ここ最近の不満
初投稿です。
軽い気持ちで読んで頂けるとうれしいです。
自分で言うのもなんだけれど、私は地味女である。
肩より短い黒髪をちょこんと両サイドにみつあみにして、制服のスカート丈はいたって普通。いや、現代の女子高生にしては長いほうだ。
特に親しい友人もなく、基本的にいつも一人行動をしている。
かといって、特にいじめられているわけではない。私のクラスは実にのんきな人たちばかりで、普通に話もするし挨拶だってかわす仲だ。
ただ特別に仲がいい人がいないだけ。
ちなみに私はそんな生活を、とーーっても満喫している。
私は目立つこと・面倒くさいことがなにより嫌いだ。地味で友達がいない今の生活はとってもラクですごく最高。
そんな私の生活は単調である。部活も委員会も所属していないので、学校が終われば徒歩10分の場所にある家へとまっすぐ直帰する。
そして家の隣にある「セボンヌ安藤」という名の喫茶店への扉をあける。
「おじいさんただいま」
「奈津おかえり」
コーヒー豆を挽いている香りをかぎながら、私は制服のジャケットを裏部屋へ放り投げエプロンを身につけた。
毎日、私のおじいさんが経営している喫茶店を手伝っているのだ(ちゃんと給料はもらう)。
「今日、一人もお客さんいないね」
「そろそろ混みだすんじゃないかな」
おいおい、おじいさん。
意味深な発言じゃないですか。
そう思った矢先のことだ。
喫茶店の扉がバーンと勢いよく開け放たれた。
「ナツ先輩!ひどいじゃないですか!なんでいっつもいっつも先に帰っちゃうんですか!今日俺バイトだって知ってるでしょ!?」
出たな。私の平穏を乱す不埒な輩め。
こいつの名前は槇原工。私の学校の後輩だ。
「知らないけど。あんたのシフトなんて」
「店長!ナツ先輩の部屋にシフト置いといてって言ったじゃないですか」
「ごめん、コピー機の使い方わからなくて」
おい、おじいさんを使うんじゃない。
「もうっ!じゃあ今から言うから覚えてください。今月は月・火・木・土なんで、月・火・木は一緒に帰りましょうね」
「いらないけど、その情報」
槇原の後ろをついてきたお嬢さんがたが思いっきりメモとってる。
いやー、今日もたくさんのお客様が槇原目当てにおいでなすったようで。
おじいさんは大喜びだけど(売上的に)、私としてはうんざりだ。
だって槇原目当てのお客さんって若い女の子ばっかりで、黄色い声がそこらじゅうにあふれるんだもん。うるさくてしょうがない。
栗色のさらさらな髪に、すらりとした細身の体。ぱちっとした大きな瞳にシャープな小顔。そんでもって人懐っこい爽やかな性格。
100人中100人が認める、嫌みのないイケメン野郎だ。槇原がバイトの日には若いお嬢さん方で埋め尽くされることになる。
ハッキリ言って私はこんなまぶしい生き物とは関わりたくないんです。人目も気にせず堂々と話しかけられると目立ってしょうがないんですよ。
しかも、よりによってこいつ人懐っこさ120%なんだよな。こんな地味女放っといてほしいんだけど……。
「ナツ先輩、ぼーっとしてないで仕事してください」
いつのまにやら仕事モードへ突入していた槇原に叱られた。ちくしょう。
ついでに、おしゃれ度0%の真っ白エプロンを着こなすその感じにすら「ちくしょう」と言いたい。
「あんたが全部注文とりな」
「ひどっ」
「うっさい」
お嬢さん方の注文を私がとったら、恨まれるっての。決して叱られた腹いせではないのであしからず。
「おじいさん、やっぱりあいつクビにしようよ」
「マキ君、いい子じゃないか」
はあ。
この様子じゃ当分縁切れそうにもないな……。