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【大賞作家】天使と悪魔が交われば、世界が滅ぶ。それでも、1万年越しの愛を貫く。  作者: 花澄そう
許されぬ恋のはじまり~序章~

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許されぬ恋のはじまり~序章~1

 

 部屋に戻って来た私は、ため息をつきながら布団の中で寝返りを打った。



『……明日、俺の部屋に来いよ』



 日中に聞いたダリウスの低い声が頭の奥でずっと反芻はんすうして、離れない。




 本当に、深い意味なんてない。

 天使と悪魔なんだし。

 いくら伝説だと思っているからって、さすがにそんな事あるわけ……



 そう自分に言い聞かせていると、ふと脳裏に浮かんできたのは――


 乱れた髪、しっとりと汗ばむ身体、熱を帯びた赤い瞳。

『リシェル……』


 そんな色気のあるダリウスの姿。



 私は思わずバッと布団をかぶった。



「ひゃぁぁっ……!!なに考えてるの、私っ!」


 顔が熱くて仕方ない。


 って、恥ずかしがってる場合じゃない!

 一線を越えるような可能性は、本当は避けるべきだったのに……!

 やっぱりあんな約束、勢いや感情に流されても、するべきじゃなかった。


 私たちはただの恋人じゃない。


『天使』と『悪魔』なんだから!


 ……頭ではそう分かってるけど、会えない日が続くのも嫌。




 ……大丈夫。

 私さえ、しっかりしていれば……きっと……何も起こらないはずだわ。


 自分にそう言い聞かせるように、私はゆっくりと瞼を閉じると、前にダリウスが言った言葉が浮かんできた。



『あんなの、ただの伝説だろ?お前真に受けてるのか?』



「……そうよね……1万年以上も前の話なんだから」



 そう呟いた後、しんと静まり返る暗闇の中。

 静寂が耳を塞ぎ、心音だけが遠くで響く。


 目を閉じてしばらくすると、まるで水の底に沈んでいくように意識がゆっくりとかすみ始めた。


 それは、眠りに落ちる瞬間にも似ているけど、少し違っているように感じた。


 そう、それはまるで……

『記憶の底』に落ちていくような、不思議な感覚だった。



 次第に、まぶたの裏がほんのりと明るくなる。




 閉じた目に昼間の光が射し込むような、そんな感覚がした。





 そして――


 淡い光が差した。




 高い天井。

 石造りの柱が並ぶ広間。


 金と白を基調とした神聖な空間を、カツカツとヒールの甲高い足音だけが響く。


 手には、ついさっき終わった天魔会議で使った書類。

「やっと終わった。次はこの書類をまとめて……」



 頭の中でこの後のスケジュールを確認するように呟きながら、手元の書類に目を落とす。

 すると……


「あれ?あの書類が……ない?」


 私は慌てて腕の中でガサゴソと書類確認をする。

「やっぱり、ない……」


 会議が終わったあと、資料を置きっぱなしにしたのかも……

 そう思い、私は再び長い廊下を引き返した。


 会議室の扉を開けると、赤い眼をした私が最も苦手とする悪魔が存在感を放って立っていた。


 その悪魔の手には、私が置き忘れてしまった資料。


「……っ!」



 私は、彼のことが心底苦手だ。


 鋭い眼差しに、無愛想な態度。

 何より――悪魔だ。



「これ、お前のだろ」

 何食わぬ顔で私に書類を差し出す彼。

 なのに、なぜかドキっとしてしまう。


「えっ……ありがとう」

「確認はちゃんとしとけ。こんなとこに置いて帰るな」

「分かってます。だからすぐ取りに来たんです」

「……そんな言い訳が利くと思ってんのか。それでも、天界一のアルカディア学院の出か」

 そう言われて、ムッとしながら彼の手から書類を受け取る。


 そして目を逸らして小さく呟く。

「……そんな言い方しなくてもいいじゃない」


 彼は肩をすくめ、わずかに口の端を上げた。

「別に、普通に言ったつもりだったけどな」


 どこがよ。と内心文句を言い放ちながら彼に背を向けると、ふっと笑われた気がした。



 一瞬、振り返ろうとしたけど堪えた。

 だって、天使と悪魔は、互いに深入りしないのが暗黙の了解だったから。


 普段も他の天使と一緒で、悪魔とは必要最低限しか話さないようにしている。


 でも、彼がどんな顔をしているのか、正直気になる。


 そんな後ろ髪惹かれる思いのまま出口まで来た私は――

 ふと足を止めた。


 どうせ向こうは私の事なんて気にもしていないはず……

 そう思い、ゆっくりと彼の方を振り返る。

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