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『炯眼(けいがん)の馬医 ―異世界朝鮮・泥中に咲く龍の譜―』   作者: 水前寺鯉太郎
第2部

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第38話

血が止まらなかった。拭っても、また溢れた。

 クァンは最も細い銀鍼を取った。血管を縛るのではなく、出血点の周囲の経穴を三点で囲むように打った。コ・ジュマンがかつて「人には使うな」と言った技だった。

 血が止まった。

 「縫合を始めます」

 縫った。終わった。

 だが世子の指先が震えていた。呼吸が浅かった。破傷風の兆候だった。クァンが自分の腕で試した中和剤を打った。世子の体が拒絶した。

 キムが言った。「氷雪草を使った古い処方がある。だがこの季節、北方にしか自生しない。届く前に世子の命が尽きる」

 クァンは内医院の薬棚を全部出した。性質の近い薬草を探した。配合の比率を変えれば補えるはずだった。失敗すれば猛毒になる。三日、眠らなかった。

 チニョンが「休め」と言った。クァンは首を振った。手を動かし続けた。

 世子の顎が固くなり始めたという知らせが来た。東宮殿へ走った。

 入口に見知らぬ男が立っていた。ミョンファンの傍らにいた。「どけ、若造。ここからは真の医学を見せてやる」

 男の手に黒い鍼があった。クァンは見たことがなかった。

 「貴方は、誰だ」

 「お前の師、コ・ジュマンを最も憎み、最も超えた男だ」

 雨が降り始めていた。

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