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リルヴェアにて

 ツェルリアとシュリは比較的丁重にリルヴェアの王城まで馬車で運ばれ、部屋に通された。

 もちろん窓には鉄格子(てつごうし)がはめられているし、扉も鍵はかかっていないものの外に数名の兵が待機している。

 しかし調度品は粗悪というわけではなく、捕虜の待遇としては破格だろう。


 元々自由な外出など認められていなかったツェルリアにとって特に気になることではなく、シュリと共にいつもどおりの生活を送っていた。

「あら?シュリ、何か聞こえるわ」

「本当ですね。言い争っているようですけど・・・」

 そのとき、扉が少々乱暴に開けられる。


「放しなさい!わたくしを誰だと思っているの。この、無礼者!!」

「・・・エリーナ姉様」

「誰かと思えばツェルリアじゃない。気安く名前を呼ばないでくださる?汚らわしい」


 人一倍自尊心の高いエリーナはリルヴェアの兵に対してあらゆる侮辱をしたのだろう。エリーナを連れてきた者たちは一様に苛立っているようだった。彼らはツェルリアを連れてきた第二部隊だった。


「ツェルリア姫。この方は本当にメイティアの第二王女、エリーナ姫なのですか?」

「はい。クラウドさん。間違いありません」

「そうですか・・・。すみません。あまりにも一国の王女としてはお粗末だったもので」

「なんですって!?わたくしのどこが粗末だというの!粗末なのはツェルリアの方でしょう!! あぁ、わかったわ。ツェルリア、あなたリルヴェアに取り入ったのね。流石はあの女の娘だわ!」


 クラウドはさらに言い(つの)るエリーナを一瞥(いちべつ)しため息をついた。

「エリーナ姫は錯乱しておられるようだ。地下に閉じ込めておけ」

「御意」

「な、なによ!わたくしはメイティアの王女よ!放しなさい!!」


 エリーナが連れていかれるとツェルリアもシュリもホッと胸を撫で下ろした。

「嵐のようだったわ」

 ツェルリアの言葉にまだ部屋に残っていた者たちは皆(うなず)いた。


「申し訳ありません。この部屋にエリーナ姫をお連れした後にツェルリア姫にはご同行願う予定だったのですが・・・」

「いいえ。それで、同行というのは?」

「我が主がお呼びです」


 クラウドの主。その言葉がさす人物は1人しかいない。


「わかりました」

「いけません!ツェルリア様、行けば殺されてしまいます!!」

「シュリ。メイティア王家はその権力と財を享受してきたわ。メイティアに滅びが訪れたのなら殺されるのも勤めでしょう?」


 ツェルリアは悟っているのだ。

 これまでメイティア家が犯してきた罪を。これから訪れるであろう死を。

 ツェルリアだけは、はっきりと知っているのだ。


「ツェルリア様・・・」

 シュリは瞳にいまにも溢れそうなほど涙をためている。

「クラウドさんお願いします。ツェルリア様を殺さないでください!」

「それは・・・我が主がお決めになることですので」

 その言葉にシュリは泣き崩れてしまった。


「クラウドさん。行きましょう」

「ですが・・・」

「シュリなら大丈夫です。逆に、いまは1人にしてあげた方がいいんですよ」

「・・・では、こちらへ」

「はい」


 ツェルリアはやはり、綺麗な笑みを浮かべていた。

 けれどツェルリアに限定すれば、心も笑っているというわけではないのだった。



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