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心の叫び

 ツェルリアの意識が夢から浮上して最初に感じたのは優しく頭を撫でる大きな手だった。

「ルイ・・・?」

 先ほど見た夢のせいだろうか。いつもは呼ばないように心がけている名前が零れ落ちた。

「・・・すまない」

「ヴィアルス陛下?」

 手が止まったことと上から声が聞こえたことで目を開けば、ヴィアルスの悲しげに歪む顔が見えた。

「欲しいものはなんでも与えてやる。美しいドレスでも珍しい宝石でも使えきれないほどの金でも。ツェリが望むのなら俺をルイゼルの代わりにしてもいいし、あいつに似たやつを探して遊び相手として雇ってもいい。だから、泣くな」

 ヴィアルスはツェルリアの瞳から流れる雫を優しく拭う。

「え・・・わたくし、泣いて・・・?」

 ツェルリアはやっと自分が泣いていることに気づいた。自覚をすればさらに涙は溢れ、嗚咽が漏れる。

「う、あ・・・ルイ、ルイ・・・ど、して。ひっく、どうして?」

 ヴィアルスが包み込むように抱きしめれば、縋りつき、泣き叫ぶ。それは普段のツェルリアからは想像もできない姿で、人間らしい姿だった。


「好きなの。ルイが好きなの・・・!」

「知っている」

「誰よりも、何よりも大切だったの!」

「前に聞いた」

「ルイがいないと寂しくて苦しいの!」

「分かってる」

「ルイがいない世界なんていらない!」

「死にたいか」

「・・・ルイが生きてって言ったから」

「なら生きろ」

「無理だよ・・・助けてよぉ・・・!」


 ヴィアルスは腕の中のツェルリアをきつく抱きしめた。

「泣けばいい。あいつのことを忘れてしまうくらいに泣けばいい。ツェリ、愛している」

「わたくし・・・」

「NOはきかない。その代わり、いつまででも待っていてやる」

「・・・・・」

「ふっ。明日、取って置きの場所に連れて行ってやる。早く俺を思い出してくれよ」

 そう言ってヴィアルスはツェルリアの額にそっとキスを落とした。

 ツェルリアは泣き疲れたのかすでにまどろんでいる。


「おやすみ、ツェリ」

「・・・・おやすみなさい。―――――くん」

「!? ツェリ、いま・・・」

 寝ぼけていたのは分かっていた。しかし微笑みながら告げられたのはツェルリアが忘れているはずの名前で。

 完全に眠ってしまったツェルリアの髪をすきながら期待に口角を上げる。

「思い出してくれたなら、ルイゼルと渡り合うこともできるはずだ」


 ヴィアルスはツェルリアの目を冷やしてから、その寝顔を存分に堪能したのだった。

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