おびやかされる学校生活
クラスメイトには敬語な主人公。
地味ライフにおいて大事なこと。
遅刻などという目立つ行為は行わないのが鉄板である。
なので遅刻するかもなどというスリルとは無縁でいられるように、常々余裕をもって登校するようにしている。
「安藤さん、おはよ」
いつものように少し早めに登校した私を、前の席の高橋さんが待ち構えていた。
いつも挨拶をかわす仲だけれども、今日は体を後ろに向けている。つまり私と話す気まんまん体勢をとっている。さらには、その表情がなぜかにやついている。
「おはようございます……どうかしました?」
私が席に座るやいなや、高橋さんは身をのりだしてきた。
「安藤さんって槇原くんと仲いいの?」
「イイエまったくですが」
なんだって!?
目ん玉が飛び出るほどの衝撃を感じたが、私はかろうじて表情を崩さずにいることに成功した。自分ナイス。
「え~、じゃあなんでだろ?」
「……何の話ですか?」
「昨日安藤さんが帰った後に槇原くんが来てさぁ、安藤さんのこと迎えにきたって。だから仲いいんだ~って思ったんだけど……」
「人違いではナイデショウカ。私はそんな人シリマセン。まったく知りませんが」
「でも何回か来てるみたいだけど。クラスの子も何人か話しかけられたって騒いでたし」
あいつ……そんなことしてやがったのか!
学校でそんなことしたら私まで目立っちまうだろうがぁ!
「おまえ槇原と仲いいの?俺に紹介してくんね?」
急に話に割り込まれたので、声の主を見ると隣の席の山中君が登校なさったようだ。
「山中おはよ〜」
「おいーす。つか高橋足とじろよ。パンツ見えてんぞ」
「朝からサカるのやめてくんない?」
高橋さんに何か言いたそうな表情をしつつも、はあっとため息をついて話を終わらせました。そう、山中くんはやられキャラなのだ。
そんな彼は今のはなかったかのように再び私へと向き直ると、不思議そうに眉をしかめた。
「……なぜ、俺をそんな目で見る」
「山中君がBLだということを、さらっと告白したことに驚いています」
「はあ!?ちっげーよ、なんでだよ!んなこと告白した覚えねーよ!」
「さっき槇原くん紹介してくれって言ったから、好きだと思ったんじゃない?」
高橋さんのアシストにうなづきながら、私はあわてふためく山中君を生ぬるい目で見つめます。
「ばっか、お前!そういう意味じゃねーよ!サッカー部に勧誘するためだよ!」
なんだ。そうでしたか。
ちっ。つまらん。
「すみませんが私と槇原工とやらは、全くの無関係の赤の他人なので紹介することはできません。ちなみに彼が探しているのは、どこかのクラスの同性同名の女子ではないかと思います。クラスを間違えるなんてバカな奴ですね、まったく」
私はこれでシラをきりとおします。
そして学校では奴の視界に入らないように、より一層注意深く行動しようと心に決めた。