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青の村への旅にて 三体の警戒心と青の変化

 タキタさんとの戦いの後始末が終わり再び青の村へと進み始めてしばらくした後、僕が破壊猪(ハンマーボア)の背中の上でディグリに治療してもらった左掌を同調で確認しているとディグリが話しかけてきた。


「左掌ノ状態ハ、ドウデスカ?」

「うん、完治してる。良い感じだよ。ディグリ、ありがとう」

「初メテデ少シダケ不安ガアリマシタガ、完治サセル事ガデキテ良カッタデス」

「ディグリの身体が植物なのは知ってるけど、治療に使える薬草まで身体の中で生み出せるのは正直驚いた」

「大河ノ水ノ魔力デ成長デキタカラデス」

「ああ、あれか。確かにすごく成長してたね」

「ハイ」

「そんなわけだから僕は大丈夫だよ。タキタさん」

「おや、バレてしまいましたか」

「クッ……、マタシテモ」

「……ガ」

「……ブオ」


 僕が呼びかけると僕達から四歩離れたところに立っていたタキタさんが少し驚いた声をあげて、三体はタキタさんが近くにいた事に少しイラッとした声を出した。


「はっきりとタキタさんがいるのがわかってたわけじゃないよ。なんとなくタキタさんがそばにいそうだから言ってみただけ」

「これは一本取られましたね」

「たぶんタキタさんが本気になったらわからないよ」

「次からは心してかかるとしましょう」

「それはそれとして気配を消して近づいてくる必要あるの?」

「何、年寄りの楽しみという奴です」

「そういうものなんだ」

「そういうものです」

「……フン」

「「……」」


 どうやら三体は感覚をかいくぐって近くに来られたのが悔しいみたいで、タキタさんに対して警戒心むき出しの完全な戦闘態勢になっていた。でも、タキタさんは三体の鋭い視線や威圧を受けても平気な様子で微笑んでいる。


 確かにタキタさんの底知れなさを考えたら一体ずつと戦っても、三体と同時に戦っても負けるところが想像できないから三体の近くで微笑むのもわかるけど、ちょっと正気を疑う。……まあ、僕が言える事じゃないからタキタさんに要件を聞こう。


「それでタキタさん、何かあったの?」

「青の村に到着する日がおおよそ定まったのでお伝えに来たのと、それに乗じて避難してきました」

「避難? 避難ってな……、いや、先に日程を聞かせて」

「このまま順調に行けば二日後には到着できそうです」

「もうそこまで来てたんだ。青の村って赤の村より黒の村に近いんだね」

「そう感じるのは地形が平坦なところが多いので距離を稼ぎやすいためですね。直線距離で言えば黒の村から青の村も赤の村もそれほど変わりませんよ」

「そういえば赤の村に行く時は高い崖とか幅のある谷越えとかがあった。あの時は兄さんと姉さんに谷越えで投げられたな」

「谷越えで投げられた……?」

「ああ、気にしないで、ちょっとした兄さんと姉さんの遊びみたいなものに付き合ってただけだから」

「はあ……」

「ところで、さっき言ってた避難っていうのは何の事?」

「……」


 僕が気になった事を聞くとタキタさんが黙り苦笑した。何か予想外の事が起こったのかな?


「ヤート殿と戦った後に他の水守(みずもり)達が……」

「うん」

「わしに矢継ぎ早に質問をしてくるようになりまして、その勢いに押され避難してきました」

「タキタさんは水守(みずもり)のまとめ役だから、いろいろ聞かれる立場じゃないの?」

「そうなのですが水守(みずもり)達は、わしがいなくても役目を果たせる優秀なもの達なので、わしは基本的にそばで見守るだけだったのです」

「タキタさんが何かを教えたりしなかったって事?」

「はい、わしは新人の教育なんかには関わっていませんでした」


 そういえばイリュキンがタキタさんの事を、よくわからなくて底知れない存在って言ってたね。もし、イリュキンが言ってたって事を他の水守(みずもり)達も同じ考えていたら単純に近くにいるけど遠い存在に感じて話しかけづらかったのかも。


「それでも聞かれるようになったんだ」

「はい、ヤート殿のおかげです」

「僕?」

「ヤート殿の戦い方や、わしが戦っているのを見て大いに刺激を受けたようです」

「良かったね」

「そうなんですが、やはり一気に聞かれるのは慣れないので逃げてしまいました。我ながら情けない限りです」

「突然環境が変わったら誰だって戸惑うよ。でもタキタさんなら、もう大丈夫でしょ?」

「……わかりますか?」

「ちょっと口が笑ってる」

「おやおや、そうですか」


 僕に言われてタキタさんが自分の口元に手を当てて確かめてる。タキタさんぐらい経験豊富な人でも自覚できない事あるんだね。


「タキタさん、大変そうだけど頑張って」

「ありがとうございます」

「あのタキタさんを見る水守(みずもり)の人達のギラギラした目から、やる気が伝わってくるよ」

「ええ、あのもの達にも心してかからなければなりません。それでは失礼します」

「うん」


 戻っていくタキタさんの嬉しそうな背中と軽い足取りを見ながら、僕とタキタさんが話してる間中ずっと警戒心むき出しでピリピリしてた三体を落ち着かせる。さすがに三体も襲いかからないと思うけど、どうなる事やらって感じだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。


感想・評価・レビューなどもお待ちしています。

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