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前兆

 元来記憶力の良いツェルリアは一度通った道は忘れない。そのため案内がなくとも宛がわれた部屋に帰ることができた。

 シュリは前回のように泣き崩れてはいなかったものの無事に戻ってきたツェルリアにあからさまな安堵の表情を見せた。しかしその直後心配そうな表情に戻る。

「ツェルリア様、お顔が真っ赤ですッ!」


「・・・・・え?」


 ツェルリアが自分の頬に手を当てると確かに熱い。

「風邪をひかれたのでしょうか・・・。とにかくお座りください。気分は悪くありませんか?」

「なんとも、ないわ」

 気分が悪いわけでも、頭が痛いわけでも、だるさや寒気を感じるわけでもない。

 ただ、心臓がいつもより早く強く胸を打っていて体が熱くなるのに嫌にならない。それどころか高揚感のようなものを伴っている。ツェルリアはこの感覚を知っていた。だからこそ、内心酷く混乱していた。


(まさか、ね。きっと久しぶりにあの人の名前を聞いたから思い出してしまっただけ)


 ツェルリアは意識して心を落ち着ける。

「もう大丈夫よ」

「本当ですか?確かに顔色は戻ったようですけど・・・」

「えぇ」

「念のため、今日はもうお休みになられてください」

 過保護なシュリに苦笑が漏れるが言葉に出さない。心配をかけたのは理解していたから。

「わかったわ。おやすみなさい」

「おやすみなさいませ」

 シュリは素直に進言を聞き入れたツェルリアに安心し、寝台に入ったのを確認すると部屋を出た。

 だから日が沈みきってやっとツェルリアが目を閉じたことを知らなかったのだった。

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