタしてるだけだから、呼び起こして構わないってさ」

「……あれが寝ぼけてる?」


 イリュキンが一つの大きな山になったり八つに別れたりしている湖畔の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達を見て困惑した声でつぶやく。まあ、僕もあの異様な動きを単に寝相が悪いだけみたいに言われて驚いてるから、イリュキンがそういう反応になるのも仕方ないよ。


「……ヤート君、それならこちらの苔巨人兵タイラントモスゴーレムの方々は、どうして安定してるんだい?」

「それはきっとやりたい事に必要だからだね」

「やりたい事?」

「この二体は大霊湖(だいれいこ)を巡るという目的を持ってる。それじゃあ、この巡回に必要なのは何かって言えば、大霊湖(だいれいこ)の莫大な魔力と水に耐えれる身体とその身体を動かすためのしっかりとした意識」

「なるほど、確固たる自分を持ててるから安定して強いというわけか」


 イリュキンへの説明を終えると、二体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達は前世のテレビで見たボディービルダーのようなポーズをいくつもとり始めた。……人でいう胸や腕などをポーズに合わせてグッと膨張させているのは芸が細かい。


「……ヤート君、これは?」

「イリュキンに自分達の身体の頑強さを見せてるんだと思う」

「……バフ‼︎」

大髭(おおひげ)様⁉︎」


 突然、大髭(おおひげ)様が気合の入った息を出すと、滑らかだった身体の表面がいくつもボコッボコッと膨らんだ。僕とイリュキンの座ってる頭の上にもコブができ、その触れた感触は硬い。……これはたぶんあれだな。


「ヤ、ヤート君……」

「たぶん、二体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達に対抗して大髭(おおひげ)様も身体に力瘤を作ったんじゃない?」

「バフ‼︎」


 大髭(おおひげ)様はその通りだと意思を放つと、水中にあった身体をまっすぐ水上に伸ばして太い柱みたいになり、さらに身体の多くの場所に力瘤を作った。大髭(おおひげ)様の身体はかなり長くて太いのに、それをこれだけまっすぐ水上に伸ばせるのはすごい筋力だな。……あ、今度は二体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達が大霊湖(だいれいこ)の水を吸って身体を大きくし、はちきれんばかりの筋肉がムキムキな状態を再現しだす。


 僕とイリュキンは、大髭(おおひげ)様と二体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達っていう巨大な存在がお互いの身体自慢をしあい、その近くの湖畔で八体の苔巨人兵タイラントモスゴーレム達が異様な動きをしている変な状況にどう反応して良いのかわからなくなっていた。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


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