金くれ老婆との遭遇
「1000円貸してくんない」
歩いていると、いきなり声をかけられた。
声のほうを見ると、顔中あばただらけの老婆が座っていた。
「お金は無いです」
私は本当に一銭も持っていなかった。
「そんな・・・」
「とりあえず図書館に行きましょう。ここじゃ蒸し暑いですから」
その日はかんかん照りで、蒸し暑かった。
「図書館なら貸してもらえるかな」
老婆は横に並んでついて来た。
元々図書館へ行くつもりだったので、連れ立って歩いた。
「貸してくんないと帰れない」
と、老婆は言う。
「電車でないと帰れないんですか」
と問うと、
「お腹が減ったから、食べ物を買いたい」
と言った。
私は心の中で
「食べ物に1000円もかからないだろう。これは怪しい」と思った。
「500円でいいから貸してくんない」
「お金ないので」
「100円でいいからさ」
「私、本当に持ってないんです」
私は、ノートと水筒のみが入った鞄の中を見せ、飛び跳ねてみせた。
「疲れたから、あたしここで待ってるわ。1000円借りてきて」
なんという他力本願。ちょっと腹が立った。
「ご自分で借りに行けばいいじゃないですか」
私はそう言い捨てて、図書館へ向かう。
図書館で、お金は借りなかった。
自分の用事を済ませる間、作戦を練った。
図書館へついてこなかったのは、やはり怪しい。
通報されると思ったのだろうか。
食べ物なら、老婆のいた近くのお店で試食が出ていた。
それを食べるよう、老婆に提案しよう。
怪しいとはいえ、暑い中外で待つ老婆が心配だったので、五分で済ませて図書館を出た。
しかし老婆はいなくなっていた。
「新手の詐欺か。それとも誰かに恵んでもらったのか」