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幸福

作者: 熊笹揉々
掲載日:2025/12/14

一人の男が、こう思った。「どこにも居場所がない」。確かに、客観的にいって、彼には居場所などなかった。能力なし、金なし、友人なし、容姿なし、‥‥。要約してしまえば、彼には何もなく、つき合うメリットが一切なかった。だから、誰一人寄りつかず、誰も招くこともなかった。

ある日、男は、ただ一つの落ち着けるはずの場所、自宅を追われた。というのも、家族に愛想をつかされたからだ。そして、それに対して彼は納得できなかった。そのため、彼は散歩に出かけた。道は理論上誰でも拒まないからだ。その日、外は寒かった。風が強く、心地よさという意味では、悪い日だった。道には幸福そうな人々がたくさんいた。彼の持たないものを持った人たちがたくさんいた。彼は欲望を刺激され、幸福を目指して散歩に出たのにむしろ不快になった。

彼はせめて休む場所をと思い、ベンチを探した。足が疲れてきていたのだ。しかし、ベンチは男女の二人組で埋めつくされていた。彼は惨めになった。何一つ自由になるものがなかった。

彼はもう家に帰ろうと思い、家路についた。そして、冷たい手足を必死に動かして、なんとか家に着いた。家の明かりは消えていた。そしてドアには鍵がかかっていた。彼は絶望した。それはきっと寒さのせいだったが、そんなことは彼にはどうでもよかった。死ぬ理由があればよかったのだ。

彼は楽に死のうと、歩きながらいろいろと考えてみた。飛び込みは痛そうだし、飛び降りも成功率が悪い。薬を飲むのもいかにも怖い。例えば、このまま寒い中で寝るのはどうだろう。楽に死ねそうだ。彼は結局、公園のベンチに横になり、寝ることにした。住宅街にある小さな公園で、比較的ベンチは新しかった。

しかしながら、彼は死ねない。翌朝、元気に起きてしまう。そこではスズメが鳴き、何かをついばんでいた。そして、暖かい日の光が彼を包んだ。彼は涙を流す。つまりは自分の無力さに絶望し、そしてむしろ希望を抱いてしまったのだ。すべてはそうして回っている。

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