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青の村にて 声と声

 ……ここに来るのは久しぶりだな。一応の確認のために界気化(かいきか)した魔力を周りに放ってみると、いつもと得られる情報が違うから現実世界じゃないとわかる。


 現実世界だと物質としての情報・その物質がたどった記憶・物質に宿っている魔力の情報なんかがあるのに、この世界だと魔力のみの情報しかない。要は僕を含めて魔力だけでで構成された夢みたいな世界って事だね。


 僕が現実世界にいない事はわかった。問題は、どの方向を見ても地平線の向こうまで白い大地が続いてるだけで、特に目立つものが何も無い事だ。動いてるのは僕以外だと夜空の流れ星のみ。さて、どうしようかな。


 …………まあ、久しぶりに来れたわけだし、滅多に見れない流星群を楽しむか。僕は白い大地に座って夜空を見上げる。




 そうして、しばらく流星群を見ていたら微かにキィーンという音が聞こえ、世界がブレていく。その後ブレが落ち着くとほんの少し世界が変わった気がした。


『ヤートよ。久方ぶりだな』

「前に話したのは大神林(だいしんりん)の奥で魔石を倒した後なので、本当にお久しぶりです」

『よくぞ大霊湖(だいれいこ)に潜んでいた魔石を滅してくれた。礼を言う』

「僕一人だけで倒したわけじゃないので気にしないでください」

『本来ならば世界に仇なす存在を滅するのは我の役目にも関わらず、ヤートに負担を強いている事が、自由に動けぬ我が身が歯がゆいのだ……』

「適材適所です。それに魔石との戦いは面倒くさいものでしたが、辛くはないので大丈夫です」

『……すまんな』


 声は僕の事を真剣に考えてくれていた。確かに魔石を倒すのは大変だったけど、なかなかできない長旅とか大霊湖(だいれいこ)が見れたとかの良い事もあったから、本当に気にしなくて良いのにな。……うーん、なんかこのままだと、声はもっと気分が沈みそうだから、聞きたい事を聞いて気をそらそう。


「一つ聞いても良いですか?」

『なんだ?』

「前に話した時は大神林(だいしんりん)の奥で魔石を倒した直後だったのに、なんで今回はそれなりに時間があいたんですか?」

『理由は二つある。一つはヤートが大霊湖(だいれいこ)の源泉に浸かり治療に集中せねばならない危険な状態だったためだ』

「……僕はそこまで危なかったんですね」

『家族や仲間に心配をかけぬようにな』

「えーと……善処します。それで二つ目はなんですか?」

『莫大な魔力を発する大霊湖(だいれいこ)は、こちらから干渉するのは難しく相応の備えを必要とする場所なのだ』

「それじゃあ僕が世界樹の杖(ユグドラシルロッド)を触ってこの世界に来た事や、この世界がブレてからあなたの声が聞こえたのは……」

『わしが世界樹の杖(ユグドラシルロッド)を通じてヤートをこの世界に呼んだためと、この世界に呼んだ後でも大霊湖(だいれいこ)の発する莫大な魔力の影響を最小限に抑えるために調整する必要があったからだ。その世界樹の杖(ユグドラシルロッド)は良いものゆえ大切にすると良いだろう』

「もちろんです。世界樹の杖(ユグドラシルロッド)がなかったら、もしかしたら僕は今ここにいなかったかもしれませんからね」

『それでは直接その言葉を伝えてやれ』


 声がそう言うと僕のすぐ目の前がピカッと緑色に光り、光がおさまると現実世界の若木状態じゃない杖の形の世界樹の杖(ユグドラシルロッド)が浮いていた。現れた世界樹の杖(ユグドラシルロッド)は僕の方へと浮かんだまま近づいてくるので、僕は現実世界と同じように手を伸ばして世界樹の杖(ユグドラシルロッド)に触れる。


『ヤット、カエッテキタ』


 世界樹の杖(ユグドラシルロッド)の声はディグリに似ていて、ディグリを幼くした感じだ。魔力の気配が似てるんだから当たり前と言えば当たり前だね。いろいろ聞きたい事はあるけど、まずは精一杯の感謝を言おう。


「魔石との戦いで魔法の手助けしてくれてありがとう。あの規模の魔法は僕だけじゃ絶対に無理だったから本当に助かったよ」

『ハジメテダッタケド、ウマクデキテタ?』

「うん、大丈夫だったよ」

『デモ……倒レタ』

「それは僕の身体の方の問題で、お前のせいじゃない」

『ソンナコト……ナイ』


 世界樹の杖(ユグドラシルロッド)は僕が倒れた事を気にしていた。やっぱり世界樹の杖(ユグドラシルロッド)も優しい奴だ。欠色(けっしょく)の自分を卑下するわけじゃないけど、僕の頭には瑞々しい若木の状態になった世界樹の杖(ユグドラシルロッド)の姿が浮かんでいる。


「……もしかしたら欠色(けっしょく)の僕だと、これ以上お前の力を引き出せないかもしれない。それにお前は元々は世界樹の一部だから植物の姿でいるのが正しいのかもしれない。できればこれからも力を貸してもらいたいから、いっしょに来てほしいけど、もし杖じゃなくて樹木に戻りたいなら『イッショニイク』……良いの?」

『ウン、イッショニイタイ』

「……ありがとう」


 僕がお礼を言うと世界樹の杖(ユグドラシルロッド)は緑色の光を放ち杖の先端から蛇のように動き僕の腰に巻きついていく。……世界樹の杖(ユグドラシルロッド)が成長してるから前よりも重いけど、それでも腰に重みを感じるいつもの状態になったからしっくりくる。


 せっかくいっしょに来てくれるんだ。世界樹の杖(ユグドラシルロッド)の使い手として恥じないように、これからも成長していこう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


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