青の村にて 話し合いと責任者の迷い
ハインネルフさん・イーリリスさん・タキタさんに僕の考えを言って、今後の警戒態勢について話し合う。
「……なるほど、確かにそろそろ警戒を解いても良いかもしれませんね。ハインネルフはどう思いますか?」
「ふむ……、ヤート殿の言う通り魔石の消滅は確認済みで、大霊湖に他の魔石が存在するとは考えにくい。さらに労力面から見ても平常時に戻す方が現実的ではあるな。タキタはどうだ?」
「わしもヤート殿やハインネルフ、イーリリスの意見に賛成します。仮に警戒するとしても、青の村周辺を水守達で巡回する程度で良いでしょう」
「それでは明日より、今の警戒態勢を解き平常時に戻す事を決定する。村の皆には夕食の時に知らせるとしよう」
警戒態勢を解く事が、あっさりと決まった。たぶんみんなもそろそろ良いんじゃないかって薄々思ってたんだろうね。
「ヤート殿、これまで警戒を続けてもらい感謝する」
「僕も気になってただけだから気にしないで」
「この恩は必ず返すが、準備などに少し時間がかかるゆえ、待っていてほしい」
「わかった。楽しみにしてるよ」
……ここで変に遠慮するのもおかしい気がするし、僕の返答を聞いた三人を見ても特に微妙な感じもしないから返事はこれで良いはず。僕が自分の答えを内心で振り返っていると、イーリリスさんに呼ばれた。
「ヤート殿」
「何? イーリリスさん」
「この後、何かご予定はありますか?」
「予定……。一度ラカムタさんに黒の村へと帰る時期を聞くのと、しばらくできなかった三体との散歩に、大霊湖の植物を調べるくらいかな」
「それでは、その予定の後でかまいませんので、また私と源泉の島に行ってもらえませんか?」
「イーリリス、ヤート殿に源泉の島を確認してもらうつもりだな?」
「はい、私も島の現状を把握するよう努めていますが、この際なので今までできなかった水添え以外の第三者の視点で確かめてもらうかと」
「確かに良い機会ですな」
「そういう事なら今すぐでも大丈夫だけど」
「いえいえ、至急ではないのでヤート殿の予定を済ませた後でかまいません」
「それなら、まずはラカムタさんのところに行ってくるよ」
「わかりました。後ほどよろしくお願いします」
「うん、またね」
僕は三人にあいさつをして広場に戻る。
そして兄さん達が落ち着いてたら良いなって思いながら広場に着くと……。
「オラッ‼︎」
「シッ‼︎」
「フッ‼︎」
「ハッ‼︎」
兄さんと姉さん・リンリーとイリュキンのケンカだったのが、四人の乱闘になっていた。……一瞬焦ったけど、四人は魔力を使わない格闘のみで戦ってるから一安心。まあさすがに、少し離れたところでラカムタさんが見てるから、本気になるわけにはいかないよね。絶対に拳骨が落とされる。僕は兄さん達を見つつラカムタさんのもとへと向かう。
「ラカムタさん」
「ヤート、ハインネルフ殿達との話し合いは終わったのか?」
「うん、だいたい僕の提案を受け入れてくれた」
「……そうか」
なんかラカムタさんが四人の乱闘をチラチラ見ながら心ここに在らずっていう感じだ。この感じはもしかして……?
「ラカムタさん、四人の乱闘に混ざりたいって思ってる?」
「…………そんな事はないぞ」
ラカムタさんは否定してきたけど、目をそらしてるから説得力がない。でも、四人の乱闘を青の人達も熱心に見てるし、三体も感心してるくらいだから、ラカムタさんが混ざりたいって思うのも無理はないかな。……よし、ラカムタさんに提案してみよう。
「ラカムタさんも、青の人達と手合わせすれば良いよ。青は達人が多いみたいだから、きっと楽しめる」
「……………………俺は黒の顔役だから羽目を外すわけにはいかないだろ」
ラカムタさんが、ものすごく迷った後に絞り出すように言ったのを見て、僕はここで発散してもらった方が良いなと思い、ちょうど広場に現れた三人に聞いた。
「大丈夫だよね? ハインネルフさん、イーリリスさん、タキタさん」
「は?」
ラカムタさんは僕に言われて初めて気づいたみたい。こういうラカムタさんは珍しい。本当に四人の乱闘に意識が向いてたんだね。ハインネルフさん達は、そんなラカムタさんを微笑ましそうに見ながら僕とラカムタさんの方に近づいてきて僕の質問に答えた。
「その通り」
「ラカムタ殿、我慢は身体に毒ですよ」
「それでは、わしと手合わせと参りましょう」
「お、おい、待て……」
「子供達は私とハインネルフが見ているので安心して楽しんでください」
ラカムタさんはタキタさんに押されて、広場の兄さん達が乱闘してるところとは別の場所に進んでいく。……そういえばラカムタさんにいつまで青の村にいるのか聞くのを忘れてた。まあ、夕食の時に兄さん達といっしょに聞けば良いか。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
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