赤い瞳、黒い翼との出会い3
「数カ月前、俺は『魔界一』の学校に入学が決まっていた。だが、ある日、ここへの入学を薦められた。
……当然、すぐに断った。やっと踏み出せた共存共栄の第一歩だと言っても、天界の学校に悪魔が行って、まともに勉学に励めるのかが不確かだと思ったからだ」
その言葉が静まり返る講堂に響く。
挑発するわけでもない。
けれど、その声には冷静さと圧倒的な自信が滲んでいた。
「……だが、悩んだ末、俺はこの学院に入ることを決めた。
なぜなら……、長らく分断されている魔界と天界。その二つが初めて歩み寄った第一歩としての場――それがここだからだ」
ダリウスの紅い瞳が、講堂の全員を見渡す。
「この場は、きっと深く歴史に刻まれることになる。それが良い風に刻まれるのか、悪い風に刻まれるのかは、俺たち次第だ」
一瞬、彼は言葉を切り、紅い瞳を鋭く光らせた。
「どうせ刻まれるなら、いい風に刻まれればいいと思っている」
その言葉が響いた瞬間、再び静寂が支配する。
いい風に、歴史に刻まれる……?
そんなの不可能だわ。
だって天使と悪魔が仲良くなれるわけないんだから!
そう心の中で叫んだ時、ふと、ダリウス・ヴァルシオンと目が合った。
「……っ!」
一瞬、彼が驚いたように目を大きくした。
私は思わず視線を逸らし、身を守るようにして肩を抱いた。
なぜか、そうしないと落ち着かないような気がした。
……別に、怖いわけじゃない。
悪魔だからとか、そういう問題じゃなくて……
その、彼の紅い瞳に見られると――
「……」
私は、眉をひそめ、熱っぽくなった頬に手を当てる。
……これは、何?
学院生活は幕開けしたばかり。
なのに、お父様が言う『何か』がすぐにでも起こってしまいそうで、私は得体の知れない不安に襲われた。
…………
……