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兄、登場

今回つっこみまくりの主人公

今日はまったく最高の一日だった。

金曜日は私の大好きな曜日である。

嫌いな体育も数学もないし、毎週楽しみにしているドラマがある。そしてなんといっても喫茶店が平和(槇原がいないから静か)だ。

さらにさらに今日は学校で槇原を一度たりとも見かけなかったので、こそこそと逃げ惑う(地味に疲れる)ことをしなくて済んだ!

よって、私はなんとも最高に機嫌がいいのだ。


小粋に鼻歌を奏でながら、おじいさんと一緒に店を閉めて我が家へと向かう。

さーて昨日からじっくり煮込んで寝かせてあるカレーを食べよう。

さぞ美味しいのでしょうな。実に楽しみだ。

上機嫌でリビングの扉を開ける。


……色々とありえない光景が広がっていた。


「あ、ナツせんぱーい!おかえりなさーい」


ありえないその①。

槇原が家の中にいる。


ありえないその②。

めったに家にいない兄が、槇原とテーブルをはさんで座っている。


そしてありえないその③!

ふたりでカレー食ってる!

え、それ昨日から煮込んで楽しみにしていた、これから私の胃に収まるはずのカレーだよね!?なに食ってんの!なに勝手に食ってんの!


はる……と、マキくんじゃないか。どうしたんだい。めずらしい」


おじいさん。

めずらしいとかいうレベルじゃないからコレ。

確かに兄が家にいるのはめずらしいけども。

槙原に関しては突っ込むべきでしょう。


「二人は知り合いだったのかい?」

「「いや、初対面」」


おい!

なんで初対面の二人が仲良くカレー食ってんだよ!


「なんかコイツ怪しかったから、これから尋問しようと思ってたとこ」


おーい!

尋問って!しかもそんな奴にまずメシを食わすな!


「槇原。あんた怪しい行動って何してたわけ?」

「えー別に怪しいことなんてしてませんよぅ。家の前で待ち伏せしてただけです」

「じゅうぶん怪しい」

「失礼な!ナツ先輩にお願いがあって待ってただけです」


……お願いだと?

聞きたくねー。絶対かなえてやりたくない。


「あのですね英語教えてください。月曜にテストがあって、赤点とったら1週間補習になっちゃうんです」

「え、やだ」

「即答しないでくださいよ!言っておきますけど、俺が補習になって困るのはナツ先輩のほうですからね。俺バイト来れなくなっちゃうんですよ」


ちっとも困りませんが。むしろ願ったり叶ったりって感じですが。

ていうかなぜ上から目線なんだコイツは。


「奈津、勉強ぐらい見てあげたらいいじゃないか」


おじいさん。

きっとあなたは売上的な事を考えているのでしょうが、私は嫌です。


「……コイツ、何者?」


急になんだ、兄よ。

いまさらだし思いっきり話の途中でしょうが。


「彼は槇原工くん。喫茶店のバイトをしてくれてる子だよ。それで、こっちが奈津の兄で春。マキ君は奈津と同じ学校だから春の後輩でもあるね。」

「3年のハルさん!ナツ先輩のお兄さんだったんですか?はじめまして~」


槇原よ、にこにこ挨拶をしているけども。

君はもう少しでこの人に尋問をされるところであったのだよ。


「マキ君、春のこと知ってるのかい?」

「めったに学校来ないけどハルさん有名ですもん。かっこいいってクラスの女子が騒いでました」


そう、実は我が兄もまぶしい人種なのである。

どちらかというと女っぽい顔立ちで華奢なタイプだが、地味に筋肉ついてたり背が高いので立派なイケメンに属している。

基本的に無表情(実はぼんやりしているだけ)なところや、黒髪なうえに黒づくめの服装を好んで着ているあたりが神秘的に見えるようで、イケメンぷりに拍車をかけているようだ。

余談だが、そんな兄は何をかくそう不良である。

私としてはこんな意味不明なぼんやり男が不良だなんてやってけねーだろと思うのだが、一応そういう仲間とつるんでいるから不良の括りに入れている。

ていうか学校めったに行かないくせに、噂になってるってどういうことだよ。かっこいいと噂のハルさんと私が兄妹だなんて、絶対にバレないようにしなければ。


「こいつ電柱に隠れてこそこそしてたから、ナツのストーカーだと思ってた」


よくストーカーだと思った奴を家の中へ入れたな。


「あんた、なにも電柱でコソコソしなくても……」

「だってナツ先輩、逃げるじゃないですか」


うぅ。

否定できない。


「無理やり家の中に押し入ってやろうと思って待ち伏せしてました。」


おじいさん、目を覚ましてください。

彼は立派なストーカー候補生ですよ。

被害者である私が、何故勉強なんぞ見てやらにゃいかんのですか。

そう訴えようとしたものの、おじいさんは既にいなくなっていた。


「……兄ちゃん、おじいさんは?」

「風呂」

「くそぅ、言い逃げか……。しょうがない、ただし1時間だけだかんね。9時から見たいドラマあるんだから!」

「わーい!ナツ先輩の部屋楽しみ〜!」


はぁ、最後の最後でどんでん返しをくらってしまった。

せっかくいい一日だったと思ったのにな……ちぇ。

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