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青の村にて 今強いもの達とこれから強くなるもの達

 ラカムタさんの突きを受けたタキタさんは着地する。突然吹き飛ばされて驚きで思考が止まってる感じだったのに、すぐに気を取り直して体勢を乱さず着地するんだから、さすがだよね。


「これはこれは……」


 タキタさんが掌や腕の状態を確かめると、一回深くうなずいて笑った。それも今までのニコリと笑う笑顔と違い、姉さんの笑顔に似て……、いや、姉さんよりも武器だって感じる。


「ハハハ……」


 う、笑うタキタさんを見たラカムタさんの威圧が強くなり、タキタさんへと引き寄せられるように近づいて行き、お互いの手が届く距離で立ち止まる。


「始めますか」

「そうだな」

「「…………」」


 ドンッ‼︎


「「「「エッ?」」」」


 僕達が二人を見ていると、向かい合っている二人の間から破裂音が聞こえた。二人は動いてないのになんで?


「速い手技の応酬ですね。ハインネルフ」

「そうだな。今のところ速さは互角だが、繰り出す技の質は真逆なのは見ていて面白い」


 手技……? あ、ラカムタさんとタキタさんの手が、よく見たらブレてるから、二人は両腕を見えないくらいの速さで動かしてるんだね。それにしても質が逆ってどういう事だろう?


「ハインネルフさん、今のはどういう意味?」

「うん? ああ、タキタが無駄のない動きで速さを出しているのに対して、ラカムタ殿は持ち前の身体能力を生かして速さを出しているという事だ」

「……タキタさんが技術重視の速さで、ラカムタさんは力重視の速さ?」


 ドン‼︎ ドンドン‼︎


 僕達が話してる間にもラカムタさんとタキタさんの間で破裂音が続く。二人の腕の動きは全く見えないけど……。


「ハハハハハ‼︎」

「クハハハハ‼︎」


 二人が嬉しそうに楽しそうに笑ってるから、たぶんお互いに拳を突き出しては払ったり受けたりして、良い勝負になってるんだと思う。


「ちくしょう……」


 ラカムタさんとタキタさんが盛り上がってる中、兄さんから悔しそうなつぶやきが漏れたから見ると、兄さんは手をグッと握りしめていた。


「兄さん?」

「俺も強くなるために毎日鍛錬してるのに、あの二人の腕の動きがほとんど見えねえ。ここまで差があるのかよ……」

「兄さんなら、必ず追いつけるって僕が保証するよ。足りないかもしれないけどね」

「……フー、悪い。弱気になっちまった。ヤートが応援してくるなら、どこまでも強くなってやる。そのために今はあの二人の動きを少しでも目に焼き付けるだけだ」


 兄さんは深呼吸をして気持ちを切り替えたら、目や身体からやる気が満ちあふれてきた。うん、やっぱり兄さんはこういう感じでないとね。


「ガルには負けないわ」

「私もです」

「当然だよ」


 姉さん達も真剣な兄さんの様子を見て刺激を受けたのか、兄さんと同じくらいのラカムタさんとタキタさんを食い入るように見始める。


「うふふ、子供達の成長を見れるのは嬉しい事ですね」

「欲を言えば成長のきっかけになるのは自分でありたいとも思うが、例えそうでなくても先達として、これ以上の喜びはないな」

「本当に」


 ハインネルフさんとイーリリスさんが兄さん達を見て、ニコニコしていた。……うーん、成長か。僕はラカムタさんとタキタさんの手合わせを見て、何か成長につなげる事ができるのかな?


 近接戦が苦手な僕には二人の戦い方は参考にできない。それなら精神面? でも精神面だと、僕は前に黒の村長に「鋼の精神と図太い神経」って言われた事があるから、僕はある程度の精神的な強さを持ってるらしい。


 それにぼくの考え方や感じ方が、みんなとはズレがあるのも難しいところだ。兄さん達みたいに成長するには、どうすれば良いんだろ?


「ヤート殿」

「……何? イーリリスさん」

「周りと自分を比べる事をせず、まずは周りの人の良いところを見つけてください」

「えっと?」

「周りの人の良いところを見つけて認めれるのは、それだけで素晴らしい事なのです」

「なるほど……」

「ヤート君なら大丈夫です」


 僕がイーリリスさんの言葉を聞いて納得してるとリンリーか断言してきた。


「リンリー?」

「今の私があるのはヤート君のおかげです。そんな誰かを変える事ができるヤート君が弱いはずも成長できないはずもありませんから大丈夫です」

「確かにな」

「ヤートなら問題ないわ」

「私もヤート君に影響を受けたから同意見だよ」


 みんなから僕が悩んでる事への解答をもらえた。


「僕は無表情なのに、みんなよく僕の考えてる事がわかったね」

「ヤートの考え込みやすい方向は、みんなわかってるぞ」

「そうなんだ……」


 みんなは兄さんの言葉にうなずいてる。意外と僕ってわかりやすいんだなと、僕が自分の新たな一面に少し驚いていたら、兄さんは言葉を続けた。


「ヤート、俺達は強くなる」

「うん、兄さん達は間違いなくそうだね」

「何、自分だけを除けてんだ。ヤート、お前もいっしょに強くなるんだよ」

「え?」

「良いか。俺達は全員で強くなって、父さんや母さんやラカムタさんのおっさんを超えていくんだ」


 兄さんが宣言すると姉さん達も大きくうなずいた。僕には強いっていうのが、どういう事なのかよくわかってないけど、いっしょにというのは嬉しいね。


「うん、それじゃあ僕も兄さん達と強くなっていくよ」

「おう」


 僕達はお互いにうなずき合い、強くなるための第一歩としてラカムタさんとタキタさんの手合わせを真剣に見学することに戻った。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


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