第5シャッター
なかなか展開しないな
『あのさー、それってさー・・・・』
『今日はどこ行こうかー・・・・』
『だからー、彼女暇でしょー・・・・』
ガイガイガヤガヤうるさい奴らが集まる此処、駅前広場。
私は、時計台に背を寄りかけて、
ある人物を待っている。
「後10分かぁー・・・」
現在の時間は午前10時20分。
今日はその人物と、ある『イベント』に参加する為に待ち合わせをした。
『ピピピ、ピピピ、ピピピ』
「ぅ・・・」
とあるマンション。
その最上階の一室。
電子的な目覚まし音に、
ベッドからムクリと身体を起こす、
一人の人物。
彼の名は、片守桐也。この街の私立高校に通う、
普通の高校二年生だ。
ある二つの事を抜けば・・・。
「桐也君・・・?」
不意にベッドの中から声が聞こえ、
桐也は目覚ましからベッドに視線を移せば、
視線の先、ベッドの中から、
金髪の美女が現れた。
「おはよう、桐也君」
「奈美さん・・・」
奈美と呼ばれた美女は、
モゾモゾとベッドから身体を出して、
桐也の唇に自身の唇を重ねた。
「えへへへ、おはようのキス。
美味しい?」
唇を離した彼女は、
少し首を傾げる仕種をしながら、
桐也に問い掛ける。
だが、
桐也の顔は、
酷くつまらなそうに歪ませている。
「どうしたの桐也君?」
そんな桐也の顔を見た奈美は、
下から見上げる様に、
上目遣いで桐也に問う。
その仕種は、
可憐でもあり、妖艶さも含まれているが、
桐也はポリポリと、頭を掻きながら、
こう言い放った。
「悪い、奈美さん。
帰ってくんない?
んで、二度と俺のとこに来ないで」
「ゆーちゃーんっ!!」
待ち合わせ時間5分前。
駅の改札から手をブンブンと振り、
私の名前を呼びながら、
浅松歩、
通称『あーちゃん』がやって来た。
ていうか、声デカイ。
恥ずかしいだろうが・・・。
「ごめーんっ!、待ったっ!?」
くりくりの眼をちょっと伏せて、
上目遣いがちに、私に尋ねるあーちゃんは、正直可愛い。
でも、声デカイ・・・
「いや、別に時間には間に合ってるから良いんだけど・・・、
ただ、声がデカイよ・・・」
『バタン・・・』
先程の桐也宅。
奈美は桐也に言われたとおり、
桐也宅を出て行った。
そんな奈美を、
桐也は見送りさえもせず、
冷蔵庫からペットボトルの
ミネラルウォーターを取り出し、
静かに傾け、喉を鳴らしている。
「ん、ふぅ・・・」
ミネラルウォーターを微かに飲んだ桐也は、ハンガーに掛けてある
真っ黒なパーカーを取り、
それを着込んで、机の上の『ある物』を
手に、出掛けて行った。
あーちゃんと合流してから約10分。
私達は、とある『会場』にやって来た。
そこには、
女の子達がわんさか居て、
何故かその目は、血走っている。
何故か。
いや、隠すのは止めよう。
直視したくはないが、
認めなければならない。
現に私は、
今、この場に立っているのだから・・・。
此処、
フハライストアは、
ある雑誌、グッズを扱っている、
知る人ぞ知る、有名店なのだ。
そして、その雑誌、グッズとは・・・・
『開店ですっ!!』
どデカイ、スピーカーから大音量の声が響いたかと思うと、
今度は先程の女の子達が
ワーキャーワーキャー言いながら、
それらを奪い合っていた。
「あーっ!!
了さんと悠君がこんなに激しくっ!!」
「響さんのアンクレットは私のよっ!!」
「ゆ、結城君がっ
結城君がっっ
結城君がーっ!!
ゆ、ゆ、ユーニバースっ!!」
嗚呼、
趣味とは恐ろしきや。
嗚呼、
欲望とは恐ろしきや。
此処、
『フハライストア』の、
本当の読み方を教えよう。
『腐派来店』
『腐』った『派』閥の人達が、
『来』る『店』。
腐派来店っっ!
もといっ
フハライストアっっ!!
「ふぉぉっっ!!
皆、何時もより気合いが入ってるねっ!
ゆーちゃんっ
今日は何時もより気合い入れて行くわよっ!!」
「・・・・・帰りたい」
『カシャ・・・、
カシャ、カシャ・・・』
所変わって桐也宅、
もとい、堂守マンション屋上。
カメラのシャッターを切る音が響く。
桐也は、自身の部屋から出、
マンション屋上に侵入していた。
先程手に取った物は、
桐也愛用、LUMIXのデジタル一眼、
『GH2』。
桐也は小学校時代から、
父親の影響でカメラを手にして来た。
父親の指導のもとで、
桐也は幼いながらも、
一度だけ写真展をした事がある。
だが、ある日を境に
桐也はぱったりと写真が撮れなくなった。
それ以来、
彼の性格は大きく変わり、
女性に対して、期待しなくなり、
付き合う事は無くなった。
「あ・・・」
シャッターを切る、
桐也の指が唐突に止まったと同時に、
ポツリポツリと、空から雨が降って来た。
「今日はフラれたか・・・」
桐也はボソリ呟けば、
カメラを下ろし、自室へ戻って行った。
「いやーっ、
フハライストアはやっぱり良いねーっっ!!」
「ソダネ・・・」
「あの量っ!
そして質っ!!」
「ソダネ・・・」
「あーーーっっ!
やっぱりBLはイイっっ!!」
「んな事大声で叫ぶなーっっ!!」
私達は、
フハライストアでの『戦』の後、
一般のっ!
カフェにいる。
二人とも同じくカプチーノ&アイスセットを注文した後、
あーちゃんは『戦利品』とやらを包みから取り出し、
大声でその気持ちを叫んだ。
だから私は頭を叩いて、
あーちゃんを沈めた。←
まぁ、あーちゃんは不死身スキルとやらを持ってるらしく、
簡単な事では死なない様だ。←←
「いやー、だって久しぶりのBLだったから」
たはは、と笑うあーちゃんの後ろには、
後光が射している様で、
眩しい位に可愛い。
ただ、
彼女は極度のBL好きなのが欠点だ。
普通に過ごしていれば、
可愛くて、性格も良くて、
ていうか、モテる。
ただ、
彼女と付き合った男達は、
彼女の趣味を知れば、去って行く。
なんでも、
彼女は最終的に、
そ、その、
ディ、ディ〇ドーという器具で、
男の人の後ろを襲うと聞いた事が・・・。
「はぁ、あーちゃん普通にしてれば、
スッゴク可愛いのに・・・」
「ははっ、その言葉そのまま返すよ。
ゆーちゃんだって、
その性格変えればめちゃくちゃ可愛いのにー。
機会があれば襲いたいなぁ・・・」
「あーちゃんや、
何やら危ないワードが聞こえたんですが?」
「あはは、
本気だからー♪
心配しないで?☆」
「普通は冗談でしょーっっ!!
全く!
あーちゃんは危ないんだから・・・」
「まぁまぁ、
気にしない気にしない、ね?」
「ふん・・・」
「あらら・・・。
あ、
ゆーちゃん、これあげるから気にしないで?」
私がふい、とそっぽ向くと、
あーちゃんはウェイターさんが持って来た、
アイスジェラートをスプーンで掬い、
私の口元に運んで来た。
「ほい、
ゆーちゃーん、あーん」
「むぅ・・・、あーん」
やはり
甘い物の誘惑には勝てません・・・。
「ああっ
ゆーちゃん可愛い・・・っ
可愛いーよ、ゆーちゃんっ
やっぱり襲いたいっ」
「だから危ない発言すんなっ」
『ギシッ』
再び戻って桐也宅。
そこでは、ベッドの上で、
桐也とまた新しい美人が、
事情を行っていた。
「ん、あ・・・っ
桐也君・・・、そこ・・・」
「っ・・・、
はぁ、つーか、喋んないでって・・・」
美人は桐也との事情に喜んでいるようだが、
桐谷はうんざりしているようだ。
「桐っ、也君・・・っ
気持ちいい・・・?」
「いや、良いわけないじゃん・・・」
「なんっ、で・・・?」
「実佐さんが勝手にシて来たんじゃん。
しかも、
シないと帰んないとか言い出すし・・・」
そう、実はこの実佐とか言う女は、
いきなり桐也宅に訪れたかと思うと、
桐也に上記の事を言い出したのだ。
「だから・・・っ、さっさとイッてよ」
溜め息を吐いたと同時に、
実佐の耳元で囁き、
更に、自身のアレを、
実佐の奥まで突き入れた。
「アッ、ああああ・・・っ」
「じゃ、また来るよん☆」
「2度と来んな、
このエロ女・・・」
チュ、と、
ふざけて投げキスを一つ、
桐也にして、実佐は帰って行ったが、
桐也はそんな実佐に対して、
そんな事を言っていた。
『バタンッ』
玄関のドアを閉めた桐也は、
部屋に戻り、ベッドに倒れ込んだ。
「はぁ・・・
友達、か」
桐也は昨日、由奈に友達の事を、
話していたのだが、
それが気になってるようだ。
「セフレは友達じゃないよな・・・」
ポツリ呟けば、
桐也はケータイに手を伸ばし、
手慣れた手つきで、
電話を掛け始めた。
『もしもし?
桐也からなんて珍しいね』
数回のコールの後、
相手が電話に出た。
「海・・・」
桐也の電話の相手は、
大原海。
海と書いて、『かい』と読む。
桐也は海の名前を呼ぶと、
少し黙り込む。
『きーりや?』
電話越しの海の声に、桐也は、
その重たい唇を動かした。
「友達って、なんなんだろうな・・・」
『ああ、そゆことね・・・。
またヤられちゃったんだ?』
桐也の言葉に、
海は呆れた様な、同情する様な、
そして、慰める様な口ぶりで問う。
「ああ・・・。あいつらっ
人をダッチワイフみたいに扱いやがってっ」
『いやいや、
桐也は男の子じゃん。
性別違うし』
「同じ様なもんだよっ
クソっ」
桐也は手元にあった枕を取り、
勢いよく、壁に投げ付けた。
『はぁ、さっきの答えだけどね?』
桐也の息が落ち着くまで待つと、
海は、話し始めた。
『友達なんて、どうでも良いよ。
特に桐也はね。
桐也はただでさえ人付き合いが苦手なのに、
無理して友達を欲しなくて良いんだよ』
「だけど
友達一人もいないのはダメだろ?」
『ふふ、とりあえず、
お酒持って来てくれて、
一緒に呑んでくれて、
更に、
八つ当たりした枕を直してくれる・・・。
そんな親友が三人もいるんだから、
贅沢言わないの』
「海・・・」
『桐也は『ほろよい』で良いよね?
他の二人はビールが良いって言ってるけどね、ふふ』
「海、俺・・・」
『その先は聞かないよ、桐也。
ま、今から行くから、
やらしい臭いの部屋、換気しときなよ?
二人がめちゃくちゃキレるからさ』
「ああ、ありがとう・・・」
『んじゃ、また後でね』
桐也はケータイをベッドに置くと、
おもむろに立ち上がり、
キッチンへと向かった。
そして、
こう呟いた。
「『つまみ』作ってやんねぇとな」