小さな約束
「ツェリ、大丈夫か?」
指定された談話室に入室したツェルリアにかけられた第一声。
昨日の泣き喚いたことを言っているのだと気づき羞恥にかられて赤面する。
「大丈夫そうだな」
ツェルリアがなにも言えないでいると、微笑みながらヴィアルスは言った。
さらに恥ずかしくなってきたツェルリアは話を変えようと思考する。
「あの・・・今日はどうして・・・」
「昨日約束しただろう?取って置きの場所に連れて行くと」
「えっと・・・」
昨日の記憶を手繰り寄せる。言われてみれば、うとうとしていたときにそんな感じのことを言われたような気がする。
「思い出したか?」
「あ、はい。かすかにですけれど・・・」
「十分だ。・・・ところで、昨日俺を呼んだことを覚えているか?」
「呼んだ・・・?」
「いや、覚えてないならいいんだ。気にしないでくれ」
そう言いながらもどこか残念そうなヴィアルスにツェルリアは首を傾げる。
その反応にヴィアルスは苦笑するが結局なにも言わなかった。
「そろそろ行こう。少し馬車で揺られることになるが我慢してくれ」
「おかまいなく。わたくしは大丈夫ですから」
「心強いな。・・・ツェリ。手を」
「・・・はい。ヴィアルス陛下」
ヴィアルスの差し出した手を取り、歩き始める。
王にエスコートされ、姫君は馬車に乗り込んだ。
久しぶりの更新です。もし待っていてくださった方がいらっしゃったらすみませんでした。