第2話 謝れぬまま
夕暮れピアノです。ガンガン更新していきます。
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今回は前回のとは全く違います。
「宮都っ!部活遅くなって・・・っ。」
焦ったような声でこちらに走ってくる神奈を、小さく微笑を浮かべて待つ。
神奈と拓の部活を待つため、いつも階段下で待っている。
ちなみにあたしは無所属。ええ、無所属。
・・・・・・・・・・。
・・・・・考えたく、ないよね?
自分の腹部へ、親友であり陸上部のエースであるヒトが。
突っ込んで抱きついてくるなんてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
「たすけてぇ―――――――――――――――――――――――――――――っ!」
逃げる。
久しぶりに、今日の朝よりも速く走る。
体が鈍っていようとも、最近走るような事態がなくても、逃げる!
「神奈が抱きついたら死ぬぅぅぅぅぅぅっっっ!」
すぐ後ろから追いかけてくる神奈がにこやかに叫ぶ。
「大丈夫、宮都は死なないわ!だから親友との熱い抱擁を受け止めなさい!」
「根拠は!?ねえ、その言葉に根拠はあるの!?」
「ないわ!」
「言い切った!?」
馬鹿な会話をしていても、どんどん神奈との距離が縮まっていく。
・・・あ。校長先生のカツラ飛んだ。
っていいところに拓が。
間抜け面した拓に喜んでこの役を代わってやろう。
ピタリと立ち止まって、神奈の方を向く。
笑顔を顔いっぱいに浮かべる神奈に、にっこりと微笑みを浮かべる。
そりゃあもうにっこりと。
そのまま―――――――――――。
「拓、交代~。」
「へ?」
何が何だかわからないだろう拓の眼前に神奈が迫る。
拓の顔が思い切りひきつり、音もなく全速力で逃げ出した。
「・・・応援してるよ、拓・・・・。」
「お前が言えることじゃねえ―――――――――――――――――!!」
ハンカチをひらひらとふって、あたしは笑顔で見送った。
生きろよ、拓。
廊下を曲がり、宮都から死角になったところで拓が止まった。
遅れて、神奈も拓の近くで走るのをやめた。
「何アホなことやってんだよ・・・。」
「それはあんたもでしょ?」
多少息が荒いが、すくっと立ったまま神奈が口を尖らせた。
そのまま目を逸らして、最近塗りかえられた白い壁にもたれかかる。
「・・・そうしないと、上手く話しかけれないのよ。」
気まずそうに、拓も目を泳がせた。
「あれはもう宮都も気にしてないだろ?」
はじかれたように神奈が顔をあげる。
「っでも!それでも今日なのよ?忘れ―――――――」
「宮都はお前のこと恨んでねえって、あんなに言ってくれた!
確かにあいつは優しいし、そんなこと口に出せないかもしれん、けど。
昔とは、変わったかもしんないけど。その分、俺らが埋めるって決めただろっ・・・・!」
口調を荒げながら拓が言うのを聞いても、神奈はうつむいたままだった。
「・・・行こ。宮都、待ってる。」
拓の横をすり抜けて、校門へと歩く。
私は。私はまだ、謝れてないのに。
宮都の優しさに甘えたまま、ここまで過ごして。
何も言わない宮都に、どこかほっとしていて。
そんな私に。
―――――――――――――――――――――――笑えって言うの?
宮都の家族を。
殺したのは。
――――――――――私。
何か言いたげな拓を残して、夕暮れの光から逃げるように、神奈は歩いた。
「つかれた~っ!」
大きく伸びをしながら言う神奈を、呆れたように宮都は見た。
「・・・そりゃ、あんだけ走ったらねぇ。」
隣の拓は疲れたのかむっつりと黙っている。
しかし、神奈は拓の姿を華麗にスルーしているらしい。
視界から拓の姿だけを排除する能力でも持っているのだろうか。
・・・ピンポイントすぎて、あまり意味がない気もするが。
「あ、そういや。新しいカフェ、やっと完成したんだ!
よかったら、宮都も行かない?おごるよ~っ。」
雰囲気がぎくしゃくしている理由は分かるけど。
あくまでも元気いっぱいにふるまう神奈をみて、やっぱり私は笑って答える。
「え、嘘。行きた・・・っっっ!」
そう言いかけた瞬間。
頭に、激痛がはしった。
耳元で大音量の音楽を聞かせられている気分。
思わず、そこにうずくまる。
「み、宮都!?どうしたの!?」
「おい、大丈夫か!?宮都、返事しろ!」
音は、だんだんとひどくなっていく。
二人の声が、どこか遠くで聞こえている気がする。
「大・・丈・・っ。」
声が、でない。
身体から、力が抜けていく。
音は、誰かの声のように聞こえ始める。
あぁ。
神奈達に、大丈夫って言いたいのに。
ぼやけた視界が、だんだんと閉じられてくる。
「かん・・な・・・・・っ!」
『・・・女神フェルベーナにおいて、汝と契約を交さん!』
まぶたが完全に落ちる。
そして――――――。
そこから、宮都の姿はなくなり。
呆然としている神奈達だけが、取り残されていた。
ごめんね、神奈。
謝るのは、きっとあたし。
あたしが悪いんだって、伝えたいのに――――――――――――――――――――。
時は過ぎる。
誰の気持ちも関わらず、無情に。
小さな願いは、時の狭間に取り残された。
重いです。異様に。
ほんとに全く違います。