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青の村にて 助け合いの気持ちと抜けがけ

 あれから一日が経って眠っていた兄さんと姉さんが目を覚ました。正直なところ、僕は兄さんと姉さんの無意識にへばりついていたあいつを排除するために大量の魔力を使ったから、もしかしたら二人の身体に何か影響が出ているかもしれないって気が気じゃなかった。


「「…………」」

「兄さん、姉さん、身体の調子はどう? どこか違和感ある?」

「「ヤート!!」」


 兄さんと姉さんが突然大声で僕の名前を叫んでからガバッと起き上がり頭を下げてくる。僕も急に動く事があるけど、近くにいる人が何の脈絡もなくわけの分からない動きをしたらこんな気持ちになるのか。あとでラカムタさん達に謝っておこうって思うけど、今は兄さんと姉さんだね。


「急に二人ともどうしたの?」

「迷惑掛けちまったから……」

「私もそうね……」


 兄さんと姉さんが弱々しく言ってきた。……はあ。僕はため息ついてから兄さんと姉さんの頭に手刀を落とす。うん、ベシッて音がしたから、そこそこ良い打撃になったかな。兄さんと姉さんは頭を押さえて僕に困惑した顔を向けてくる。……これははっきり言った方が良さそうだね。


「兄さんと姉さんは前に、弟を助けるのは兄と姉の当たり前の役目だって言ってくれたよね?」

「お、おう……」

「……そうね」

「だったら弟が兄と姉を助けるのも当たり前の事でしょ? 僕は特に迷惑とか思ってないから気にしないで」

「「…………」」


 兄さんと姉さんが嬉しいような気恥ずかしそうな照れてるような複雑な顔になった。なんか話が進まないから確認作業に入る。


「さっきの質問に戻るけど、身体に違和感とかある?」

「……ちょっと待て」

「今確認するわ」


 二人が身体の各部を曲げたり伸ばしたりする。……うーん、あとで僕の同調でも確認するけど、見てる分には異常は無さそうだね。


「俺は問題ないな」

「私も自分で確認できる範囲は健康体だと思うわ」

「一応、同調で確認させてもらうよ。そのまま力抜いて立ってて」


 兄さんと姉さんの肩に触れて同調する。……うん、二人とも問題ない。これなら食事もすぐにできそうだ。


「兄さんと姉さんに話を聞きたいところだけど、やっとみんなの緊張が解けたから一休みがてら食事にしよう」

「そうですね。すぐに用意させましょう。イリュキン、ハインネルフにこちらの問題が解決した事と、報告会を兼ねた食事会の準備をするよう伝えてください」

「わかりました。準備ができたら私が呼びに来るから、それまでヤート君達は休んでいてくれ」


 イリュキンがさわやかに笑って部屋から出て行くのを見送った後、兄さんが僕の肩を抱いてきたり姉さんが僕の背中越しに抱きついてきたりした。こういう触れ合いも、みんなが健康だからできる事だなって改めて思う。




 少ししてイリュキンが戻ってきた。どうやらちょうど食事時と重なってたみたいで、僕達の分の食事も用意されているらしい。兄さんと姉さんのお腹からググ~っていう音も聞こえてきたから、僕達はサッと移動して広場で食事を始める。食事をしながら僕が兄さんと姉さんの異常を治す過程を話したり、他のところの報告を聞いていると、二人が異常の原因について何かを思い出したみたい。


「そういや青の村の広場から初めて大霊湖(だいれいこ)を見た時に、何かチカチカ光るものを見た気がするな。マイネはどうだ?」

「……ああ、言われて思い出したわ。記憶はぼやけてるけど、湖底の方で光ってたはずよ」

「そうだそうだ。あの光はなんだったんだろうな?」


 兄さんと姉さんの言葉を聞いてラカムタさんとリンリーが怪訝(けげん)な顔をした。


「俺はそんなもの見てないぞ」

「私もです」

「……青の方で二人の言っているものを見た奴はいるか?」


 ラカムタさんの問いかけに、青のみんなはお互いに顔を見合ったり聞いたりして心当たりを探ってるようだけど、この様子だといないみたいだな。……それにしてもチカチカする光か。


「用心しておこう……」

「ヤート、何か言ったか?」


 僕のつぶやきにラカムタさんが反応してきたけど、今のところ僕の予想でしかないから伝えない方が混乱させない気がする。それにあとで僕が異常の原因を倒せば済む話だからごまかそう。


「やっと少しは手がかりが出てきたなって」

「そうだな。……ところでヤート、一つ聞いておきたい事があるんだが」

「何? ラカムタさん」

「お前、まさかとは思うが、異常の原因を自分一人で見つけて倒そうとか思ってないよな?」


 僕が考えていた事をラカムタさんに当てられた。基本無表情な僕の考えが何でわかったんだろ? ……って、しまった。直球で当てられて思わず黙ったら肯定してるのと変わらない。何とか話を変えようとしたら、ラカムタさんにガシッと肩をつかまれる。


「ヤート、抜けがけは無しだ。俺も連れて行け。今まであった異常を引き起こした奴には、かなりイラついてるからぶっ飛ばしたい。わかったな?」


 僕はラカムタさんのギラギラしてる目を見て、これはごまかせないって判断した。


「……わかった。もう少し兄さんと姉さんの調子を見てから、青の村を抜け出そう」

「了解だ。周りにバレないようにな」

「もちろん」


 僕とラカムタさんは周りから不自然にならないように食事に戻る。当初の予定だと僕一人で行くのが、ラカムタさんとになった。まあ、経験豊富なラカムタさんなら、どんな相手でも大丈夫か。


「ラカムタ殿、それこそ抜けがけというものですな」


 僕達の会話は、話し合いと食事に集中しているみんなのざわめきに紛れて聞かれてないはずだったけど甘かったな。僕とラカムタさんの後ろにはタキタさんが立っていた。


「わしらも行くので」

「……わしら?」

「あれを」


 タキタさんが指差す方を見たら、ハインネルフさんとイーリリスさんが僕達の方を見ていた。……うん、これも誤魔化すのも断るのも無理だね。実力者がそろったって前向きに考えよう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


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