第1話 日常と言う名の序章
幼い頃に、交わした約束。
二人の約束は、いつしか運命を巻き込んでゆく。
まだ、そのことを人は知らない。
空は、透き通るほど青く。
幼い二人の髪であそびながら、風が吹いてゆく。
「もう、あえないの?」
「・・・わかんない、けど。絶対、また会えるよ!」
「ほんと?」
「約束する。けど、忘れないで!」
「うん!僕、ずっとおぼえてるから。だから・・・。」
「だから?」
「また、逢えたら」
叫ぶような舌足らずな子供の声が遠ざかる。
そのときは―――――――――――――――。
ピピピピピッ! ピピピピピッ!
「ふわぁっ。もう朝?」
目をこすりながら、宮都はベッドから身を起こした。
(なんか、夢見てたっけ・・・?)
とても幸せで、それでいてとても悲しい夢を見た・・・気がする。
そう、ぼんやりと時計を見ながら考えていたのだが。
しかし、時刻を確認した途端、そんなことはどこかに吹っ飛んでいった。
「七時!?ちょっ・・・遅刻だ~っ!!!!!!!」
やばい。新学期当日から遅刻って。どこかの漫画の主人公か、あたしは。
いや、朝っぱらからぼけているひまはない。バタバタときがえ、
バターロールの袋をカバンに突っ込みながら家を飛び出した。
本はもちろんカバンの中に入ってる。
「あ・・・っ!」 しかしながら。
電車に全速力で走って乗り込んだあたしは、悲しくもとても重要なことを思い出してしまった。
(や、やばい!目覚まし時計のアラーム消してないよ!)
うぅ・・・。さよなら、電池よ。
節約してたのに・・・。電池一本って何円するんだっけ!?
というか、なぜあたしは気づかなかったんだ?
はぁぁっとため息をつき、バターロールをとりだした。
電車の中で、むぐむぐと味気ない朝食をたべる。
バターロール。バターついてないのにバターロール。
しかもロールじゃない。安売りだったのはだからか。
ロール、ほどけてますから。なんでこうなると問い詰めたい。
バターついてない。ロール巻かれてない。
んじゃ、このパンっぽい物体は一体なんなんだ?
そんなことを考えているうちに、降りる駅についてしまった。
二宮金次郎のごとく本を読みながら全速力で階段を駆け上がる。
不思議なことに転ぶことはない。
無事学校にまにあった宮都は、カラカラと年季の入った扉を開けた。
「おっはよ~!」
「おはよ。」
朝っぱらからテンションの高い親友、谷原 神奈に短くかえす。
気配をできるだけ消していたのに、目ざとく見つかってしまった。
「また席近くだよね~。」
「これは腐れ縁、だろ?」
さらに、すぐ隣から能天気な声が入ってきた。
(忘れてた・・・。)
このバカ、高月 拓も腐れ縁だったのだ。
「あ、拓もいたんだ。」
「俺の存在忘れてたの!?」
「うん。よく忘れるよ?」
「私も~。」
拓はず~んと落ち込んでいた。
「なんで?俺の存在価値なし?席となりなのに・・・。」
なにやらブツブツといっているが、そこはあたしも神奈も気にはしない。
「まぁ、小学校からここまで一緒って。ある意味奇跡だよね?」
そう。三人とも、小学校からずっとクラスも学校も同じ。
おかげで退屈しない楽しい日々どころか、休息が欲しくて気配を消すことが上手くなったぐらいだ。
ふと、神奈が話しかけてくる。
「そういや、今日は本もってないけど。どうしたの?」
「いや、寝坊しちゃって。でもほら!」
あたしは、にっこりと笑って右手に持った本を掲げる。
ひきつった顔で神奈が宮都から目をそらす。
「相変わらず、本への執念はすごいのね・・・・。」
「川におぼれかけても本だけは放さなかったもんな。」
立ち直ったらしい拓も会話に参加してきた。
「失敬な。本はマイハートだよ!命だよ!」
「相変わらず、本に関わるとキャラおかしくなるんだな・・・。」
二人に生暖かい目で見られたような気がする。
『キーンコーンカーンコーン』
そんなくだらない話をしている内に、チャイムがなった。
ちっ。本が読めなかった・・・。
夕暮れピアノです。これからも、今からも、作品を読んでいただけると嬉しいです。
ご指摘、感想をお待ちしております。