〈魔術師〉の業
〈魔術師〉。世界の〈理〉を探求し読み解き、己を万能にしようと志す。神秘の学問を研究する研究者。それが仁の知る『こちらの世界』の一般的な見解である。
今まで〈魔術師〉などに、仁は深く関わることのなかった。ふとした縁で『橘探偵事務所』に〈魔術師〉、〈火焔の魔女〉の異名を持つ玲奈が入社してきた。なので、仁は〈魔術師〉について、玲奈に聞いてみることにした。
「〈魔術師〉はドⅯのイカレだ。関わらないほうがいいぞ」
仁は言葉を失った。
自分はそうであると言われて、平然としていられるか。そんな仁に玲奈は苦笑。
「〈魔術師〉はありとあらゆるモノから識ろうとする者だ」
人は『世界』を循環する〈理〉を観察し、理解、自分達で扱おうとした。それは科学ともにているが、科学と〈魔術〉は似て非なるモノ。〈魔術〉のほうが根が深い。
「『世界』を識り、『世界』を掴むことを目指すのが〈魔術師〉だ」
系統によって、最終目的の形は違ってはいるだろうが、間違いではないだろうと玲奈は考えている。
〈魔術師〉は『世界』のあらゆるモノから関係や意味を見出す。様々な視点から密接に関わる『世界』を視る。そして、そこから膨大な〈式〉を考えて、膨大な解答を導き出す。
広い海から陸地を見つけるように、厳しい砂漠で水を見つけるかのように、それは困難を極めるモノだ。それでも、未知の世界に挑戦する冒険者のごとく、〈魔術師〉は己の求める〈式〉と解答を求める。
「例え、人から外道だと蔑まれても、否定されてもやめない」
歴史上、〈魔術師〉は異端だとされ、排除されることもあった。それは未知に対する畏れからでもあり、〈魔術師〉が人から排除される行いをした事からでもある。
時に〈魔術師〉は己の目的のために、外道に手を染めることもする。清廉潔白とは〈魔術師〉には程遠い言葉だ。
「諦めることなく己を磨き、知らぬことに恐れることなく、挑み続ける者だけが掴むことが出来る、と私は〈魔術師〉の師である父様から教わった」
懐かしむように、玲奈はクスクスと笑う。
〈魔術師〉の大家とされる『オールディア家』が何代に続いても、未だにたどり着いてはいない解答は『オールディア家』を縛る枷、呪いとも言える。それを父は娘に継承させた。玲奈もそれを自分の意志で受け継いだ。
他から否定されて排除されようとも、手を染めることになっても、自分が生きている間に辿りつかなくても、子孫に押し付けることになっても、〈魔術師〉はやめない。
「なるほど。十分わかったわ」
苦笑いで、仁は納得した。




