表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
許されぬ恋のはじまり~序章~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/120

許されぬ恋のはじまり~序章~3

 

 思考が追いつかず、小さな不安がせり上がる。



 彼は何も言わず、ゆっくりと歩を進めてきた。その足音が妙に大きく聞こえる。


「な、なんですか?資料なら、まだ見つかっていませんよ」

 そんな話を口にしながら再び本棚に向き合った時、自分のすぐ真後ろで足音が止まった。


 ふと振り向こうとした時――視界の端で彼の腕が伸びてきた。



 ドンッ!


 気付けば彼は、私を挟み込むように本棚に腕をついていた。


「っ……!」


 驚きのあまり、すぐに彼を見上げる。


 すると、美しい顔立ちに赤い瞳の彼が瞳いっぱいに映り込んだ。

 ドクンと心臓が鳴る。


 慌てて顔を伏せるも、心臓がバクバクと激しく音を立て続けている。


 な、何……?



 慌て戸惑っている私に、彼はささやくように言葉を落とした。


「その資料……存在しないから」

「……え?」


 存在、しない……?

 どういう事?


 彼が何を言っているのか分からなかった。



「そんな資料はない。お前をここに呼ぶ為の口実にしただけだ」

「なっ……!」

 彼のそんな言葉に、心臓が嫌な音を立て始める。


「ど、どうして……?」

「お前と、誰の目も気にせずに話せる時間が欲しかった」

 彼の瞳が、赤くゆらめいていた。


 話せる時間……?なんで?


「もっと、お前と近づきたかった……」

 えっ……?

 突然のその言葉に、動揺が隠せない。



「……でも、天使と悪魔がそんなこと、許されるわけがない。だからずっと、自分の気持ちを抑え込んでいた」


 自分の……気持ち……


「……それでも、どうしても消せなかった。そればかりか……どんどん溢れて来て……」

 彼の声が、かすかに震える。


「お前が……好きだ」


 真っ赤なルビーのような瞳が、私を求めるように揺らいだ。


「……え……?」


「お前と同じ担当に任命された時、正直動揺するくらいに嬉しかった。思えば、それよりずっと前からお前の事……」

「う、嘘っ……」


「嘘なんかじゃない!会議中も、お前を目で追ってばかりだった。多少は気付いてたんじゃないか?」


「そんな……」

 どう返せばいいのか分からなかった。


 確かに思い返せば、会議中よく目が合っていた。

 そのたびに目を逸らして……なのに自然と目が行くと、また目が合って……そんなことを繰り返していたように思う。


 たまたまだと思っていたのに……



 彼の言葉に、胸の奥が熱くなって嬉しくてたまらなかった。


 でも、そんな気持ちは言えない。

 私が時々感じていた気持ちも……



 だって、私は『天使』で、彼は『悪魔』だから。



「お前はどうなんだ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ